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第1話 ゲームをやろう

 フルダイブ型VRゲーム。

 そのゲーム媒体が登場したのはいつの頃なのだろうか?少なくとも私が生まれる以前の話だろう。


 現代からしたら、問題だらけで改善点しかないような初期生産品から、何度も何度も進化を重ねて、今では娯楽用に1人1台持っているような時代になっている。


 そんな現代において、私はかなり特殊なのだろう。

 生まれてから17年、こういったゲームを一切やった事がなかった。


 興味はあった。

 でも、実際にプレイするか?と言われたら、何故か躊躇していた。

 何故かは私にもわからない。ただ何となく……そんな程度の理由だ。


(なごみ)!ゲームやる媒体は持ってるんでしょ?お願いだから、そろそろ私に付き合ってゲームやろうよ!」


 そういう訳で、ゲームの話をしたくてもできない、そんな私にしびれを切らしてか、友人の福山(ふくやま)愛依(めい)から、最近やたらとゲームに誘われていた。

 今日も今日とて、私の貴重な休み時間を削りにきているのだ。


 愛依の言う通り、ゲーム媒体は持っている。

 10歳くらいになった時「お友達みんなやってるみたいだし、和も少しはやってみたら?」みたいな感じで、両親に与えられていたのだけれど、期待を裏切り一切手を付けていなかった。


 それにしても、小学生の時に買ってもらった物が、今でも現役で使えるというのも、随分と息の長い媒体なのだと素直に感動してしまう。


 ともかく、一度タイミングというのを逃してしまうと、手を付ける事に若干躊躇してしまうというものだ。


 なので、愛依にしつこく誘われている今、自らの殻を破る絶好の機会なのかもしれないのだが……前に「ゲームの話したかったら私以外の人とできるんじゃないの?何で私を誘うの?」と聞いた事がある。

 その時の返答が「私は和とゲームの話がしたいんだ!」とか「和にもゲームの面白さを知ってもらいたい!」といった、宗教の勧誘並の胡散臭さがあったので引っかかっているのだ。


「せめて何か反応してよぉ~なごみぃぃ~……何だったらゲームの購入費用も私が出すからさぁ~」


 うわ!?どうしよう……さらに胡散臭くなっちゃったよコレ。


「愛依……私にゲームやってほしい()()()理由を言えば、ゲーム付き合ってあげてもいいよ」


「いつもゲームの話する連中が全員乙女ゲー沼にはまりました。話の節々から腐りかけの臭いをかもし出し始めたので逃げて来ました!もう、まともな友人は和しかいなくなってしまいました!」


 秒で吐いたわね、この子……そんなに切羽詰まってたの?


「私がやりたいのは、RPGなの!現実世界でモテないからって、電脳空間で架空AI男子にモテたって虚しくなるだけだってのよ!」


 いや……皆、その辺ちゃんとわかっててやってるんじゃないの?フルダイブ型だから臨場感MAXでイケメンにモテれば、ゲームだってわかっててもやっぱり嬉しいんじゃない?キュンキュンしちゃうんじゃない?

 何でそういう、乙女ゲー好きを敵に回すような発言を大声でするかなぁこの子。


「ってわけで、今シリアルコードをメールで送ったから、ダウンロードする時ソレ打ち込んでね。あ、ゲーム名は『オルメヴァスタ』っていうMMORPGね」


 ……ん?何か、話が繋がらないぞ?


「待って愛依……急に私がゲームやる流れになってるけど……シリアルコードが何?どういう事?」


 もう、どこからツッコミ入れればいいのかがわからない。


「え?だって和、さっき『本当の理由言えばゲームやってもいい』って言ってたよね?で、私は『ゲームの購入費用出してあげるから~』みたいな事言ったよね?」


 確かにそんな発言があったような気がするので、私は黙って首を縦に振る。


「つまりはそういう事だよ。ほら、和のぶんもちゃんと購入済みだよ」


 そう言って私の眼前に差し出されたスマホの画面には、ネット上で決算を終えた通知が映し出されていた。

 行動力の化身かこの女……

 さては私が『ゲームやってもいい』発言した瞬間から、購入のための操作してたわね……


「大丈夫大丈夫!無料でβテスト版プレイしてみたけど、最近じゃ珍しいけっこうシンプルなRPGだったから、それでいてやりこみ要素もあるから、ゲーム初心者の和でもすぐ慣れるって!」


 何か全然関係ないフォローを入れてくる愛依。


 違う……違うのよ愛依……

 私は愛依の行動力に呆れた表情をしているだけなの!ゲームがちゃんとプレイできるか不安になっている表情じゃないのよコレ!

 わかりにくい表情筋していてゴメンね!!


「はぁ~……変な事言わなきゃよかったわ……」


 私はため息まじりに口を開く。


「それって愛依の分だけじゃなくて、私の分もお金払っちゃったって事でしょ?……無駄にするわけにはいかない、よね?」


 そう言うと、愛依は嬉しそうな表情で、首を何度も縦に振る。

 シッポ振ってる犬みたいね……


「愛依には、前から色々とゲーム誘ってもらってるしね……いつまでも無下にするのは愛依に失礼だし……そろそろ覚悟を決めるべきなのかもね」


「やった!!決心してくれてありがとう和!一緒にランキング1位目指して頑張ろう!!」


 え!?ゲーム初心者にそこまでの成果を求めるの鬼畜過ぎない!?


「まぁランキング1位云々は置いといて、最初は色々教えて欲しいから時間そろえてインしたいんだけど……今日は何時くらいにゲーム始めれば愛依と一緒にプレイできる?」


「ん?」


 私の質問に愛依は、不思議そうな表情を浮かべる。

 え?いきなり放置されちゃうの私?


「和……このゲームの正式稼働は明日の朝9時からだから、今日はプレイできないよ」


 ちょっ……!?そういう情報を何で後出しするの!?


「そして明日は休日!いい?こういうゲームはスタートダッシュが大事だから、9時になった瞬間に始めるよ和!わかった?」


 ガチだ……この子ガチでランキング入りとかを目指してるんだ……

 私がゲーム初心者って情報、頭の中から消してない?


 何だろう……私のゲーム初体験は、波乱に満ちあふれそうで、凄く不安なんだけど……大丈夫かな?


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