第19話 強敵
「「エレメンタルガード……エレメンタルパワー……エクストリーム・ハイシールド……エクストリーム・ハイマジックシールド……エクストリーム・ハイパワーゲイン……エクストリーム・ハイマジックパワーゲイン」」
同じ見た目、同じ声で同時に魔法を唱えだす2人。
お互いに見つめ合いながら、バフ魔法かけまくってる感じなのだろうか?
何だろう?見た目だけじゃなくて、戦い方まで同じって感じなのかな?私完全に蚊帳の外みたいになってない?
「エクストリーム・フレイムボム!!」
無視されてるみたいで何か癪だったので、とりあえず、先程のゾンビ相手にセットしてて、放つ機会のなかった魔法を、不意打ち気味に放ってみる。
私の放った魔法は爆炎となって、敵対女性を包み込む。
しかし、敵対女性は、そんな爆炎をものともせずに突っ込んで来る。
「え!?嘘っ!?効いてない!?」
今まで、放てばある程度効果のあった魔法をスルーされて、焦りから思わず声が出る。
「大丈夫!ダメージは通ってる!ただ単にコイツのHPが、ダメージ無視しても問題無いくらいに高いだけだから!」
すぐさま味方女性の方からフォローされる。
でも私が、一番敵にダメージ与えられる手段は魔法攻撃なんだけど、その攻撃が『ダメージ無視しても問題無い』レベルだと、私どうしたらいいの!?
「コイツは基本、私が相手するから、西野はそのまま魔法でフォローしてくれればいいから!あと、さっきゾンビからくらったデバフ魔法を解呪したうえで、魔法攻撃力上げるバフ魔法かけてから行動して……アンチクイック!!」
突っ込んで斬りかかってきた敵対女性の攻撃を剣で受け止めつつアドバイスされる。
どうしよう、どっからツッコミ入れればいいだろうか?
何度も言うけど私の名前は『西野』じゃないし、喋りながら唱えてた『アンチクイック』って魔法、私覚えてないから、どんな効果がある魔法なのかわからないし、完全に2人だけでやり合ってるから、私いる意味あるのか疑問に思えてくる。
とりあえず、指示された事はやっておこう……
「……ディスペルマジック!……エクストリーム・ハイマジックパワーゲイン!……エレメンタルパワー!」
チャージタイムはそこまで長くないので、連続して魔法を唱える。
解呪、単体魔法攻撃力大アップ、ついでに属性攻撃力アップもしておく。
……で、次はどうしよう?
炎系魔法は無視されたから、次は別属性?
「『エクストリーム・サンダーボム』セット……」
効果があるかどうかはわからないが、とりあえずは魔法をセットしつつ、鍔迫り合いしている二人に視線を向ける。
私はどのタイミングで魔法を放てばいいんだろう?
って、ちょっと待って?
『鍔迫り合いしてる』?
……武器、壊しちゃえばいいんじゃない?
すぐさま私は、二人が争っている方へと駆け出す。
「ウェポンブレイク!」
スキルを発動させながら、敵対女性の剣を杖で殴りつける。
……ダメだ、一発じゃ壊れなかった!?
だったらもう一発!!
「ウェポンブ……」
「ダメだ西野!!ソイツから離れろ!!!」
私を鬱陶しく感じたのだろうか、私が二撃目を放つ前に、敵対女性の剣が私の方へと振り下ろされていた。
「や……っば!?」
咄嗟に身をよじってかわそうとしたが避けきれずに、左肩からザックリと斬られる。
「痛っつ!!?」
無理な体勢で避けようとしたためバランスを崩して、思いっきり転ぶ。
ただ、転んだままだとマズいという事だけは瞬時に判断し、なりふり構わずに、そのまま地面を転がって逃げる。
「エクストリーム・サンダーボム!!」
その場を離れつつも、ヤケクソ気味にセットしていた魔法を放つ。
「ホーリィスラッシュ!」
私の魔法に合わせるように、味方女性が、効果のわからないスキルで攻撃しているようだったが、生憎と地面を転がっている私には、攻撃が効果あったのかどころか、当たったのかどうかすら見えていない。
ふと自分のHPを確認してみると、10,000近く減っていた。
「……嘘でしょ?」
そりゃあ、まともに直撃くらったよ。斬られた瞬間、たしかに凄く痛いとは思ったよ。でも、私のこのバグったステータスで、一撃でこんなにダメージくらうものなの?
