第16話 ランキング1位?
『1位 クロエ 215pt』
イベントの1回目が終了して1時間後。
今現在でのランキング順位が発表される。
2位以下にダブルスコア以上の差をつけての1位に、私のキャラ名がガッツリと載っている。
そりゃあそうだよね。私のステータス、相変わらずバグってるもんね。
そんなバグったステータスで、力の限り暴れ回ってたんだから、1位じゃない方がおかしいレベルだよね。
まぁでもこれで、私以外にステータスがバグっている人がいる確率はかなり低くなった。
いや……バグってても、ランキング戦に興味がないから参加してない、って可能性もある事はあるだろうけど、その可能性は極端に低い気がする……やっぱ、このゲーム内でステータスがバグってるのって私だけなのかな?
「うはぁ~……78ポイントで43位タイか、できればトップ10狙いたいな」
隣で、私と同じように順位を確認している愛依がぼやく。
30位以上順位を引き上げるのは難しいようにも思えるつぶやきに聞こえるが、これが意外とそうでもない。
1位のポイント以外は、けっこうポイントの開きが少ないのだ。
2位の人で95pt、3位で92ptで2人いる。
なので愛依も、今回くらった4キルを維持した状態で、あと3人ほど倒す事ができれば、それだけでも3位に浮上できるのだ。
しかし、その辺は運の要素も絡んでくるのだろう。
同レベル帯以上の人と会わずに、レベル低い人達と上手くマッチングすれば、簡単にポイントは増やせるだろう。
問題なのは、弱いと自覚している人が、ランキング戦になんて参加するのかどうか?という事なのだが、そんな私の懸念は杞憂だったようだ。
弱い人は弱い人で、ランキング上位に食い込もうなんて気はさらさらなく、参加賞狙いでランキング戦に参加しているようだった。
その証拠に、現在ランキングビリの人のポイントは「-129pt」と、どんだけやられてんだよ!?とツッコミ入れたくなるような数字を叩き出している。
いや……私もステータスバグってなかったら、こんな感じの数字を叩き出してた可能性もあるから、あまり馬鹿にはできないんだけどね……
まぁともかく、愛依も、そんな人達と上手くマッチングし続ける事ができれば、いくらでも順位を上げる事はできるだろう。
それはそうと、今回のランキング戦、1・2・3位以外はTOP10とかTOP50とかまとまった数字になってるのは、ある程度同率順位が多く出る事を見越した称号になっているのかもしれない。
「とりあえず私は、ダブルスコア以上ついてるから抜かれる心配なさそうだから、もう参加しないとは思うけど、アイはどうするの?」
「もちろん参加するに決まってるじゃん!」
私の問いに即答する愛依。
まぁ聞くまでもなかったかな?
「それにしても、クロエがそこまでガチに1位狙ってくるとは思わなかったな。目立つ事あまり好きじゃないと思ってたんだけど」
え?目立つ事?そりゃあ、あんまり好きじゃないけど……
まぁ多少はランキング戦暴れたかもしれないけど、それを知ってるのは、私と運悪くマッチングしちゃった40数人だけで、このゲーム全体のアクティブユーザー数に比べれば微々たる人数だろうし。
「別に私、そこまで目立つような事は……」
『モイモイさんからフレンド申請が届きました』
……ん?誰?
『はみがきこさんからフレンド申請が届きました』
『プリンさんからフレンド申請が届きました』
『ヒデさんからフレンド申請が届きました』
『✞紅蓮の炎✞さんからフレンド申請が届きました』
ちょっ……!?ええ!!?誰?誰なの!?
「何コレ!?誰この人達!!?」
突然のフレンド申請攻撃に、思わず叫び声が出る。
「ん?もしかして、知らない人から大量にフレンド申請でも届いた?」
私の叫びを聞いた愛依から、冷静な反応が返ってくる。
何で?どうしてわかったの!?
『ハッピーラブさんからフレンド申請が届きました』
「甘い汁吸いたい連中ってのはどこにでもいるからねぇ……ランキング1位になるような強い人と、うまく知り合いになって寄生すれば、レベル上げもゲーム攻略も楽になるからね」
『グググゥさんからフレンド申請が届きました』
愛依が何か説明してくれてるけど、通知が気になって、もうそれどころではない。
「ど、どうしよう!?コレどうしたらいい!?」
「とりあえず通知報告をオフにしておけばいいんじゃない?」
私は言われた通りに、即通知オフに切り替える。
「何で!?何で突然こんな事になってるの!?」
「そりゃあクロエが1位だからでしょ?」
いや、そりゃあ現状じゃ1位だけど……
「ま、まだ1位確定したわけじゃ……」
「さっきクロエ自身で言ってたじゃん『ダブルスコア以上ついてるから抜かれる心配なさそう』って……仮に抜かれたとしても、これだけ断トツなポイント獲得する人が弱いって事は無いだろうしね」
言った!確かに言った!でも、でも……
「何で急にこんなに通知が来るの?私がランキング戦で暴れてたの知ってる人なんて限られてるんじゃ……」
「クロエ……ひょっとして、現在のランキング表を、このゲームプレイしてる全員が見れるって事わかってない?」
……あ。
「だから言ったじゃん『目立つ事あまり好きじゃないんじゃないの?』って。今、このゲームのユーザー全員が、現在ランキング1位に、2位にダブルスコア以上つけて君臨してるクロエを認知してるんだよ」
そんな……私……そこまで考えてなかった。
というか、今までゲームなんてやった事なかったから、ここまで悪目立ちする事になるなんて知らなかった。
「私……ただ、ランキング1位に付随する、経験値アップが欲しかっただけで……」
「え!?狙ってたのソレ!?ヒラヒラの服じゃなかったの!?」
あ、そういえば愛依には、何が欲しいのかを適当に答えてたんだった……
「どうりで、100位以内狙うにしては張り切りすぎてるなぁとは思ったけど……まさか1位の報酬しか見えてなかったとは……」
ううぅ……こんなに悪目立ちするなら諦めてたのに……
愛依も最初から教えてくれてれば……って、愛依にはどこ狙いなのかを、ちゃんと言ってなかったんだった!
こんな事になるなら、愛依にちゃんと言っておけばよかった。
事前に、こうなる事を教えてもらえてれば、私も1位なんて狙わなかったのに……
「まぁアレだ。経験値アップを有名税支払って買ったと思えば、少しは気が楽になるんじゃない?」
何か愛依、他人事だと思って適当な事言ってない?
そして……その日だけで、私の『フレンド申請承認待ち』リストの人数は3桁を突破した。
……経験値アップを得るためだけにしては、この有名税は高すぎなんじゃないだろうか?




