表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/38

第10話 蹂躙

 さて、では改めて……どうやってこの連中を懲らしめてやろうか?


 普通に倒して『衰弱』状態でステータス半減させても、ここに出現する魔物は対処できてしまう事はわかっている。

 洞窟の外に追い出された人達と同じ思いを味合わせてやるにはどうするか……


 とりあえず流し見程度で、技スキルの効果を覗き込んでみる。


 何故『魔法スキル』ではなく『技スキル』なのかと言うと、魔法より技の方が、多彩な効果があるからだ。

 まぁ魔法も、デバフ魔法とかは多彩な効果はあるのだけれど、大半が枕詞に『戦闘中の~』という言葉が付いている。

 つまるところ、一度戦闘が終わってしまったら効果が切れてしまう、という事だ。


 対して技スキルは、軽く見た感じ『毒付与攻撃』とか『麻痺付与攻撃』とか、付与させれば一定時間効果が切れない攻撃が目についたのだ。


 そんなわけで、今のこの状況で、一番効果がありそうなスキルを探しているのである。


 あ、うん……流し見しているとはいえ、隙だらけなんで、その間何度か斬られてはいるんだけどね。

 ダメージなんて無いに等しいので気にしてない。というか、2回に1回は攻撃が勝手に逸れていってる感じなんで、本当に無いに等しい。

 動いてないのに「回避してる」って感じが何ともいえない気がする。

 ゲーム内でのステータスの重要性を思い知らされるね……あ、私のHPまた回復した。

 2人がかりで斬りまくって、ダメージ20弱ってとこで『一定時間毎』か……ああ無情。


「何なんだよ!?何なんだよコイツ!!?」


 ついに叫びだすリーダーっぽい人。

 叫びたい気持ちはわかるから一旦落ち着こう?所詮はこれゲームだよ。


 それに……やっと私も良いスキルを見つけたから、この後もっと激しく叫んでもらう事になるから、今はまだ慌てるような時間じゃないよ。


「ウェポンブレイク!」


 私は技名を叫びながら、私を攻撃しようとしていた、もう一人のファイターの剣を、手にしていた杖で叩く。


「……は?」


 私の一撃を受けて、ヒビの入った自分の武器を見て不思議そうな顔をするファイターの人。


 残念。

 一撃じゃ破壊できなかったか……だったら!


「ウェポンブレイク!!」


 一撃でダメだったら二撃目を入れればいいだけ!


「何でだよ!!?武器の耐久値、まだ60%以上残ってたのに!!?」


 二撃目を受けて完全に粉砕したファイターさんの武器。

 そのリアクションを見て満足した私は、次の一撃をリーダーっぽい方のファイターに放つ。


「ウェポンブレイクっ!!」


「はぁ!?何だコレ!!?」


 こっちの武器は一撃で壊れる。


 おそらく、こっちのリーダーっぽい人が、今までメインアタッカーだったようで、その分武器の耐久値が低くなっていたのだろう。


 まぁともかく……私が使った『ウェポンブレイク』という技。効果は『成功すると相手の武器の耐久値を40%低下させる』というものらしい。

 そして重要なのは、次に書かれていた『成功確率は「技」と「運」依存。また、相手の「技」と「運」が高いと回避される確率も高くなる』という部分。

 つまるところ、ステータスがバグったように高い今の私が使えば、ほぼ確実に成功するスキルなのだ。


 そして、ここに来る途中に愛依が言っていた「武器を装備していないと、敵を攻撃できない」という言葉。

 つまり、武器を破壊されたこの連中は、武器を修理するために、この場に居座る事ができなくなるのだ!


 ……たぶん。

 なにぶん素手でも攻撃できちゃう、私という実例がいるので確証ができない。

 その辺は、私は特殊なのだと思っておきたい。


「ファイアボール!」


 相手の武器を破壊して悦に浸っている私に突然、敵パーティーのマジシャンが攻撃魔法を放ってくる。


 何で!?「魔力下げるデバフ魔法かけてろ」って指示されてなかった!?何で不意打ちで魔法攻撃してくるの!?


