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第24話 銀髪の女性

「何でだよ!?課金までしたのに!!?」

「微課金じゃ話にならないって事だろ?いいからもう行くぞ!衰弱付けたまま他のヤツに絡まれたらやっかいだぞ」


 私に絡んで来た人達が逃げていく。

 本日3回目である。


 愛依が言うには、ランキング戦以降に課金ガチャが解禁されたから、良い装備引いた人達が「もしかしてコレならクロエに勝てるんじゃ?」って思考になってやってくるかもしれないから、忙しくなるんじゃない?だそうだ。


 何で、ガチャ武器の試し斬り対象が私なの?って聞いたら、一言「ランキング1位だからじゃない?」との事だ。

 基本的に私を狙ってくるのは、ランキング上位陣。

 そして、順位付けされてるとはいえ、ランキング順位の一つ上の人を順番に狙うとかはない。

 簡単に言うと、例えば『10位の人が急に強くなりました』となった時『じゃあ腕試しで9位の人と戦ってみよう!』とかいう、1つずつ上の順位の人達と順番に戦っていく思考になるかどうかである。

 急に強くなったのなら、もっと上に挑戦する。別に1つ上の人としか戦えないとかいう縛りはないのだから。

 それに、次のランキング戦までは順位は変動しない。

 個人間での戦績はランキング順位とは関係ない。

 買っても負けても変動がないのなら、より強い人と腕試しするだろう。


 負けても、攻略法を考えるための情報を多少なりとも得られるだろうし、万が一勝てたら、それはそれで次のランキング戦でトップに立てる基準の強さがわかる。


 そんな理屈が愛依の予測である。

 ……その通りになってるのが、少し腹が立つ。


 そして、そんな予測をした愛依当人は、増えたクラン資金の額に目を輝かせながら、嬉しそうに「買い物行ってくる!!」と出かけて行った。


 まぁいいんだけどね。

 放置されるのにもだいぶ慣れてきたし。


 そんなわけで、一人でフラフラ散歩していたところ、めちゃくちゃ絡まれまくったのである。

 これがナンパとかだったら、もしかして私モテ期来てる!?とか思えたのかもしれないけど、そんなときめきなど一切ない、殺伐としたお誘いばかりなので、若干ウンザリしている。


 まぁ、愛花さんから貰った『鑑定・改』スキルのおかげで、事前に相手のステータスを覗き見できるので、今のところ危険な事になっていないのは幸いな事だ。


「失礼……クロエさんですね?」


 ボーっとしていると、不意に後ろから声をかけられる。

 最近、私に声をかけてくるプレイヤーは男性ばかりなのだが、その声の主は女性だった。


 いや、女性プレイヤーもけっこういるのは知ってるよ。街中とかでよく見るし。

 ただ、私にちょっかい出してくるのが、私の弟はじめ男性ばかりだったから、少し驚いただけというか……


 振り返って見た、その女性の容姿は、一言で言うと美人だった。

 立っているその姿には気品があった。どっかの貴族?と言いたくなるような感じだ。

 ……というよりも、服装がまさに中世の貴族のような格好だった。


 その服って店売りしてるのかな?それとも、ガチャか何かで出てくる実用性のないオシャレ装備とかなのかな?

 まぁその辺はどうでもいいかな?

 ともかく、それよりも何より目を引くのは、綺麗な長い銀髪だ。


 ……んん?どこかで見た事あるような気がするのは気のせいだろうか?


「えっと……どこかでお会いした事ありましたっけ?」


 思わず口に出してから、失礼だったかな?と少し後悔する。


「……いえ、初対面ですよ」


 そう答えた銀髪の女性は、一瞬だが悲しそうな表情になったような気がした。


 ただ、何だろう?何故か懐かしいような気持ちがある。

 本当に初対面なのだろうか?

 確かに、リアルでもゲーム内でも、私に銀髪の知り合いなんていない。でも……初対面のハズのこの女性には、妙な安心感がある。


「あの……初対面、という事はアレですか?『お前、生意気だから、ちょっとツラ貸せよ』ってやつですか?」


 言っといてなんだけど、初対面の人に声かけられると、それしか思いつかないとか、私だいぶ歪んだ思考になってない?


「クランに入れてもらうための、実力テストがあるのでしたらお受けしますが?」


 クラン?


「私、ソロプレイでしてフレンドもおらずに、クラン所属できないでいるのですよ……ですので、どうせなら同性の方のクランに入れてもらえれば、と思いましてね……」


 あ~……なるほど、そういう感じの用件だったのね。

 私、有名だしね。同性プレイヤーのクランを探してるなら、もってこいの物件だしね。


 いや、でも待てよ……愛依がけっこうガチだから、勝手に入れて、この人が弱かったりしたら、あとから文句言われそうだな……いちおうはステータス見ておこうかな?それで、ある程度強ければクラン入れてあげてもいいかも。

 弱かったら……その時は、悪いけど「身内限定のクランです」とか適当な嘘言って断ろう。愛依の愚痴は後を引くし……


「……鑑定・改」


 聞こえないようにボソッとつぶやいてスキルを発動する。



ルーナ・ルイス(‐‐‐‐)LV0 ※鑑定不能



 ……は?

 え!?待って!?ナニコレ!!?鑑定不能!?

 リアルネームもあるみたいだけど見れないし!?実質わかるのがキャラ名だけ!?

 っていうか、そのキャラ名って……破格の懸賞金が付いてる賞金首の名前?

 そうだ!どっかで見たような気がすると思ってたのは、手配書だ!!実在してたの!?

 いや、そういえば愛花さんも、この名前を口にしてたような気がする。


 どうしよう!?私はどう対処すればいいの!?


「ん?ああ……そういえば『鑑定・改』のスキルを与えてたのでしたね」


 私が動揺し始めたのを察して、銀髪の女性……ルーナ・ルイスの態度が変わる。


「愛花の口車にのったのは失敗だったかもしれませんね……私の正体がバレてしまったではないですか……」


 いやいや!!?正体が謎すぎて焦ってるんですけど!?


「この先の事を考えると、私がルカの近くにいる事が望ましかったのですが……さて、どうしましょうか?」


 ルカ!?ルカって誰よ!?また意味不明な人物増やして、私の頭を混乱させるのやめて!?


「ええと……改めましてクロエさん。私、ルーナ・ルイスと申します。もしよろしければ私をクランに入れて頂けるとありがたいのですが……あ、最悪フレンド登録だけでもいいのですが」


「ク……クラン……入会、承認します。フレンド登録も……します」


 考えるよりも先に口が動いた。


 なんだろう?この人からは逃げられる気がしなかった。

 というよりは、この人の言う事を、本能的に一切否定する事ができない自分がいた。


 もう、わけがわからない。


 私の言葉を聞いて、嬉しそうに笑みを浮かべるルーナ・ルイス。

 その笑顔が、私にはとてつもなく邪悪な笑みに見えたのだが、心のどこかで安心感があった。


 ……ほんと、どうしちゃったんだろう私。

 混乱しすぎて、頭おかしくなっちゃったのかな?


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