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黒き賢者の血脈  作者: うずめ
第四章 戦乱の大陸
72/129

少数派として

【作中の表記につきまして】


アラビア数字と漢数字の表記揺れについて……今後は可能な限りアラビア数字による表記を優先します。但し四字熟語等に含まれる漢数字表記についてはその限りではありません。


士官学校のパートでは、主人公の表記を変名「マルクス・ヘンリッシュ」で統一します。


物語の内容を把握しやすくお読み頂けますように以下の単位を現代日本社会で採用されているものに準拠させて頂きました。

・距離や長さの表現はメートル法

・重量はキログラム(メートル)法


また、時間の長さも現実世界のものとしております。

・60秒=1分 60分=1時間 24時間=1日 


但し、作中の舞台となる惑星の公転は1年=360日という設定にさせて頂いておりますので、作中世界の暦は以下のようになります。

・6日=1旬 5旬=1ヶ月 12カ月=1年

・4年に1回、閏年として12月31日を導入


作中世界で出回っている貨幣は三種類で

・主要通貨は銀貨

・補助貨幣として金貨と銅貨が存在

・銅貨1000枚=銀貨10枚=金貨1枚


平均的な物価の指標としては

・一般的な労働者階級の日収が銀貨2枚程度。年収換算で金貨60枚前後。

・平均的な外食での一人前の価格が銅貨20枚。屋台の売り物が銅貨10枚前後。


以上となります。また追加の設定が入ったら適宜追加させて頂きますので宜しくお願いします。

 1年1組の午後の授業は「槍術」による戦技実習授業であった。

特盛の軍隊飯を無理やり胃袋に詰め込んだ1組の生徒達は大急ぎで教室に戻り、更に自分の演習着を持って東校舎に併設されている更衣室へと走る。

勿論、移動には教室前の廊下西端の扉を使うので、移動そのものは殊の外無駄が無いルートを使う事が可能だ。


無理矢理食べ物を胃袋に詰め込んだ直後に大急ぎで着替えを伴う数百メートルの移動をこなした生徒達は四時限目の開始10分前くらいに授業が行われる剣技台に辿り着く事が出来て、台の上にヘタリ込んでいる者も居る。


 一回生の生徒達がこの士官学校に入学してそろそろ2ヵ月が経過するのだが、毎日供される特盛の軍隊飯とこの教室移動……実技演習授業を行う場所への移動にはまだ慣れる事は出来ないようだ。


しかし、このような過密な移動スケジュールに悲鳴を上げる新入生の中にあって、ただ1人……言うまでも無く1組の首席生徒だけは常に涼しい顔で誰よりも先に到着し、戦技で使われる木製武器を持って自分の整列位置に無表情で立っている。


後から漸く追い付いて来た級友達は、僅かな時間で息を整えてから……観覧席部分の真下に設けられた倉庫から木製の模造武器を取り出して、彼の立ち位置を基準に自分の場所へと並ぶのが最近のパターンになっていた。


 やがてどこからとも無く午後の授業開始5分前の予鈴となる手鐘の音が聞こえて来ると共に、外部と剣技台を繋ぐ東側の通路に姿を現わした槍術戦技担当のエル・ホルプ教官が、生徒達と同様に通路の側面に設けられた扉から倉庫に入り、木製の槍を取り出して剣技台へと上がって来た。


教官の中には、自分で使う模造武器に拘りを持っている者も居て、自分専用の物を授業がある度に持ち歩いている事もあるが、ホルプ教官はそのような拘りは無いようで、生徒が使う物と同じ木製槍を倉庫から出して使っていた。


「気を付けっ!教官に敬礼っ!」


木製槍を左手に持って台床に立てた姿勢で右手による挙手礼を生徒達は行い、ホルプ教官も応礼する。


「直れっ!」


 リイナによる号令が終わると、ホルプ教官は


「楽にしていいぞ。1組はどうやら今回の考査で素晴らしい成績を上げたそうだな。私の受け持ちである槍技は今回の科目に含まれていなかったが、次に当たった時は同じように頑張って欲しい」


と、爽やかな笑顔で1組生徒の考査に対する健闘を讃えた。彼は士官学校教官の中では最年少の24歳で、実家は勲爵士……父は現役の少将閣下で王都方面軍に所属している。


 これまで槍技の白兵戦技授業は入学以来9回実施されてきたが、この授業でマルクスは一度も「多対一」形式の「昔の白兵戦技授業」の模範を見せていない。

勿論彼は担当教官がそうと頼まない限り、自ら出しゃばるような形でそのような事は行わないので、つまりはこのホルプ教官がマルクスに対して「君の言う本来の白兵戦技を見せてくれ」という要請をしていないという事になる。


本日の授業もこれまでの槍術の授業と変わる事無く、ホルプ教官が手本を示す模範を見て生徒一同で基本動作を繰り返し練習するという内容だ。


 ヨーグ教官が当初行っていた剣技の授業では、剣術経験者4名を補助教員として班分けのような形で実施する形を採っていたが、このホルプ教官の槍技においてはそのような形式を採ることはせずに、槍術経験者の2名も他の生徒に混じって基本動作の練習をさせられていた。


