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第27話 不思議な夢

 夢を見た。


 幼い私がずっと泣いている夢だ。


 ただ、その泣いている場所は現在日本ではなかった。

 雰囲気的には、中世のヨーロッパのような感じなのだが、少し違う……

 おそらくだが、私が泣いている場所は、最近私がはまっているゲームの『オルメヴァスタ』の世界なんじゃないかと思う。

 しかし、私はこんな『貴族の館』みたいな風景の場所には行った事がない。

 いったい、私のどこの記憶をもとにして、この場面を夢として再現しているのだろうか?


 それでも、やけに現実味のある感じではあった。

 ……が、それが夢の中の出来事なのだと、私は泣きながらも、すぐに理解することができていた。


 何故なら、泣いている私は、現代日本で普通に生活している記憶があったからだ。


 ああ……コレは夢なんだ。目が覚めたら、いつもの日本での生活が始まるんだ……そんな事を、頭の片隅で考えていた。

 しかし、何故だがわからないが、そう考えれば考えるほどに悲しくなっていき、余計に涙があふれ出し、泣く事をやめられない。

 ……そんな夢だ。


 不思議な事に、夢だとわかっていても、その夢から覚める事ができなかった。


 どれだけの時間が経ったのだろう?何年も経過してしまっているような気もするし、一瞬の出来事だったような気もする。とにかく時間の感覚があやふやなのだが、ふと気が付くと、夢の中の私は泣く事をやめていた。


 今度は一転、平和な日常を私は過ごしていた。


 しかし、その平和な日常も長くは続かなかったようで、突然事件は起きる。

 私が住んでいた豪邸に強盗がやってきたのだ。


 その強盗はたった一人だった。

 そんなに強そうな印象はないのだが、ウチにいた用心棒たちを次々と殺害していった。


 ……というか、自宅に用心棒をいるとか、夢の中の私はいったいどれだけの金持ち設定なのだろうか?


 とにかく、そんな強盗によって、私の両親も……うん、たぶん私の両親なのだろう……実際には会った事も見た事もない顔の人達なのだけど、おそらく夢の中の私の設定では、この人達が両親なのだろう。


 その両親が強盗に殺されてしまい、再び泣き出す私。


 いや、泣いてる場合じゃないだろ私!?

 逃げないと私の命もヤバイでしょ!?


 と、そんな事を考えてしまったせいか、案の定、強盗に襲われる私。


 こりゃあ死んだな……これで夢から覚めれるかな?

 ある程度覚悟を決めていたのだが、夢の終わりがくる事はなかった。


 ギリギリのところで私を助けてくれる人が現れたのだ。


 それは、見た目こそ幼いが、ゲーム内で知り合ったルーナさんだった。


 ……たぶんルーナさん?だと思う。

 だって、あんな綺麗な銀髪で、変な上品っぽい口調で喋って、貴族服着ていて、馬鹿みたいに強い人なんて、ルーナさん以外にはいないだろう。


 それから私は、そんな幼いルーナさんと一緒に生活するようになっていった。


 幼い容姿のルーナさんと共に、幼かった私も一緒になって成長していく。


 途中、これまた少し幼い感じのする愛花さんも現れて一緒に行動するようにもなる。


 何だろう……ルーナさんや愛花さんと一緒に行動している間が、一番平和に過ごせている?……違うかな?私の中で一番充実している期間のような気がする。


 そういえば、たまに鏡などに映り込む私の容姿は、『オルメヴァスタ』のゲーム内での自キャラ『クロエ』になっていた。

 ただ違和感が一つある。

 今の『クロエ』……死んだような目つきになっていて凄く怖い。


 ともかく、本当に何なのだろう、今のこの状況は?


 夢から覚める事はできないし、時間の感覚も曖昧だ。

 そんな夢の中で、『クロエ』として登場している私と、ゲーム内でしか会った事のないルーナさんや愛花さんも出演してきている。


 『クロエ』が歩んできたであろう、架空の人生を、凝縮してダイジェストとして夢で見せられているような、そんな感じだろうか?


 そして、そんな『クロエ』の人生にも終わりはやってくる。


 一人で家にいる時、再び強盗に押しかけられる。

 必死に抵抗する私。

 むしろ、私の方が現状有利なんじゃない?と思えるくらいには抵抗できている。


 その証拠に、相手は途中で不利を悟って逃げ出した。


 放っておけばいいものを、私は、逃げ出した強盗を追いかけていた。


 何だろう?その強盗に対して、凄い憎悪を抱いていた。

 いや、違うかな……その強盗にだけじゃない……憎悪は『元クラスメイト』に対して向けられている。


 その『元クラスメイト』というのが、何のクラスなのか、そして今現在逃走を始めた強盗と、どう結びついているのかは私にはわからない。

 ただ『クロエ』として、夢を見ている私には、どれだけ憎い相手なのかが、何となくだけど理解する事ができる……理由はまったくわからないんだけどね。


 そして、逃げた強盗を追って、窓から外へと飛び出した瞬間を狙われて命を落とす……


「約束したのに……ずっと一緒にいれなくて……ごめんね……ルーナ……」


「は?何だって?……寝ぼけてんのか姉ちゃん。つうか早く起きねぇと学校遅刻すんぞ!ったく母さんが自分で起こしにくりゃいいのに、何で俺がこんな事しなきゃなんねぇんだよ……起きたなら俺はもう行くからな!じゃあな!!」


 皆斗の声が耳に届く。

 あ、現実だコレ。

 夢の中だと、それが現実の様な感覚ではあったのだけれど、夢から覚めてみると、現実と夢との違いがはっきりとわかる。


 ……夢から覚めれないような感覚だったのだけど、無事覚める事ができて、何となく肩透かしをくらった気分だ。


 最後の言葉は『クロエ』が言ったのだろうか?それとも私?


 本当にわけがわからない夢を見た……

 ゲームやりすぎて、ゲーム内のキャラや世界が、現実とごっちゃになっているのだろうか?


 それにしても、随分と長い時間夢を見ていた気がする……

 何気なしに時計を手に取り時間を確認する。


「…………マジで学校、ヤバイんじゃないコレ?」


 急いでベッドから飛び出す。

 遅刻する事も視野に入れて行動しよう……


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