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無為流転 ~どうということもない日々を綴る~  作者: 紫蘭
令和二年(二〇二〇年)八月
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八月二十三日 マクドナルドと少年たち

八月二十三日 日曜日 晴


 妻が美容院に行くまでの時間つぶしにとマクドナルドへ寄った。ハッピーセットを買うのが目的だ。息子が最近ハマっているドラえもんがハッピーセットに登場していたからだ。


 店内はコロナ禍もあり二名席には隣の席との間に仕切りができていた。従来の四名席はそのままで隣との席に仕切りはもちろんない。


 席につき息子とハッピーセットの使い方について話したりと会話が弾んでいたが、たまに大きな笑い声が叫び声のように聞こえてきて邪魔をする。大きい声がずっと続くのも煩わしいが、数分に一回ペースで、落ちる雷のように聞こえてくる叫び声は息子との弾むの会話を中断させられ、かなりのストレスが溜まる。


 叫び声の主は後ろの席の、だいたい十二~三歳くらいだろうか、小学生高学年とも中学生とも見える少年たちから聞こえてくる。


 彼らは背中合わせに並んだ四名席ふたつに陣取りなにやらゲームをしているようだった。ソーシャルディスタンスなんか関係なしと言わんばかりに前と後ろの席を行ったり来たりし、テンションが上がると奇声を発しているという状況なのだ。言動ともに甚だ迷惑である。


 しかしこうも思う。近くに進学塾や進学校があるが、彼らはそこの生徒なのではないだろうか。勉強漬けの生活の中でストレスを発散できる場も少なく、マクドナルドでのゲームをし、発狂するのもまたストレス発散の一環なのではないだろうか。そう思うと私は彼らに対して憐れみさえ抱いてしまった。


 妻の美容院の時間も間近に迫ってきており、そろそろ店を出る準備をとトレイの上を整理しトイレに席を立つ。


 席に戻る際に少年たちの方を見るとその一角だけ異様なテンションで盛り上がっていた。周囲を囲む他の客たちは、子どもたちがうるさすぎるので比較的静かにしているようにも見えるが、無関心を装い食事を楽しんでいるようにも見えた。私も彼らのように無関心を装いたいが、奇声が聞こえると今しがたまで持っていた哀憐(あいれん)の感情はどこかへ飛んでいってしまった。やはり迷惑なものは迷惑なのだ。


 時間もきたので店を出る。外の喧騒に触れた瞬間、なぜか安堵の胸をなでおろしていた。


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