ホルプ教官自身の槍術の腕前は、経験者の級友に言わせれば「達人の域」なのだそうで、やはりこの若さで士官学校での白兵戦技教官に抜擢を受けていると言う事は、それだけの腕前なのだろう。


 マルクスはこの授業においては、特に目立った行動を採るわけでも無く、教室の座席配置と同じ並びになって剣技台一杯に広がった隊列の中で教官の指示に併せて基本動作を繰り返している。


この首席生徒が恐るべき「白兵技術」を持っている事をホルプ教官も、職員室で耳にしているはずなのだが、敢えて……と言わんばかりに彼を無視して基本教練を続けているように見える。そしてマルクスも前述のように教官側から要請を受けない限り、自らの「技術」を披露するような事は一切無い。


 ホルプ教官からしてみれば、この一回生の槍術授業において、真面目に基本動作を履修した上で、二回生に進級してから……この槍術を「選択武器」としてくれれば嬉しいのだが、そうでは無く剣技や弓技を選ばれても仕方が無いと思っている。


あくまでも武器の選択はその生徒個人の判断に任されているからだ。


但し進路として選択した学科によっては、特定の武器選択が「必修」となっている場合があり、例えば槍技は陸軍騎兵科で必修……つまり騎兵科に進みたいのであれば槍技は必ず選択して、一定の水準まで習得する必要がある。


 陸軍騎兵科は陸軍科の中では最も人気の高い専科で、そのせいか槍技を選択する生徒も意外に多い。

二回生進級後に槍技を選択して修練を重ねていても、その技量が一定の水準に達していない場合は、三回生進級時に「席次優先」で騎兵科を希望していても、それが通らない場合がある。


そうなると選択肢としては歩兵科に進むか、軍務科……という事になる。軍務科は一見すると人気の高い専科に思われがちだが、授業科目が実務系座学中心となる分……席次考査の科目内容が厳しくなる。

つまりそれなりに座学の科目で良い成績を残せる自信が無いと、逆に「落第」のリスクが高くなるのだ。


そういう意味で、騎兵科に入れなかった者達の大半は次の希望で歩兵科に集まる事が多い。よく……軍務科を卒業すれば「出世コース」に乗りやすいと誤解する者が多いのだが、ギリギリの成績で辛うじて軍務科を卒業出来た程度のレベルでは、任官後の出世競争には到底勝ち残れず、40代後半になっても尉官のままで芽が出ずに終わるという未来も十分にあり得るのである。


過去に金時計を授与された首席卒業生の中には意外にも軍務科出身者が少ない。

ちなみに、現在の軍務省本省で次長職以上の「上級幹部」と呼ばれている高級軍務官僚の中で、士官学校卒業時に金時計を授与された者は皆無である。


この「現象」における原因は「退役軍人会」などで一応は考察されており、例えば教育部長のデヴォン少将が典型であるが、軍務科に進んだ者はどうしても軍人の本分たる「白兵戦技」の成績で他の専科の者に後れを取るからであると見られている。


一回生の席次考査では、評価の比重が軽い白兵戦技科目も、二回生以降……更には三回生ともなると卒業席次にそれなりに影響するのである。


 剣技担当のヨーグ教官や補助戦技……格闘及び短剣技担当のヤード教官は、マルクスの実力やタレンの提唱する戦技授業改革に共鳴しており、自身の授業でマルクスを模範とした「多対一」の基礎練習を取り入れているのだが、このホルプ教官や上級生を担当する教官の中には、敢えてその流れを無視している者も多い。


彼らの中には自らの授業が無い時間帯に上記のマルクスが模範を実施していた授業の見学に訪れて、その内容に感銘を受けている者も居るのだが、それを取り入れる事で「自分の立場が失われる」事を危惧している連中もまだまだ多いのだ。


 暫く基本動作の鍛錬を繰り返した後、対面……1対1で向かい合って撃ち込みと回避の動きをお互い交代で実施する形式の練習が始まったところで、北側の観覧席に人影が現われた。


1年1組の戦技授業に見学者が現われるのはここ最近よくある事なのだが、この槍技の授業では前述したようにひたすら基本動作の練習が続いていたので、見学者は殆ど現われなくなっていた。


 最初に「その」見学者に気付いたのは、未だに持ち慣れない木製槍で「突き」の動作を繰り返していたアン・ポーラであった。

彼女は教室の座席並びで自分の後ろとなるハリマ・オイゲルという男子生徒を相手に槍による突き入れを行おうとして、ハリマの頭越しに「その姿」を見て思わず息を飲み、動きを止めてしまった。


「おい。どうした?」


ハリマが声を掛けると、アンは「う、うん……」と再び槍を突き出す動作を始めたが、隣で集中した顔付きでニルダ・マオからの突きを払うという回避動作を繰り返していたテルナ・ゴーシュに


