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デクラレーション

「そう。世界守備連合が迫っている。攻撃されている惑星のある星系の座標は4562の13455654325の234563765274。敵軍は三光年離れた星系に基地を作っている。三光年以内には星系は一つしかないから分かるはずだ。敵艦隊の予想到着時間は34時間20分後、攻撃されている惑星の文明では対処が不可能だ。敵の艦は……今から報告するのはあくまで確認できた最低限の戦力だ。おそらく倍以上の戦力がある。ノノトリ級航宙母艦が一隻。艦載機は不明。イイクト級の航宙戦艦が二隻。ダズル迷彩で分かりにくいがトルメルコス文明の戦艦が約80隻。巡洋艦が約700隻。おそらくこちらが主戦力だ。無人艦でいいから支援がほしい。骨董品のような戦力しかない。こちらの戦力では防衛は不可能だ。支援を頼む。確か付近に大昔の軍艦から作った舟が旗艦の友軍艦隊がいたと……」

「現在、宇宙戦艦武蔵率いる第三探索艦隊は交戦中で、支援は不可能です」

 通話は叩き切られた。

 後にデクラレーションと名づけられる恒星を中心にして回っている惑星の一つに、世界守備連合軍の持つ唯一のサンシュウ宇宙団における前線基地が存在する。

「ピピルアの奴らに情報は与えたが、文明が貧弱で向上心に欠けている。警告しに来た守備連合の使者を殺したらしいしこのままじゃ滅びるな。守り切れるか……?」

 小惑星の中に穴を掘り、そこに隠れてその基地を偵察している男、鷹山の文句を引き出したピピルアというのは、この隣の星系の星の名前である。6つの大国と無数の小国がひしめき合い、スキルと呼ばれる個人の特殊能力と魔法と呼ばれる技術によって戦争を行っている。

「スキルとやらは、結局のところ高度文明での科学や魔法を勝手のわからないまま使っているだけだ本物の高度文明には勝てない、何故奴らはそれが理解できないんだ……」

 彼らの知る魔法などとうの昔に科学に併合されているのだ。対策などいくらでもある。物質化した魔法を分解するコーティングなど、魔法が原子のような状態とバラバラに分離した状態をたやすく行き来する素粒子であることが分かった時点で簡単に作れるようになってしまったのだ。新たな理屈の魔法でなければ太刀打ちはできない。

「彼らと我々が協力しようとも惑星を守り抜くことは不可能だ……」

 これは紛れもない事実であった。さらに、鷹山の作戦の目的は敵から情報を奪いアミラビリスの救出に役立てることでもある。時によってそれはただ戦うよりも難しい。

 そして、彼が考えている以上に戦力差は開いている。彼らの持つ戦力はピピルアの衛星軌道上に配置した巡洋艦一隻と、デクラレーション星系で小惑星に偽装されている鷹山の高速戦艦、そして未知数の龍のみだった。

 しかし、世界守備連合の戦力は空母7隻、戦艦1200隻、巡洋艦5400隻、駆逐艦44000隻、到底ひっくり返せるものではない。

 さらに、鷹山が支援を求めた太陽系連邦も勢力地は遥か遠く。戦力を回してやる義理もない。

「レイブは艦載機の範疇な火力だからどうにもならないし、トルメルコスの中型艦の時点で砲戦能力はありすぎるしどうしよう」


ノノトリ級航宙母艦    重量 約20万トン

             馬力 約6000万トン

 全長  768m

 最大幅 120m


  ナナグトト公国の艦船。艦載機を艦内部から艦首に向けて発進させる仕組みを取っているため、艦の外側に余裕があり非常時に艦橋を分離して脱出することが可能。横幅が他艦船よりも広くとられており、灰色の塗装がされている。


    魚雷発射管 四門

    艦底52mm二連装収束光線速射砲塔 四基

    甲板52mm二連装収束光線速射砲塔 四基

    搭載機数 70機

 

イイクト級航宙戦艦    重量 約18万トン

             馬力 約4500万トン

 全長  564m

 最大幅 48m


 ナナグトト公国の艦船。装甲が非常に厚い。トルメルコス文明のものと似たシマウマのような塗装が施されている。

   

    艦首魚雷発射管 四門

    甲板360mm四連装反陽子砲塔  二基

    艦尾360mm四連装反陽子砲塔  二基

    甲板540mm二連装反陽子砲塔  三基

    甲板52mm二連装収束光線速射砲塔 六基

    艦底52mm二連装収束光線速射砲塔 四基

 


ルポユーム級戦艦    重量 約26万トン

              馬力 約7200万馬力

 全長  984m       

 最大幅 79m


 トルメルコス文明の技術によって制作されている戦艦。艦首が二つあるという特異な形状をしており、シマウマのような塗装がされている。


    艦首魚雷発射管 十二門

    艦首439mm三連装反陽子砲塔 四基

    艦尾439mm三連装反陽子砲塔 二基

    艦橋37mm三連装収束光線機銃 十二基

    艦底37mm三連装収束光線機銃 十六基

   


