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6 カジ、初仕事に出掛ける

 トラサーモン狩り当日。

 待ち合わせした場所で待っていると、マスオが二匹のモンスターを連れて歩いてきた。一匹はウナギに、もう一匹はエイに似ている。

「よう、嬢ちゃん。今日は晴れてよかったな。絶好の狩り日和だな」

「はい。マスオさん、今日一日よろしくお願いします」

 狩り日和かはわからないけど、晴れてよかったと思う。雨だと川の増水とか注意が必要そうだし。

「さっそく出発だ。コイツらのことは歩きながら紹介するぜ」

 マスオが自分が連れているモンスターを見ながらそう言うので、俺たちは街道を歩きだす。


「コイツはライデンウナギのうなこ。光属性の電撃系の攻撃が得意だ。今日はコイツがメインアタッカーで、俺がサブ、嬢ちゃんとピーコがサポート、カジが周囲の警戒を担当してくれ」

 うなこは体長五メートルくらいで、見た目は普通のウナギとあまり変わらないように見える。それより、空中に浮いてるんだけど……

「コイツはオオアオエイのえいた。運搬担当だ。戦闘力は期待しないでくれ」

 えいたは二畳くらいの大きさがあり、名前のとおり体の表面が青い。こっちも浮いてる……

『うなこ、えいた、今日はよろしくな』

『よろ〜』

『……』

 挨拶をしたが、えいたからは返事は返ってこなかった。別に無視されたわけじゃない。

 最近わかってきたんだけど、モンスターはみんな話せるわけではない。人間並みの知能を持っているやつとなるとかなり少ないみたいだ。ねこまたの長老やピーコと同じようにみんな普通に会話が出来るのかと思っていたら、むしろその二匹がイレギュラーだった。


 マスオが延々と二匹について話し続ける。ヴェルは真面目に聴いているけど、俺はマニアックすぎる内容に若干引きつつ軽く聞き流す。うなこの発電器官がどこにあるとか、えいたの綺麗な青色を出すためにどんな餌をあげているとか興味ないし、この先役に立つ気がしない。

 興味を引いたのはオオアオエイは元々空中に浮くことが出来る種類のモンスターということと、うなこは魔道具を付けることで浮いているということだけだ。この魔道具は水中生物ようで、空中に浮く効果と体が乾かなくなる効果が付いていて、水中を泳ぐように、空中を泳げるようになるらしい。確かにうなこを見るとまるで泳いでいるように見える。


 マスオの話を聞いているうちに、街道を外れるところまで来た。街道を外れるとモンスターに遭遇する可能性が高くなってくるので、辺りを警戒しながら進んで行く。さすがにマスオも喋らなくなった。

冒険者はランクCになれれば一人前と見なされるらしいので、マスオは一人前の冒険者ということになる。先程から鳴き声や足跡からどんな種類のモンスターがいるかを推測してヴェルに教えている。その姿を見るとただの水棲モンスターマニアではなく、ベテランの冒険者の風格がある。


 歩くこと数時間。ついに河原が見えてきた。

ここまでは何事も無く順調に来たけど、前方に熊みたいなモンスターがいる。多分あれがミニベアだろう。

「急ぎたいところだけど、見てのとおり邪魔者がいるから先に片付けよう」

マスオがそう言い、うなこに指示を出す。

「うなこ、お前の電撃をアイツに喰らわせてやりな!」

 うなこが体の表面に電気をバチバチと発生させると、ミニベアに向かって放った。電撃が直撃するとミニベアは倒れ、そのまま動かなくなった。

 あれ? 一撃!?

 ミニベアと戦ったことがないので凄いのかわからないけど、あの電撃が強力なのは間違いないだろう。


「カジ、コイツがミニベアだ。匂いをしっかり覚えて、コイツが来たら俺に教えてくれ。うなこなら一撃だけど、カジにはまだきついと思う。俺も不意を突かれたらやばい」

 ある意味、狩りの前にコイツに遭遇したのは運が良い。これでミニベアの匂いが覚えられる。

ミニベアは肉は臭くて人気がないらしく、売れる毛皮と爪だけ持ち帰ることにした。ヴェルはミニベアの解体方法はわからないようで、マスオに教わりながら解体していく。解体が終わると、再び河原の方に歩いて行く。


 河原とその手前の草地の境の辺りでマスオが立ち止まった。

「ここらへんで少し休憩しよう」

 そこらへんに座り込み、狩りの前に軽く早めの昼食を取る。

 ここから川が見えるけど、流れは緩やかだ。河原の石は丸い小石ばかりだから、ここは川の下流の方なんだと思う。


 食べ終わるとマスオとヴェルは武器の手入れを始めた。マスオの武器は槍だ。自分の身長よりも長く、刃の部分は細長くて突くのに特化した感じだ。

準備が終わると狩りに使わない荷物はまとめて、すべてえいたに乗せた。ヴェルを見ると少し緊張した様子だ。ヴェルにとっても今回が初仕事で、戦い慣れたウルフとかではなく初見のモンスターが相手なので仕方ないだろう。

「嬢ちゃん、もっと力を抜きな。俺がちゃんとサポートするし、今回の目的はただの狩りだ。村を襲うモンスターの討伐とかじゃないから、アクシデントがあっても最悪逃げればいいんだからよ!」

「は、はい!」

 ヴェルは目を瞑り、深呼吸をする。

 俺も少し緊張していたけど、ヴェルの様子を見ているうちに気付いたら落ち着いていた。

『よし……』

 これが俺の初仕事だ。気合い入れて行くぞ!

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