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第12話 イベント告知

 教室の窓から微かに入ってくる心地よい風が眠気を誘う。

 この気持ちよさを得られるのは、窓際の席に座る者の特権といってもいいと思う。


 ほどよい日の光が、風にあたって身体が冷やされすぎないように、適温を保ってくれており、それもまた睡魔の活動を活発化させている。


 簡単に言うと眠い!


 休日明けの通常授業というのが、さらに眠気を増しているようにも思える。


 ここまで眠い原因はわかっている。

 理由は単純にゲームのやりすぎだ。


 昨日の夜、調子に乗って遅くまでやりすぎた……


「アハハ!なごみぃ~、そのノートに書いてある文字って何語?私にはミミズがのたくった跡にしか見えないんだけど」


 私の睡眠不足の原因を作った張本人が、弁当片手に私の席へとやって来る。

 まぁ私もそれなりに楽しんでゲームやってたから、一概に愛依だけが原因ってわけじゃないのかもしれないんだけどね。


 ともかく、いつの間にか午前中の授業は、居眠りする事なく乗り切れていたようだ。

 ……ギリギリかもしれないけど。


「それよりも和。運営からのお知らせ見た?今週末ランキングイベントやるらしいよ!」


 お知らせ?全く見てない。

 ランキングイベントかぁ……どんな事やるんだろう?


 私は、そのお知らせを見ようと、何もない空間に手を伸ばして、メニュー欄のトピックスを……


「なごみ~!完全にゲームジャンキーになってるよ~!現実世界でそんな事しても、運営からのお知らせは見れないよ」


「あ……」


 何やってんだろう私。凄く恥ずかしい……


 私は上げていた手を下ろし、そのままスマホへと手を伸ばす。


「あ~いいよいいよ、わざわざスマホで公式ページ見なくても。昼ごはん食べながら私が説明してあげるから」


 愛依はそう言いながら、窓枠に座りながら、私の机の上に置いた、自分の弁当箱の蓋を開ける。


「いやぁ~でも和の気持ちもわかるよ。私も昔、初めてゲームやった時は、そんな風な行動を現実空間でもよくやったから」


 私が何もない空間に手を伸ばした事を茶化しつつ、愛依はランキングイベントの概要を説明し始める。

 その内容はこんな感じだ……


 イベントはバトルロワイアルで行われる。

 イベント開始時刻の5分前にゲームにログインしているプレイヤー全員に、イベントへの参加・不参加の選択を提示される。

 参加を選んだプレイヤーは、イベント専用の別マップへと、位置はランダムに転送される。

 そして、イベント時間になったと同時にバトルロワイアル開始となる。


 他プレイヤーを倒した場合、1人倒す毎に5pt加算され、逆に倒されると3pt減点される。

 また、イベントへの冷やかし参加や、慎重になりすぎて、一戦するごとにある程度HP・MP回復するまで逃げ回る事等の行為を防止するためなのか、5分間戦闘行為をしなかった場合5pt減点される。

 ちなみに、倒されたとしても『衰弱』状態にはならずに、HP・MP全回復した状態で別の場所にランダム転送されリスタートとなる。


 そんな感じな事を1時間半程行い、最終的に所持していたポイントが高い人が1位、という非常に単純でわかりやすい内容となっていた。

 もちろん上位者には、何かしらの報酬があるわけだが、そこはまだ発表されていないらしい。


 何だろう?「休む事は許されない!死んでも戦い続けるがいい!」とか言われてるような狂戦士(バーサーカー)イベントにしか思えないけど、それは私が他のゲームをやった事がないから知らないだけで、普通なイベントなのだろうか?


「それで?和は、どの時間帯参加する?全参加?」


 あ、ちなみに。このイベントは4回に分かれて行われるらしい。

 土曜の10時~、18時~、22時~、日曜の12時~となっており、各1時間半のイベント時間となっている。


 まぁイベントを特定の時間に一回しかやらないと、その時間にリアルの方で予定がある人からクレームがくるからだろう……運営も色々考えているんだなぁ……


 もちろん全部参加したからと言っても、全てのポイントが合算されるわけではなく、参加した回のうち、一番高いポイントが反映される。

 なので、全部参加した方が、一回しか参加できなかった人よりは、多少有利にはなるかもしれないけれど、一回しか参加できなかったからといっても、ランキング上位に入れない、というわけではない。強い人は一回でも十分だろうし、弱い人は何度やっても結果はかわらなかったりするものだ。


「ん~……どうしようかな?土曜の夜あたりにでも参加してみようかな?……愛依も一緒にやる?」


「バトルロワイヤル方式で協力プレイはできないんだから『一緒に』は無理でしょ?ってか、むしろ私は逆に、和がやる時間を避けたいんだけど……」


 ひどっ!?何でそうやって私を避けようとしてるの!?


「あ~……何かわかってなさそうだから言うけど、和と同じ時間にイベント参加して、うっかり和に会っちゃったら、私確実に1キルくらうんだよ。その辺わかってる?」


 あ、その辺わかってなかった。


「イベントは個人戦だから、私と和は敵同士なの。わかった?」


「う……うん。わかったよ」


 とりあえず返事をしておく。


 まぁ言われてみればそうだよね。

 愛依は、私のステータスがバグってるのを知ってるんだから、そんなバグったヤツが敵としてうろついてる戦場は避けたいよね。


「いちおう私は全部参加するつもりではいるから、和がいるであろう時間帯は警戒を厳重にしておきたいわけよ」


 全部参加って……愛依やるき満々だなぁ……

 そういやゲーム始める前の時「ランキング1位目指そう!」とか言ってたしね。

 そりゃあ初のランキング戦となれば気合も入るってものだよね。


「そんなわけで、当日は敵同士になる和とは、今日からイベント終わるまで別行動だからね!色々と対策練らないとならないし、手の内を晒したくないからね!」


「ちょっと待って!?まだ私、ゲームに慣れきってないのに、もう放置されるの!?」


 いくら何でも、イベントに対して気合入りすぎじゃない!?


「大丈夫大丈夫!私が和に教えるべき事はもう何もないから!和なら一人でも十分やっていけるよ!」


 適当!?超適当な事言ってるよこの子!!?


 どうしよう……仕返しに、私もイベント全部参加して、愛依を狙い続けてやろうかな?


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