第11話 アイテム収集
「このチーターがっ!お前の名前覚えたぞ!!運営に通報すっからな!垢バンされちまえ!!」
捨て台詞を吐いて、洞窟から逃げ帰っていくプレイヤー達。
結局、洞窟最深部入り口で見張りをしていたパーティを倒したところ、その事に気付いた、残り全パーティーにケンカを売られる事になった。
なので、見張りパーティーを倒した時と同じように、前衛職の武器を破壊した後全体攻撃魔法で衰弱を付けた。
その結果が、先程の捨て台詞である。
ウェイトタイムの無い通常攻撃で高火力なのが人気なのか、ファイターの人数が結構多く、『ウェポンブレイク』と叫びすぎて、その言葉がゲシュタルト崩壊しそうになった。
あ、もちろんコノ『ウェポンブレイク』ってスキル。技スキルではあるけど、使えばMPを消費する。
とはいえ、本職が魔法使い系と思われる私のMPは、HPと同等に高い。そんな潤沢なMPからしたら微々たるものである。
「いやぁ~……清々しいくらい基本に忠実な捨て台詞だねぇ」
私がゲシュタルト崩壊しかけている間、どこで休憩していたのか知らないが、ゆっくりと私の方へと歩きながら話しかけてくる。
「クロエ、ステータスは高いっていっても、ゲーム初心者って事実は変わらないから、立ち回りとかで不利になったら補助に入ろうかと思ったけど……必要ないくらいに暴れてたね」
本当に助けに入ろうとしてたの!?何か信用できない発言だなぁ……
「本当にゲーム初めてなのクロエ?立ち回りを見てると、使うスキルのチョイスとか、相手が嫌がる事わかってるとしか思えないんだけど?」
「う~ん……スキルの説明読んで、使えそうなスキル使ってただけで、別に嫌がる事とか意識してたつもりはないんだけど……」
あえて言うなら、スキル説明読んで予習してた成果が出たってくらいだろうか?
「まぁたしかにそうか……最初の方とか、クロエけっこうテンパってた風にも見えたしね」
そう見えてたなら、その時点で少しは手助けしてほしかったなぁ……
「それはともかくアイ!早く必要なアイテム集めちゃおう!そして早く外で待機してた人達に場所を譲ってあげなくちゃ!」
本来の目的を思い出して、愛依を急かすように声をかける。
「そうしたいのは山々なんだけどねぇ……長丁場になるかもしれないよ」
そう言いながら愛依は若干顔を曇らせる。
どうしたんだろう?何か問題でもあったのかな?」
「実はクロエが暴れてる間に、端っこの方でリポップしたキノコ狩ってたんだけど、10匹倒しても1つもアイテム落とさなかったんだよね……リポップスピードは上げてても、ドロップ率はけっこう絞ってる感じだよ」
「は?……え!?」
狩ってた?私が苦労してる間に!?姿が見えないと思ったら、ちゃっかりとそんな事してたの愛依!?
いや、、まぁ効率を考えるならソレが正解なんだろうけど、何だろう……何か納得いかない気分になるのは何でだろう?
「ちょ……そんな目しないでよクロエ。さっきの状況、実際私が加わっても足手まといにしかならなかっただろうから、役割分担ってやつだよ、ね?」
う……意識したつもりはなかったけど表情に出てたのか……気を付けないと。
「わかったわかった!休み明けに、昼飯……の時ジュース奢るから許してよ!」
今「昼飯奢る」って言おうとして、咄嗟に「ジュース」に切り替えた?私の機嫌ってそんな安っぽいのかなぁ?
あ、いや……そういえば愛依、自分の分だけじゃなくて私の分もゲームの代金支払ってるんだった。
なるほど、昼飯奢る気でいたけど、自分の手持ちが心もとない事に咄嗟に気付いてジュース奢るってしたのだろう。
「はぁ……仕方ないからジュースで手を打ってあげるよ」
優しいな、私。
「よっしゃ!許してもらえた所で、さっそくアイテム収集しちゃおう!クロエの強さなら、1人で5人分くらいの速さで狩れるだろうから、一気に手分けしてやっちゃおう!!」
そう言うと同時に、モンスターがうじゃうじゃ湧いてきている場所へとかけて行く愛依。頭の上の衰弱マークがちょっと痛々しく見えるけど、それは私のせいなので見なかった事にしておく。
さて、愛依を目で追っていないで、私もアイテム収集に参加しよう。
何かこの場の適したスキルとかあるかな?
再び私は技スキルの説明欄を流し読み始める。
「あ!!」
すぐに絶好のスキルを見つける事ができ、思わず声が漏れる。
「スキル『強奪』発動!」
一言叫び、近くにいるキノコっぽいモンスターを殴りつける。
1匹、2匹!3匹!!4匹!!!5匹っ!!!!
「アイ~!!『猛毒の胞子』ってアイテム5個手に入ったよ~!!」
「はやっ!!!?」
少し離れた位置でキノコモンスターと戦っていた愛依が、私の言葉に即レスしてくる。
衰弱効果のせいで、まだ1匹目と戦ってる状態なのにツッコミ早いな愛依……
「え?冗談でしょ?……ってマジだ!!?」
キノコを1匹倒して私の方へとやって来る愛依。私の持っているアイテムを見て驚きの声を上げる。
「え!?何!?どうやったの!?チート?」
さっきの連中みたいに、私をチーター扱いするのはやめてほしい。
まぁチートって言われても仕方ないくらいのステータスのバグり方はしてるけど、ソレは私のせいじゃなくて運営のせいだし……
まぁともかく……
「えっとね……『強奪』っていう技スキル使ってみたんだ。効果は『5分間、力と魔力が5分の1になるかわり、その間倒した敵モンスターからは確定でアイテムをドロップできる』って書いてあったから、コレだ!って思って」
ステータス低下でボーナス得られる系のやつは、ステータスバグってる私にとってはもってこいなのだ。
「5分の1でも敵一撃かぁ……まぁその辺に関しては今更驚かないけど、軽く引くわぁ……」
私からアイテムを受け取りながら引かないでほしい……私が悪いわけじゃないし……
「まぁともかくクロエのおかげで、昇格して次のマップ進めるよ!いい?クロエ!休日中は、次に解放されるマップを隅々まで探索するよ!!」
私が渡したアイテムを、アイテムボックスにしまい込みながら、テンション高目に愛依が吠える。
ええ……この時は、テンション高くなった愛依が、適当な事を叫んだだけだと思っていました。
……まさか本当に、休日中ずっと、新しく解放されたという『リック山脈』の探索をするはめになるとは思ってもみませんでした。