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第14話 ランキング戦開始

『ランキング戦開始時間5分前になりました。ランキング戦に参加しますか?』


 頭の中に、機械音のアナウンスが流れる。


「はい!参加します」

「もちろん参加!!」


 隣にいる愛依と同時に返事をする。

 私にしか聞こえないようなアナウンスだったけど、本当に全プレイヤーに一斉送信してる感じなんだなぁ……


 参加を希望すると、それと同時に開始時刻までのカウントダウンが目の前に表示される。

 どんどん減っていく数字を見てると、変なプレッシャーを感じるのは何でだろう?……それって私だけかな?


「初っ端の回から参加するとか、クロエも結構やる気になってきてるね」


 このランキング戦に向けて武者修行する、とか言っていたせいで、ゲーム内で約一週間会っていなかった愛依と、久しぶりにゲーム内で会話をする。


「うん。発表されたランキング報酬が魅力的だったからね」


 数日前に発表された、このランキング戦の報酬は、いくつかあった。


 まずは『称号』。

 この称号は大きく分けて5つ。

 『ランキング1位』『ランキング2位』『ランキング3位』『ランキングTOP10』『ランキングTOP50』。

 この称号は、次回のランキング戦が行われるまで、ステータス画面にある『称号』という欄にセットする事が可能になる。

 そして、その称号をセットする事によって、ちょっとした効果が付与されるのだ。


 『TOP50』には、常時入手報酬1.1倍。

 『TOP10』には、常時入手経験値1.1倍。

 『3位』は、常時入手報酬・経験値1.2倍。『2位』は、1.3倍。

 そして『1位』には、入手報酬・経験値1.4倍が常時付与されるのだ。


 あと、使い道が微妙そうなスキルを覚える事ができる『スキルの書』とか、運要素が強そうな『武器ガチャ券』『防具ガチャ券』とか、実用性皆無な防御力しかない『おしゃれ用装備』とかも報酬にあったけど、その辺に興味はあまりないけど、全員貰える参加賞の「1時間経験値1.5倍」効果のある『経験の書』には非常に興味がある。


 まぁ何で、そんなに経験値UPに惹かれてるのかと言うと、理由は単純。


 私のレベル上がらなさすぎ!!


 約1週間、私の適正マップと思われる『古の幻林』でレベル上げしてたんだけど、ほぼそれしかやってないのに、上がったレベルはたったの「2」だけだった。


 あ、変なイベント進ませたくないから、2層には近づいてないから、そのせいってのもあるかもしれないけれど、それにしても上がらなさすぎである。


 なので、こういった経験値にブーストがかかるドーピング品は、現在喉から手が出るほど欲しいのだ。


「確かに1000位以内に入れば貰えるガチャ券とかは夢があるよね」


「え?あ……違っ……!?」


 ああ……愛依はソレ狙いなのね……

 そうか……愛依はまだ、次レベルまでに必要な経験値が、アホみたいな桁数にはなってないから、それが正しい反応なのかもしれない。


「違うの?じゃあ……ロリ服みたいなヒラヒラした装備品が欲しいとか?クロエだったら100位以内とか楽勝だろうから普通に貰えると思うよ」


 たしかに、あのオシャレ装備は可愛かったけど、そこじゃないよ愛依……


 あ……ちなみに、ロリ服みたいなのは女性プレイヤーだけで、男性プレイヤーは、執事が着てるみたいなパリッとしたスーツが貰えるらしい。


「あ~うん……じゃあ、それでいいや」


 説明するのが面倒臭いので、愛依には適当に返事をしておく。


「何か適当だなぁ……まぁいいか。ともかく、ランキング戦中にクロエに遭遇したら、私、全力で逃げるからよろしくね!」


 それ、力強く宣言するような事なのかな?

 っていうか、私と戦う事になっても対処できるようにするための武者修行だったんじゃないの?手の内を明かしたくないから、って……


「『正々堂々戦おう!』とかじゃないの?」


「やれる事には限界ってものがあるんだよクロエ君。ちょっとレベル上げたくらいで何とかなるようなもんじゃなかったって事だよ」


 えっと……つまり、私と相対した時の対処法を色々考えたけど、結果としてどうにもならない事がわかったから、逃げの一択!って結論になったって事かな?


「お、無駄話してるうちに、もう時間になるよ。それじゃあクロエ……グッドラック!」


 そう言いながら、愛依が親指を立てたところで、カウントダウンしていた時間が残り0になる。


 それと同時に視界が一瞬真っ暗になり、次の瞬間には密林のような場所に立っていた。


 ……ここがランキング戦のための別フィールドって事なのかな?

 って事は、もう始まってる?


 とりあえず周りをキョロキョロと見まわす。

 私の他には誰もいなさそう……には見える。


 ただ、遠くの方から、魔法攻撃によるものなのか、爆発音のようなものが微かに聞こえてくる。

 つまり、もう接敵してる人達もいるって事?

 じゃあもしかして、私の近くににも誰かプレイヤーが……


 そんな事を考えた瞬間だった。

 突然後ろから魔法攻撃を受ける。


 ちょっとピリっとしたから、たぶんサンダーボールか何かだろう。

 フハハハ!そんな初級魔法程度で、私を倒せると思ったか?


 すぐに後ろを振り返るが、人影は見当たらない。


 なるほどなるほど。この密林を利用して姿を隠して、チキン距離からの射撃って事かな?


 フフ……フフフ……あまい!あますぎるよ見知らぬ人!

 この日のために、自分が持ってるスキルの説明を読み漁っていた私に死角はない!


「『索敵』スキル発動!」


 それは「自分の周辺、一定範囲の魔物・プレイヤーがどの位置にいるのかがわかる」スキル。


 あまり範囲が広くないのは実証済みだけれど、魔法攻撃が届く位置にいるなら、余裕でこのスキルでカバーできる範囲にいるだろう。


 結果、該当するのはプレイヤー2人。

 ただ、1人は『索敵』範囲ギリギリの位置にいるので違うだろう。

 そんなわけで、私を攻撃したのは、もう1人の方だろう。


 ちょこざいにも、私を攻撃した位置にはもうおらずに、私を中心にして円を書くように移動して、攻撃が届く範囲を維持しながらも、私に位置を特定させないようにしている。


 クククク……そんな小手先だけの戦術が、今の私に通じると思うなよ。


 私は、虚をつくように、いきなり相手の方へと全力で駆け出す。


「なっ!?……クソ!何で位置バレた!?」


 焦りながら逃げ出す敵さん。

 そうだよね。魔法使ったって事はマジシャン系だもんね。近づかれたら困るよね。でも逃がさないよ!


「クソ!……ファイアボール!!」


 健気にも、逃げながらも魔法を撃ってくる。


「スペルバニッシャー!」


 それを容赦なく無効化する私。


「は!?何だ!?何が起きたんだよ!!?」


 案の定、大混乱する敵さん。

 そんな、逃げる事が疎かになった敵さんの脇腹を、装備している杖で、思いっきりぶん殴る。


 殴った瞬間、そのプレイヤーは目の前から消え、その場所に『+5pt』という文字が浮かび上がり、消える。


 なるほど、他プレイヤーを倒すと、こうやってポイントが表示されるのね……


 よし!じゃあ、この調子で次行こう!


 次の標的は……とりあえず、さっき『索敵』に入り込んだ人でいいや。


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