第3話 Sランク?
「愛依……私、もうこのままゲーム進めてもいいんじゃないか、って思うんだ……」
私が座り込んでいる場所までやってきた愛依に、一言つぶやく。
「え?あ、うん……それならそれでいいんだけど……どうしたの?運営から返信が全然来ない?」
いや、返信は来た。
これでもか、というくらいに早く返信来た。
簡単に要約すると『そのアカウントは間違いなくアナタのものです』『不正ログインの形跡はデータにありません』『キャラグラや名前の途中変更は、例外を認めるわけにはいかないので却下します』。
と、まぁこのような感じだ。
っていうか、私のデータがバグってるのってソッチのミスなんじゃないの?私に落ち度は無いよね!?
コッチは金払ってゲームやってるのよ!少しは対応してくれもいいんじゃないの!?……あ、お金払ったの愛依だった。
そんなこんなな思考を巡らせた結果、私の懐が痛んだわけではないので「まぁゲームできればいいかな?」という結論に落ち着いた。
私は別にゲームをやりこむつもりは無い。あくまでも愛依に付き合って、一緒にゲームができるならそれでいいのだ。
「愛依とのゲーム進行に支障がなければ、別に構わないかな……って。とにかく、時間がもったいないから、ゲーム進めていこう!まずどうすればいい?」
せっかく時間まで合わせて、休日の朝からゲームやっているのだ、グダグダやっていたら、それこそ時間の無駄だ。
「そうだねぇ……とりあえず、お互いの呼び方を変えようか?ネット上で本名呼び合うのもちょっとアレだし、ゲーム内はキャラ名で呼び合おう」
あ、まずソコからか……
そうだよね、誰が聞いていてログ残しているかもわからないのに、本名呼ぶのはちょっと怖いよね。
「了解……アイ」
確認の意味を込めて、愛依のゲームキャラ名で呼んでみる。
ちょっと違和感がある気がするけれど、たぶんそのうち慣れる……といいな。
「よし!……じゃあクロエ。まずはハンターランクを上げよう」
呼称の確認が終わると同時に、さっそく愛依による説明が始まる。
「このゲームのプレイヤーは、ハンターになってギルドに所属する事になるんだ。最初のうちは弱い敵しかいないマップにしか行けないんだけど、ハンターランクを上げていけば、より強い敵が出るマップにも行けるようになる、っていう仕組みかな」
そのハンターランクっていうのが、通行証みたいな役割になってるって事かな?
「ハンターランクを上げるには、依頼をたくさんこなしてハンターポイントを貯めていって、一定ポイント到達すると昇格試験を受けられるんだ。んで、その試験に合格すればランク上昇っていう基本的な流れなのよ」
試験とかあるの?
実技にしろ、筆記にしろ、難しいのは嫌だなぁ……
「β版だとDランクまで解放されてたから、私はDだけど、クロエは始めたばかりでEだろうから、まずはガンガン依頼こなして、私と同じDランクに一気になっちゃおう!」
DとかEとか、どこで確認できるんだろう?ステータスに書いてあるかな?
……お、あったあった!ちゃんとステータス欄に『ハンターランク』って項目あるね。
ここを見れば自分のランク確認……が…………
「アイ……あのさ……」
「どしたのクロエ?とりあえず、依頼受けるには町にあるギルドの掲示板まで行かないとダメだから、歩きながら話そう?」
「ランクS……」
私は異常事態を知らせるために、愛依の言葉を遮ってつぶやく。
「え?何が?」
そうだよね。その言葉だけじゃ意味がわからないよね。
「私のハンターランク……『S』って書かれてるんだけど」
私の発言を聞いて、愛依の動きが止まる。
表情からは「何言ってんだコイツ?」という言葉が聞こえてきそうな感じだ。
「アルファベット順だと……19番目?どうしようアイ!Eランクになるまで、どれだけ昇段試験受けなくちゃいけないの私!?」
「違う!違う!!そうじゃない!!?」
怒鳴られた……
キャラメイキングや名前だけじゃなくて、ハンターランクまでバグっていて混乱している私に、もっと優しくしてくれてもいいじゃない……
「Eランクが最低ランクだって言ったでしょ!?この場合の『S』っていうのは、『A』より上ってのが相場が決まってるでしょ!?」
相場とか言われても、私これが初ゲームなんだから、そんなの知らないし……
「ちなみに、ハンターポイントの上限はいくつになってる?」
「えっと……50万かな」
数字にカンマが付いてないせいで少々見づらく、一瞬返答に詰まる。
「Aランクより上確定ね……ちなみにEの上限は200で、Dの上限は1,000ね。上限まで貯めれば昇段試験受けられるって仕組みなんだけど……クロエにはいらない情報になっちゃったかもね」
そう言われると、何か愛依に悪い事をしてしまったような気になってしまう……いや!違う!!悪いの運営だし!私悪くないし!!
あ、でも……
「いらない情報ってわけじゃないと思うよ。このハンターポイントの隣に『昇段試験受諾可』って赤文字で書いてある理由がわかったし」
「既に50万カンストしてるんかいっ!!?っていうか、さらに上のランクが存在すんの!?もう、凄いネタバレくらった気分なんだけど!?」
私の言葉を聞いて叫びだす愛依。
えっと……何かゴメン。