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無為流転 ~どうということもない日々を綴る~  作者: 紫蘭
令和二年(二〇二〇年)八月
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八月二十二日 ピンク色

八月二十二日 土曜日 晴時々雷雨


 息子のお稽古事に付き合い近くの喫茶店で待ち時間をつぶしていた。店は駅の高架下の二階にあり、窓際の席に座れば駅の周囲を見渡すことができ、人や車の行き交う姿が見ることができる。時間をつぶすには丁度いいのである。


 一人でゆっくりと過ごそうと店の隅の一人席に腰を落としたが、思いのほか暑い。クーラーの恩恵が席まで届いてこない。こんなことなら腹が冷えるからとホットコーヒーなんて頼むのでは無かったと後悔したが後の祭りだ。席をかわろうかとも思ったが適当な席もなかった。


 喫茶店で本を読むつもりでいたが暑さで頭がボーっとするのでぼんやりと窓の外を眺めていた。ふと視界の中に女性がスクーターから降りる瞬間が見えた。ただそれだけなのになぜかそこにとてつもない違和感を覚えた。


 この違和感の正体はなんだろうか。金髪に日焼けした小麦色の肌はこの時期ならよく見かける。ピンク色のタンクトップにデニム地のホットパンツという組み合わせもさほど珍しいものではないはずだ。スクーターの色はピンク色だが気にするほどでもないだろう。


 そこにいたのはただのピンク好きな日焼けしたギャル。ただピンク色なだけなのだ。だがこのあたりでは派手すぎる。とにかく異物にみえてしまったのだろうか。これが三宮や大阪の繁華街だったらそこまで気にならないし、いっそ風景に溶け込んでしまうだろう。しかし、このあたりは下町とはいえ住宅街。だからこその違和感なのだろう。


 合点がいった私は、ちょうど妻から来たラインに返事をしたり、SNSを眺めたりしていたが、ふと外に目をやるとピンク色のスクーターに跨った金髪小麦肌の彼女がさっそうと走り去っていくところが見えた。少し嬉しい気分になった。


 席の周囲はいまだ暑く、かいた汗を拭いながら過ごしていたが、ホットコーヒーは冷めて飲み頃になっていた。おかげで少し暑さも和らいだ。もうすぐ息子を迎えに行く妻と合流する予定だ。外はもっと暑いのかと思うともう少し店にいたい。

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