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無為流転 ~どうということもない日々を綴る~  作者: 紫蘭
令和二年(二〇二〇年)九月
17/37

九月七日 カレーと震災

九月七日 月曜日 曇


 超大型と称された台風十号は九州に上陸することなく晩のうちに日本海へと抜けていった。関西も警報こそ発令されたがさしたる被害も少なく朝を迎えることができた。


 涼しい朝だ。


 昼食は喫茶店で取った。カレーだ。グリーンカレーとバターチキンカレーがあり後者を選ぶ。添え物がゆで卵に甲南漬、ドライ無花果がついてくる。辛いのは苦手だがこのカレーならばなんとか食べることができる。カレーといえば定番は福神漬だが甲南漬もまた良い。


 突然大声が聞こえたので外に目をやると、おじさんが柱の向こうへ何かを叫んでいる。周りには何か紙のようなものが散らばっている。何があったのだろうか、喧嘩が起こるのかなと見ていると、柱の向こうからネルソンズの和田まんじゅうのような背格好のおじさんが出てきた。大声おじさんは和田まんじゅう(のようなおじさん)の首に手を回し談笑をしだす。知人のようだ。それにしても声が大きくうるさい。


 話が一段落したようで何事もなく二人は別れ、大声おじさんの方は散らばった紙を拾い始めていた。どうやら宝くじのようだ。それにしてもなぜ宝くじが散らばったのだろうか。ぶつかって落としたのか、驚いて落としたのか。どちらにしても話が終わるまで宝くじを放っていた事が不思議でならない。


 夕食もカレーだった。またカレーか、とはならない。好きなものなら何食でもいけるし、味が変わればさほど気にならない。家で出るような辛くないカレーであればそれはもう違う食べ物なのだ。問題なく平らげる。


 夕食時になぜかは覚えてないが震災の話になった。そういえば息子はまだまともな地震すら経験してないはずだ。その恐ろしさをわかっていないのだろうなと思い、You Tubeで当時の動画を探して見せるがあまり実感はなさそうだった。あの揺れや叫喚、重い空気と空虚感を経験したことがないなら致し方ない。


 阪神大震災でも東日本大震災でも「復興」という言葉をよく聞く。ある程度落ち着いてきた時期になると「復興した」ようにも捉えられてくる。何十年も経てば「復興した」ことにされるのだろう。私は震災の傷跡が見えなくなり、震災のことが他人事のようになり、口に出す人も少なくなってくることが「復興した」ことになるのかもしれないとふと思った。

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