第25話 クラメン集合
前回見た時よりも、家具やらちょっとした小物やらが増えた、我らがクランアジト。
もうね、いくらなんでも物増やし過ぎじゃない?って言いたいくらいに増えている。
その、物を増やした犯人と、私を含めて、今アジトには4人の人物がいた……
「おいおい……これって女性限定クランとかじゃないだろ?ってか人数少なすぎじゃね?ランキング1位のクロエが所属してるクランとは思えねぇんだけど……俺の事おちょくって遊んでる、とかじゃねえよな?姉ちゃん」
「あ~クロエ……できれば私に紹介してくれるとありがたいんだけど……まぁコッチの男の人はランキング入りしてるから、何となく知ってるけど、こっちの女の人はマジで誰?大丈夫?強いの?」
「あらあら……人数は少ないわりにはピーピーうるさいクランですね……で?このクランがペットを2匹飼ってる事はわかったのですが、クロエさんと私以外のクラメンはいつココに来る事になっているのですか?」
……誰か助けてください!空気が最悪です!!
「えっと……とりあえず一人ずつ紹介を……まず、コレはキャラ名『まるミナ』君で、私のリアル弟だってわかったんで、何となくクランに誘ってみたの」
「おい!『何となく』で俺の事誘ったのかよ!?」
愛依に皆斗を紹介している最中に、よくわからないクレームが入ったがあえて無視しておく。
「その口ぶりからすると、私が差し上げた『鑑定・改』を使ったのでしょう?1度でも使えば、アレが色々と危険なスキルだと理解したでしょうに……躊躇なく使い続けてるのですね」
別角度から、私にだけ聞こえるような音量でつぶやく人もいたけれど、こちらは聞こえないフリをして無視する事にした。
「やっぱりランキングで8位に入ってたまるミナ君かぁ~ってかクロエの実弟ってマジ!?」
「俺もいまだに姉ちゃんがクロエだって信じられないんだけど、マジっぽい……そういやアンタの名前『アイ』ってランキング13位のアイ?」
「そうそう!私もランキング1桁狙ってたんだけどねぇ……ちょっとポイント足りなかったんだよね」
「それはしゃあないだろ。今回のランキングイベントは結構組み合わせの運要素も大きかったからな……まぁでもそれなら、このクラン少人数だけど、いちおうランキング上位で固まってる感じなんだな」
何やら私をほったらかしで会話に花を咲かせる二人。
このゲームオタクどもめ!
「……それでクロエ。そっちの人は?その人もクロエのリアル知り合いとか?」
「いやいや、根暗な姉ちゃんに友達とかいねぇから……リアル知り合いってのは除外で考えると、この人もランキング高い人なんじゃね?」
リアル弟が超ウザい……
愛依は私に会話振ってきてるんだってば!何でアンタが答えてんのよ!!
それに、友達ちゃんといるし!今ここにいる愛依だってリアル友達だし!!
……友達、だよね?私だけが友達だと思ってるとか、そういうやつじゃないよね?
「あれ?クロエ、まるミナ君に言ってないの?……えっとね、私いちおうクロエとはリアルでも友人だよ。同じ学校のね」
ああ……フォローありがとう愛依……でも、何で「いちおう」って一文を加えてたの?
「で?どうなのクロエ?そっちの人もリアル知り合い?」
……やっぱり、このルーナさんを紹介しないとダメだよね。
謎人物すぎて、どう紹介すればいいのかさっぱりなんだけど……
「はぁ……私はクロエさんのリアル友人でもないですし、ランキング戦にも参加してないので、ランキング上位にも名を連ねてはおりませんよ」
私が口ごもっているのを見て、ため息まじりにルーナさんが、自分から話始める。
「どう呼んで頂いてもかまいませんが、名前はルーナ・ルイスと申します」
「ルーナ・ルイス?……んん~?どっかで聞いた事あるような……でもランキングには入ってないんだよね?どこで聞いた名前だっけか?」
愛依がひとり言をつぶやく。
思い出して愛依!最初に見た手配書だよ!懸賞金10億とか書かれてたアレだよ!
私から口に出したら、何されるかわからなくて怖くて言えないんだよ!得体が知れないんだよこの人!お願い!気付いて愛依!!
「まぁいっか。聞いた事あるのは気のせいかもね」
愛依ぃぃ!!!!?
「このクランは強さを証明できなければダメなのでしょうか?それでしたらクロエさんを相手にPvPでもして見せましょうか?」
は?いきなり何を言い出すのこの人?
怖いんですけど!?ステータス鑑定不能の人と、どうやって戦えばいいの!?
「ルーナ、だっけ?クロエの強さ知ってる?これでもクロエってランキング1位なのよ。知らずにPvPやるとかデカい口聞いてると、恥ずかしい事になるよ?」
「べつにいんじゃね?クロエとどれくらい戦えるかで、どれくらい強いかはわかるだろうし……まぁ瞬殺されるだろうけど、どれくらいダメージくらうか、って部分でも強さ見極められるだろうし」
黙れ外野2人!!
何で煽るのよ!!?
やだよ!戦いたくないよ私!!怖いもんこの人!
冷静に考えてみてよ!ステータスほぼカンスト状態だった愛花さんに対しても『鑑定』はできたんだよ!ちゃんとステータス見れたんだよ!
『鑑定不能』って事は、つまりは、ステータスカンスト愛花さんよりもヤバイって事じゃないの!?
……2人とも愛花さんを知らないから、説明できないけど、とになく私は、こんな得体の知れない人とは戦いたくは……
「じゃあルーナ!クロエと戦ってみてよ。それによってはクラン入団を許可してあげてもいいよ!」
愛依ぃぃぃ!!!!?
何でそんな上から目線なの!?戦わなくちゃならないの私だよね!?
「ふふ……善戦できるよう頑張らせていただきますね」
ルーナさんは、そう言いながらソファから立ち上がる。
「ではやりましょうか、クロエさん」
そして微笑みながら、私の肩をポンッと叩き、付いて来るように促される。
そのルーナさんの笑みが、私にはとてつもなく恐ろしく見えた。
……私、またデスペナくらう事になるのかな?




