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第28話 異変

「……っていう夢を見たんだけど、どう思う?」


 学校でのお昼休み。

 お弁当も食べ終わり、各自が自由行動をしている昼下がり。

 窓の外では、野球やサッカーをやっている男子生徒グループがいたりもする。

 暇とはいえ、なんとも元気な集団である。


 そして、例に漏れず、私も暇な集団の一員として、教室の窓際の席にて、今朝見た夢の話を愛依に話してみたりしていた。


「えっと……うん、夢に見るほどゲームにハマってくれてるなら私も嬉しいんだけど……まぁ、ほどほどにね……」


 そうだよね。

 ゲーム内で会った人達と、ゲームの中の世界で生活してた、って夢の内容だけ聞けば、そういう反応になるよね。


「違う!違うのよ!夢とは思えないような現実感があったし、ルーナさんとかも夢の中だと、だいぶ印象が違ってたし!」


「……で?和は、その夢での内容が前世か何かの出来事で、実はルーナさんとは前世からの知り合いだった……とか言いたいわけ?さすがにソレは突拍子がなさすぎだよ」


 愛依によるごもっともな反応。

 たしかに、言葉にしてみると突拍子がなさすぎて、何言ってんだ私!?ってツッコミいれたくもなるレベルだ。


「それは……そうなんだけど、今日見た夢は何か変だった……っていうか、いつも見る夢とは感じが違ってた……っていうか、とにかく言葉にするのが難しいんだけど、無視できない何かがあったのよ!」


 私も食い下がらずに、必死になって、今日見た夢の印象を説明する。


「前世がどうこうってのは、夢の印象を考慮しての可能性の1つ、というか何というか……とにかく、何であんな夢を見たのか?っていうのが気になっちゃってしょうがないの!私!」


 そりゃあ、前世がどうこうっていうのは、さすがにちょっとアレだけど、今までに無いような夢の見かたをしたせいで、何かしら理由があるのではないか、と思うのは仕方ない事じゃない?


「ん~……そんなに気になるなら、私じゃなくて、そのルーナさん本人に相談してみればいいんじゃない?」


 ごもっともな意見だ……

 たしかにルーナさん、たまに思わせぶりは言葉をはいたりしてるんで、もしかしたら何かしら知っているのかもしれない。

 でも、聞いたところで適当にはぐらかされるだけなような気がする……そんな印象だ。


 というか……


「何か怖くて聞けない……」


 私のビビり発言を聞いて、愛依は大きなため息をつく。

 完全に呆れたような表情にもなっている。


「じゃあ何で、そんな怖い人をクランに誘ったの?……っていうかどうやって知り合ったの?」


「えっと……草原MAPで声かけられて……同性の人のクランに入れてほしいって言われて……かなり強そうだったし……愛依も強い人がクランにいた方が喜ぶと思って」


 べつに私が悪いわけじゃないもん、くらいな感じで、言い訳するように答える。


「そりゃあ強い人が入ってくれるのはありがたいけど……っていうか、その時が初対面だったの?前に会った事があったとか?」


「たぶん初対面だと思う……ルーナさんもそう言ってたと思う」


 ……本当の事言ってるかどうかはあやしいけど。


「じゃあやっぱり、たんなる和の妄想なんじゃないの?前世云々っていうのは?」


 そりゃあ9割くらいの確率でそうなんじゃないかとは思うんだけど、100%と言い切れない何かがあるんだよね……

 じっさい、ただ夢を見るくらいで、実害があるわけじゃないから、そこまでムキになる事もないのだろう。

 あくまでも私の好奇心を満たすだけの行為ではあるので、わからないならわからないままでもいいのかもしれない……


「……!!?和っ!!」


 私が色々と考えていると、愛依が私の名前を叫びながら、突然立ち上がる。


「ん?」


 それに対し、私が疑問の声を出したその瞬間だった。

 耳元でガラスが割れる音と同時に、こめかみ部分に何かが当たる感触。そして、その衝撃が何かで、椅子に座ったままの状態で床へと倒れこむ。


 何事!?痛くはなかったけど、凄いビックリ……


「きゃあああぁぁ~~!!?」

「和!?なごみぃ!!?」


 私が倒れた後、ワンテンポ遅れて、教室にいた女子の数人が悲鳴を上げ、私のすぐ近くで愛依が、叫ぶように私の名前を呼び出す。


「え?何?どうしたの愛依?」


 転んだままなのもどうかと思い、起き上がりながら愛依に返事をする。

 いきなり衝撃受けて転ばされた事にも驚いたけど、切羽詰まったように私の名前を叫ぶ愛依にもビックリだよ。


「ん?」


 起き上がるために床に手をついた時、何かを掴む。


「……野球の硬球?」


 改めて周りを見渡してみる。


 私の席のすぐ隣の窓ガラスが割れている。

 もちろんガラスまみれになっている私。

 大小様々なサイズのガラス片が私の髪から落ちてきている。

 私の手には野球ボール。

 絶句している、愛依をはじめとした教室にいたクラスメイト達。


 その辺の情報を統合してみると……


「もしかして……さっき私のこめかみに当たったのって……このボール?」


 目を丸くして、黙ったまま首を縦に振る愛依。

 よく見ると愛依の立ち位置は、さっきまで座っていた位置と違っている。


 ああ……さっきいきなり立ち上がって私の名前を叫んだのは、外からボールが飛んできてるのに気づいたからかぁ~……って事は、私を置いてちゃっかり逃げてたのか!?


 いや、それでも、ほんの一瞬で遠くまで逃げられるわかもなく、飛び散ったガラス片のせいだろう、頬や手足にちょっとした切り傷が付いており、少し痛々しく見える。


「だ……大丈夫なの和?そのボール、物凄い勢いで飛んできてたよ……それにガラス片も全身で浴びてたし……」


 うん……この状況を見れば、降り注ぐガラス片を一身で浴びたんだろうなぁってのは想像できる。

 で、こめかみに何か当たった感触はあったから、このボールが私に当たったんだろうってのも想像できる。


 じゃあさ……何で……

 何で私……


 無傷なの!!?


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