メンカル型高速可変戦艦 二番艦 ディフダ    重量 約12万トン

                        馬力 約15億5600万馬力

 全長  320m         

 最大幅 35m         


 艦橋を内部に収納可能で、収納後は艦船というよりはミサイルに近い形状をしている。鷹山の乗るヒマワリには暗い黄色の塗装がされている。元々は金色の予定だった。星間物質の濃い空間や、大気圏内を航行できる。鷹山さんは一人乗りできる。この艦一隻で、量産無人戦艦を四隻作る際と同じ費用がかかる。名前の由来はクジラ座の星。


    艦底隠蔽240mm単装陽電子カノン砲塔 六基

    甲板隠蔽240mm単装陽電子カノン砲塔 六基

    隠蔽艦橋対消滅拡散砲 一基

    艦首魚雷発射管 六門

    艦尾魚雷発射管 六門



パーロレン級巡洋艦             重量 約14万トン

                      馬力 約4800万馬力

 全長  457m

 最大幅 43m


 トルメルコス文明の技術によって制作されている巡洋艦。トルメルコス文明での扱いは巡洋艦だったが、大きさは他文明の戦艦とほぼ同等。他の艦と同様にシマウマのような塗装がされている。

 

     艦首魚雷発射管 八門 

     甲板439mm三連装反陽子砲塔 二基

     艦底439mm三連装反陽子砲塔 一基

     艦橋37mm三連装収束光線機銃 四基

     艦尾三連装ミサイル発射機 六基



ルルタリア級航宙巡洋艦           重量 約1万トン      

                      馬力 約5000万馬力


  全長  236m

  最大幅 25m 


  ナナグトト公国の艦船。ミサイルを主体とする。灰色の塗装がされている。


     艦首魚雷発射管 四門

     甲板166mm二連装収束光線速射砲塔 一基

     艦底166mmニ連装収束光線速射砲塔 一基

     艦尾四連装ミサイル発射機 八基

     艦橋四連装ミサイル発射筒 二基



シロワニ型航宙巡洋艦 七番艦トビエイ    重量 約6000トン

                      馬力 約3600万馬力

  全長  150m

  最大幅 16m


  太陽系連邦と、その同盟国である機動国デンドロビウムの艦船。人と同じ思考力を持ち、シロワニ級は極めて高い演算機能を持つ超高性能制御AIが積まれており、人が乗っていなくても量産無人艦の指揮を行うことができるはずだったが、AIが高性能すぎて宇宙に怯える、元となるAIが高価、AIが成長するまで十数年かかる、などの欠点により生産は八隻に留まっている。同型艦の中で唯一地球外であるエンケラドゥスで製作された。衝角がついている。


     甲板290mm三連装収縮衝撃熱線砲 二基

     艦尾290mm三連装収縮衝撃熱線砲 一基

     艦橋35mm対空機銃 十二門

     艦首100m魔式対生成輻射機 一門

     艦首魚雷発射管 六門

     艦尾魚雷発射管 六門


 

ウルピリオ級駆逐艦             重量 約8000トン

                      馬力 約5600万馬力

  全長  167m

  最大幅 29m 


  トルメルコス文明の技術によって制作されている駆逐艦。他の艦と同様にシマウマのような塗装がされている。


     甲板439mm反陽子砲塔 一基

     艦橋37mm三連装収束光線機銃 六基

     艦首魚雷発射管 二門

     艦尾三連装ミサイル発射基 九門


 正面から打ち合えば、勝機はない。

「基地の中には転移装置と決戦兵器があるようだな。破壊か奪取が出来ないと逃げられもしないな。ピピルア沖での開戦の前に奪取するしかない。突撃するか」

 ディフダは、大気圏突入が可能かつ、大気圏突破が可能だった。可能な選択ではあるが、吉となるか凶となるかは誰にも分からない。鷹山は吉に転ぶと考えたからこんな事を行おうとしているが。

「発見されないことを祈ろう」

 太陽系において、小惑星同士の衝突は十万年に一度とされている。この星系でも同じだ。しかしながら、この星の指揮官は小惑星一つ一つの動きを監視し続けるなどしていない。それは、小惑星に隠すことが出来るのはせいぜい数隻であり、それだけでは戦局は変わらないという総数決戦主義の現れであった。

 二つの小惑星の衝突は、現代における日食のように珍しい娯楽として扱われた。中から黄色い船体が現れるまでは。

「敵艦発見、総員、高度戦闘配置。基地にも通達しろ」

 最も小惑星に近い位置に居たウルピリオ級駆逐艦は、主砲を黄色い艦に発射する。しかし、ディフダは機体を回転させてそれを避け、収納されていた砲塔と艦橋を展開し、陽電子カノンが放たれる。

