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無為流転 ~どうということもない日々を綴る~  作者: 紫蘭
令和二年(二〇二〇年)九月
13/37

九月三日 授業参観

 今日は息子の授業参観の日。妻はこの日のために仕事を半休し体調を整えていた。学校側は「参観する授業の選択」「保護者は一名まで」というソーシャルディスタンスが設定されていたが、外で待つくらいならいいかなと思い付いていくことにした。


 この時、あわよくばという考えがあったことは否定しない。


 妻はしきりに「他人のふり」を強調していたが、他の保護者や教師を気にしてのことだろう。もちろん無理に中に入るつもりもないし、雰囲気さえ味わえれば外で待っていてもいいのだ。


 学校に近づくと車が何台か止まっており父親と思われる人物が塀の外から教室を眺めている。車道より一段下がった位置に校舎があるため窓側であれば車道から教室を眺めることができるようだった。それならばと私は妻と別れ塀の外から教室を眺めることにした。


 そういえば教室の場所を聞くのを忘れた。教室はどこかと探していると妻が廊下に現れた。こちらに向き、教室に指を向けている。どうやら息子のいる教室を教えているようだ。これが以心伝心というものか。そう思い息子のクラスを見るが息子はどこにいるかわからなかった。


 妻からのラインが来る。どうやら校庭側の座席らしい。姿を見るには潜入しなければならないと思い校門へ向かうと受付のようなものがある。チェックされるならば入れないのではと悩んでいると妻から再びラインが。校門では身分証を見ているだけとのことで校舎にはにはすんなり入れた。思いのほかザルだ。


 どうも父母で来ている人もいるらしい。とはいえ長する気もないので顔だけ見て出ようかと校舎に入った途端チャイムが鳴った。授業が終わったのだ。


 教室から駆け出してくる児童。


 焦る私。


 側をとおり過ぎるも振り返る我が子。


 目が合い手をふる私。


 手をふり笑顔になる我が子。


 再び走り出す我が子。


 一瞬の出来事であったが、学校で元気そうな姿を見るだけでも行った甲斐があったというものである。

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