 とりあえず落ち着け私……

 こんな時に使える便利なスキルが、魔法スキルにある事を私は知っている。

 うん、愛依の説明も聞かずに、スキル説明読みふけっていた甲斐があった。


「スペルバニッシャー!」


 私がスキル名を口にした瞬間に、私へと向かって飛んで来ていた火球が、跡形もなく消失する。


 スキル効果説明には『敵の放った魔法を打ち消す魔法。チャージタイム無しで使用可能だが、初級魔法にのみにしか効果がない』と書いてあった。


「はぁ!?何で魔法が消えるんだよ!!?どういう原理だよコレ!!?」


 原理を聞かれても、ただ説明読んだだけの私がわかるはずない。


 とはいえ、使ってみてわかったけど、効果が限定されてるとはいえ、後発なのに先発された魔法を消せるのはけっこう便利かもしれない。

 コレは今後のためにも忘れないようにしておこう。


 それはともかく、とりあえず今は反撃をしよう!


 愛依に衰弱付けちゃった魔法……の効果は、半径5m以内だったよね?近くにいるファイター2人と中衛あたりにいるナイトはギリギリ巻き込めるかもしれないけど、後衛の2人は範囲外かな?

 そもそもで、今ソレ使ったら、位置的に、再度愛依を巻き込むかもしれないから、やめておこう。


 そうなると、どの魔法を使えばいいんだろうか?

 とりあえずは全体攻撃魔法は必須として、どの程度のものを選択するべきだろうか?

 できれば一撃で決めたい。


 確かプリーストは魔法防御が高いんだったよね?

 敵にプリーストがいる時点で、中途半端な魔法だと決めきれない可能性があるかもしれない……だったら、最初から一番強そうな魔法にしておいた方がいいのかもしれない。


(えっと……『エクストリーム・フレイムストーム』セット!)


 私は、炎系の『全体攻撃』と説明に書いてあった魔法の一番強そうなものを選んでセットする……ってチャージゲージの貯まるスピード遅っ!!?

 『高速詠唱』のパッシブスキルあってコレ!?

 そういえば、戦闘前に敵のリーダーっぽい人が「全体攻撃魔法はチャージタイム長い~」とか言ってたかもしれない。

 たしかにコレは長いわ……だったら、ゲージが貯まるまでに、少しでも相手パーティーの生存確率を減らすために、一番魔法防御が高いと思われるプリーストを物理で殴っておこう!


 プリーストへと向かって駆けだした私を見て、すかさず敵のナイトが動く。


「『かばう』発動!」


 効果のよくわからないスキル名を叫んでいる。


 たぶん、私の技スキル欄にも同じスキルがあるだろうから、効果を確認してみてもいいのかもしれないけれど、既に攻撃モーションに入っているので、そんな暇はあんまり無い。

 というか、スキル名で何となく効果は予想できる。

 それに、効果がわかったところで、今更行動を変更できない。


 私は走っていった勢いのまま、装備している杖でプリーストを殴りつける。

 しかし、私が殴ったプリーストは、何も変化なくその場に立っていた。


 クソっ!やっぱり、さっき使われたスキルの効果のせいでダメージが……


「……嘘だろ?……物理攻撃でナイトが一撃って……どんな魔法職だよ……?」


 ふと、プリーストのつぶやきが耳に入る。

 急いでナイトの方へと視線を向けると、衰弱マークを付けて茫然自失になっているナイトの姿があった。


 なるほど、予想通り『かばう』ってスキルは、誰かが受けるハズのダメージを肩代わりする効果があるんだね……そして、今回は肩代わりしたダメージが致死量だった、と。

 って、私の攻撃力どんだけバグってるの!?


 そうこうしている内に、セットしていた魔法のチャージゲージが貯まる。


「えっと……エクストリーム・フレイムストーム!!」


 さっそく魔法名を口にすると、その瞬間に、荒れ狂うような炎の竜巻が5つ出現し、敵パーティー全員を飲み込んでいく。

 例に漏れず、私のすぐ近くにいたプリーストも巻き込まれていたわけだけれど、すぐ目の前で上がる炎の柱から熱さが伝わってくるほどの激しさがあった。


 ……フルダイブ型のVRゲームって凄いなぁ……まるで現実のような熱気を肌で感じる。


「…………ダメージって5桁いくのかよ……?」


 炎が消えて、代わりに衰弱マークを付けて現れたプリーストのつぶやきが聞こえた。


 魔法防御が高いプリーストでも5桁のダメージって事は、どうやらオーバーキルだったっぽいね。


 そして……私のステータスのバグりっぷりって思っていた以上に凄いんだなぁ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