 赤い光弾が駆逐艦の甲板に直撃し、強烈な熱を生み出して装甲を融解させていく。着弾の際に生まれた強烈なエネルギーはあっさりと艦全体に広がり、白黒の船体にいくつもの赤熱した斑点を作った。そして、艦は爆発とともに溶解した金属の塊となった。

 脅威を察した周囲の艦隊から、ミサイルが発射される。まばらに発射されたミサイルは、振り切ろうとするディフダを追いかける。推進剤の煙が幾何学模様を描く。

 ディフダは艦橋を収納し、戦艦としては異常な加減速と回転を繰り返しながら主砲で無数のミサイルを撃ち落としていった。

「あれは地球のメンカル級だ。おそらく長射程の決戦兵器が装備されている。向かってくるならいい。逃がすな。退路を断て」

 無数の駆逐艦と巡洋艦がヒマワリを取り囲んでいき、ディフダのモニターに映る真っ黒な宇宙空間がシマウマのような模様に埋め尽くされていく。そしてそれぞれから青い反陽子の輝がやってきて、少しずつではあるが、ディフダのズダエッテ防壁が損耗していく。

「やはりかなりの物量だ。これを短時間で用意するとは……どうやらやはり転移装置があるようだな」

 世界守備連合に加入する存在は基本的に自身の領域を侵されることを恐れる。そして、意図せぬ領域侵犯が起きることがないようにお互いの領域を把握するために地図のようなものがほとんどの部隊に配られている。

「重力艦がいないし突っ込んで情報を奪ったら、転移で離脱できるな。これ」

 ヒマワリは艦橋に近い砲塔を高く上げることで火力を前方に集中させる。そして、急加速しながら、吹き飛んだ数隻の艦船の残骸を押しのけて地上に向けて進んでいく。

「やつめ、地上に落下するつもりだな。あのままの速度で落下されると追いつけん。こうなれば……このドドザエルで反航戦を仕掛ける。イイクト級の砲は有効打になりうる」

 白黒を構成していたうちの一隻がヒマワリの正面に移動し、反航戦を仕掛ける。ドドザエルの前方に指向された三基六門の540mm砲から青い光線が放たれ、ほとんど機能しなくなっていたディフダのズダエッテ防壁を貫いて、彼女の艦底部の右舷砲塔を周囲の装甲とともに三基削り取る。

 しかし、ディフダは残された三門の艦底部の砲塔を収納し、左舷部でドドザエルの艦底部に体当たりを敢行した。

 ドドザエルの短い砲身がついた四基の副砲を削り取り、ディフダは通り過ぎて行った。そのままの勢いで包囲を脱し、反陽子光線で艦表面の装甲を少しずつ削られながらも大気圏に突入する。

「逃したか。すぐに地上基地に伝えろ。地下の本命基地には侵入させるな」

「ルヴィン艦長。敵艦が基地から離れた位置に落下していきます」

「 やつめ、決戦兵器を使う気だ。我々を一方的に狙うために落下したのか。総員、宇宙服を装着して衝撃に備えろ」

 ディフダは基地の大陸から少し離れた海に轟音と水柱をあげて落下し、艦橋を展開する。艦首は大陸の基地の方を狙っている。落ちた場所が場所なので、迎撃部隊が到着するにも時間がかかる。それが、地上部隊の破滅を招く。

 艦内を防御するためのシャッターが窓を覆い、若干海面から数メートルほどの高度まで上昇したディフダの艦橋対消滅拡散砲が格納庫や対空設備をロックオンしていく。

「副推進機起動準備よし、慣性制御正常、光学的未標準敵設備なし」

 確認すべきものを確認し終えた鷹山は、対消滅拡散砲のボタンを押した。


 二本の光の筋が、大陸に向かって伸び、沿岸部で衝突が始まる。二本の光線は対消滅を発生させながら、一瞬で大陸の向かい側へと達して消えた。

 対消滅によって発生した光は、ほぼ同時に地上を襲い、ロックオンされた物などは跡形もなく消し飛ばしていた。

 残ったのは表面が熱によって焼けただれた無数のクレーターのみだった。


 海中設備の確認に駆り出されていたため決戦兵器による攻撃を受けなかったパーロレン級が海中から飛び出して一隻でディフダに反航戦を仕掛ける。

「しまった」

 パーロレン級も、ディフダも全砲門の斉射を行う。赤と青の光が交差し、お互いの装甲に触れる。ディフダは艦橋の左半分と甲板の装甲や砲塔が吹き飛び、パーロレン級は火を吹き出しながら再び海中へと沈み、動力炉の暴走による爆発で強烈な蒸気と水しぶきを上げた。

「ただでは……すまなかったな」

 中破した状態でディフダは主砲で穴をあけ、基地に侵入した。鷹山はディフダを地面に下ろし、艦橋から飛び降りる。そして、刀を抜き、呟いた。

「俺は、情報と武器を手に入れ、あいつらは、戦力を手にする。このための突撃だ、成功してやる」

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