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無為流転 ~どうということもない日々を綴る~  作者: 紫蘭
令和二年(二〇二〇年)九月
19/37

九月九日 久々のスーパー

九月九日 水曜日 曇時々雨


 久々に徒歩で買い物に行くことにした。帰りはバスを使うのでさほど歩数も抑えることもでき問題ないだろうと思った。目標は五千歩以内で家に帰ってくることだ。


 痛風になってはや二ヶ月あまり。久々の道のりは間が空いていたにも関わらず風景はさほど代わり映えがしなかった。曇り空も風景の単調さに力を貸し変化に気づかせないようにしているようにも思えた。何か新しい発見があるわけもなくいつものようにスーパーへと向かった。


 店内に入ると痛風前のことを鮮明に思い出し、どこか気恥ずかしい気分になってくる。店員さんに顔を覚えられていることもあるのだろう。自意識過剰気味にあたりを見渡してしまう。これでは不審人物だ。


 野菜は思ったよりも安くなっていた。トマトの数は少ないけど色もよく美味しそうだ。梨が安い。キャベツの値段は安いわけではないが立派な大きさだ。忘れていた、一番の目的でもある豚肉の切り落としを買わなければならない。次第に以前どうしていたのかを思い出していく。


 しかしレジで油断をしてしまった。以前は会計の際にレジで袋詰をしてくれていたが、感染症対策でお客対応になったことをすっかり忘れていた。


 「お肉はこの袋に入れてください」と私。


 「お客様にはあちらで詰めてもらうことをお願いしています……」


 「あ、そういえばそうでしたね……」


 間髪を入れず返答されてしまったのでついつい笑って誤魔化してしまった。いつもならしないような凡ミスだ。顔から火が出るほど恥ずかしい。逃げるように作業台へと向かい、何事も無かったように野菜を袋へと詰めた。


 これから他に八百屋とスーパーの二店舗を周ることになるのだが移動はバスだ。少し蒸してはいるものの涼しいので歩いて行きたいところだが、足に爆弾を抱えている身としては難しい。非常に残念だ。


 バスに乗り、しばらくすると雨が降ってきた。歩かなくて良かった。

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