まずくない!?これって単純計算で、3回攻撃受けたら、私デスペナくらう事になるんじゃない!?
まぁでも、とりあえずは距離取ったから、後は味方女性に任せて、私は遠距離から魔法で……
「ホーリィライトニング!」
突然、白い巨大な槍のような魔法の塊が私の腹部に直撃する。うん、痛い!凄い痛い!
どうやら油断している所を、逆に魔法攻撃を受けたようだ。
って嘘ぉ!!?私、物理防御よりも魔法防御の方がかなり高いはずなのに、さっきの攻撃と同じくらいのダメージ受けたんだけど!?
まずい!まずいよ!!私のHP、残り5,000きってるんだけど!?
そもそも何で私に攻撃くるの!?味方女性何してるの!?
「くっそ!ハイ・スラッシュ!ハイ・スラッシュ!!ホーリィボム!!」
視線を向けるとそこには、技スキルと魔法スキルをガンガン使いながら敵対女性を攻撃し続ける味方女性と、攻撃を受けつつも、それでも『鬱陶しいから弱い方を先に潰す!』と言わんばかりに私を狙おうとしている敵対女性が見えた。
……近づいて余計な事しなきゃよかったかも。
ただ、ほぼ立て続けに2発の攻撃を受けたわけだけど、中々3発目が来ない。
3発受けたら私が乙る事わかってて手加減されてる?
だったら、やられる前にやってやる!回復魔法使うくらいなら、ぶっ放せるだけ攻撃魔法放って、潔く衰弱マーク付けてやる!!
「『エクストリーム・スプラッシュボム』セット!!」
「……クイックサスペンド!」
私が魔法をセットするのと、ほぼ同時だった。
敵対女性から魔法が放たれる。
この魔法は私も使えるから、効果は知っている。
効果は……
5秒間使用者以外の時間を止める効果。
チャージタイムはかなり長いが、止まってる時間の間は、相手をタコ殴りにできる恐ろしい魔法だ。
かなりマズイ!!
味方女性の攻撃が無視できなくなったから、時間止めて私を仕留めるつもりなのだろう。
2撃目の攻撃からのタイムラグは、この魔法をチャージしてたのか!?
……ってアレ?
魔法使われたのに、いつになっても時間止まらなくない?
「安心しな西野。その魔法は対策済みだから……んで、私が『クイックサスペンド』使うって事は、結構HPやばくなってきてるって事だね」
味方女性からの、落ち着いた声が届く。
『対策済みだ』とか、何かカッコいいなぁ……一度言ってみたいな。
でも対策って何だろう?
もしかして最初の方に使ってた『アンチクイック』とかって魔法がそうなのかな?
「とにかくコイツはもう限界近い!一気に畳みかけるよ西野!……ハイ・スラッシュ!」
「だから私『西野』って名前じゃないです!……エクストリーム・スプラッシュボム!!」
味方女性の掛け声に合わせて、セットしていた魔法を放つ。
どうやらギリギリだけど生き延びる事ができ……
「……エクスプロージョン!」
私が魔法を放ったその瞬間だった。
敵対女性の口が魔法名を告げる。
その魔法は以前、愛依を巻き込んだのでよく覚えている。
チャージタイムの短い魔法だが威力は高い魔法……
鼬の最後っ屁というやつだろうか?
って、ちょっと待って!?
マズくない!?
だって私、確実に効果範囲内に……




