かわいそう
青髪の女性。そして三人の少年少女。もしも場所が芝生の張られた昼間の公園であったらどれほど平和に見えているのだろうか。しかし彼女らがいる場所は日の上がらない街の路地裏である。
「この辺りの街なら、人がすこし増えても分からないだろう。早く隠れよう」
追われている状況で身を隠すというのは、そう簡単な行為ではない。
「大天使様がどこへ行かれるおつもりで?」
路地裏の壁から大量の金属の三角柱が生え、アミラビリスの体を貫く。
「その大天使様に随分と手荒な扱いじゃないか。私の国だったら不敬罪で殺されるぞ」
アミラビリスは瞬時に大量の三角柱の真上に転移し、足を長い植物の幹へと変異させて金属柱を全てへし折った。そのまま、空中で体をねじり、建物に足を突き刺して立った。
「まずい」
アミラビリスはそう呟く、彼女の足の木は脆く崩れ落ち、飛べない体は地面に強く引き落とされる。
地面から端子の付いたコードが現れ、アミラビリスの頭に突き刺さる。
何かを言いかけたアミラビリスの体は弛緩し、動かなくなった。
「随分とあっけないな」
コードから声が鳴る。
ほんの数秒の間に自身より格上の存在が壊されてしまったことを感じたレイブは、ロクとナナを抱え、自身の足の破損を顧みずに全力でビル群の上空に飛び上がり、地面と水平に飛行を始めた。
数百メートルも飛ばないうちにレイブの足がひび割れて火を吹き、崩壊していく。
「ごめん」
段々と高度を落としていくレイブは、ビルの屋上へと二人を放り投げた。彼女はそのままビルとビルの間の路地へと落下していき、大量の黒いゴミ袋の上に落下した。
ごみ袋のいくつかからは声にならない悲鳴が上がる。その声を聞いてレイブは目を見開き、わずかに動く腕でゴミ袋の上から滑り落ちた。
「人……?」
「あなたもこうなるんですよ」
レイブの前に、ゆっくりと金属の四角柱が大量に降りてくる。
「僕に近づくな!」
彼女の左目が光り、四角柱群に向けて光線を放つ。しかしその光は、あっけなく躱された。四角柱はか弱い少女の全身に突き刺さった。
「ゴミに出すなら、危険物は外しておかないとな」
動けなくなった彼女の正面に、三角柱の男が現れ、レイブの方へと手を伸ばす。
「やめて……」
レイブの目が光るが、光線を放つ前に目の下に指を突っ込まれ、そのまま抉りだされる。
数分後、大量に積み上げられた黒いゴミ袋は、先ほどと比べて一つ増えていた。
かわいそうはかわいい