「て、テルナっ!テルナったらっ!ちょっとっ!」


「何っ?今話しかけられたら危ないよっ。はっ!……よっ!」


「ほらっ!向こう側の観覧の椅子にっ!校長閣下がっ!」


「えっ!?……痛っ!」


思わず観覧席に目をやってしまったテルナはニルダからの突きを左手の甲に受けてしまい、小さく悲鳴を上げた。


「ちょっ、ごめん!大丈夫?」


ニルダがテルナに詫びを入れたのだが、テルナが手の甲を摩りながらも自分の後方に視線を釘付けにしているので思わず振り向いてしまい


「えっ!?」


と、いつも通りに大声を上げてしまった。それを切っ掛けにして他の生徒達も次々とニルダの視線を追って学校長の姿を認めてしまい、動きを止め始めた。


生徒達の様子を見ていたホルプ教官も視線を観客席に移して「うっ!?」と思わず声を漏らす程仰天し、彼は思わず観客席に向かって挙手礼を実施したので、それを見た生徒達も慌てたように彼に続いて敬礼を実施する。


 ただ一人……そんな観客席の様子など眼中に無いかのような様子を見せた生徒……大声を出したニルダの隣で、セイン・マグビットという生徒の突きを軽々と左右に受け流していた首席生徒だけが


「おい。どうした。続けろ」


と、教室では自分の前の席に座っている男子生徒に突き入れを続けるように要求した。しかし敬礼を続けているセインは


「でっ、でも……ヘンリッシュ君っ!こっ、校長閣下がいらして……」


「例え校長閣下であっても見学者だ。俺達は授業を受けている身だぞ。構わず続けるべきだ」


学校長が座っている観覧席……北側の観覧席はマルクスの背後にあるのだが、彼は一度もそちらに目を向ける事無くセインの突きを待っている。


「で、でもっ……ほらっ、教官殿も敬礼を……」


セインはホルプ教官の姿を指差すが、マルクスは構わず


「いい加減にしろ。今は授業中だぞ。しかもこうして模造武器と言えども、得物を手にして相手と向き合って練習中ではないか。怪我をしたらどうするんだ?」


 周囲へ聞こえよがしの声量で練習相手に注意する首席生徒の言葉が聞こえたのか


「練習を続けなさい。教官も、敬礼は必要無いので続けさせなさい。彼の言う通り、得物を持った状態で急に中断するのは危険だ」


校長は剣技台全体に良く通るような声で教官と生徒達に授業継続を命じた。ホルプ教官は我に返り


「校長閣下もあのように仰られている。練習を続けろっ!」


と、鋭く練習再開を命じた。これを聞いて敬礼の姿勢で固まっていた生徒達も徐々に狼狽しながら突き入れと受け流しの練習を再開し始めた。


 ホルプ教官は混乱していた。


(何故だ……?何故校長がこの私の授業を観に来ている……?まさかあの……ヘンリッシュを観に来たのか?だとすると……このように従来通りの授業を続けるのは拙くないか?)


ホルプ教官自身は昨年度に若干23歳で士官学校戦技教官に抜擢された俊英と呼ばれる若者で、王都出身の彼は幼少時から通い続けている槍術道場において、弟子の中では次席を占める「高弟」と呼ばれる人物だ。


士官学校在籍中も、卒業後に任官してからも……折りを見ては道場に通い続け、一時は軍勤務の(かたわ)ら……師範代も勤めていた。槍術経験者の生徒に「達人」と呼ばれるのも当然である。

しかし、士官学校教官として抜擢を受けてからは道場の師範代としての勤めは止めていた。


士官学校の生徒に槍術の基本を丁寧に教えながら、自身の通う道場で経験者である者達に激しい稽古を付ける事が、若い自分には難しいと判断したからである。

それ程までに槍術に対して高い意識を持っている彼は最近、校内で囁かれるようになった「本来の戦技授業」というものを認めたくはなかった。


 実は一度だけヨーグ教官が受け持つ1年1組の授業を見学した事があった。そして「噂の首席生徒」の動きを実際にその目で観た。


……彼は複数の生徒相手にその「動き」を見せていたのだが、「武術の達人」としてホルプ教官の感想は


(とてもじゃないが人間の動きには見えない)


と言うものであった。自分があの複数の生徒の中に混じって一緒に彼に撃ち掛かった時、果たして自分はあの首席生徒に自らの槍を当てる事が出来るのか……。


(どう考えても無理だ……)


これがその時感じた彼の「恐怖」である。もし自分の授業で同じような事を行ったら、間違いなく自分はあの生徒によって屈辱を味わう。

そのような「恐怖」が、頑なに「本来の戦技授業形式」の実施を拒ませた。


これまでの人生においてひたすら打ち込んで来た自らの「槍術」があの首席生徒……引いては「本来の戦技授業」では全く通用しないという事を「達人」であるが故に彼は悟ってしまったのである。


 しかし本日……まさか自分の授業にあの「校長閣下」が見学に来ている。これまで……あの海軍出身の剛毅な性格と評判の老提督が授業の観覧に訪れたという話を聞いた事が無い。例えそれが実技授業では無く、教室で行われる座学であってもだ。


そうなると……かの校長閣下の目的は一つ……「あの首席生徒の腕前を観に来た」としか思えない。

そんな状況であるのに……自分はこのまま頑なに「従来の授業」を続けていてもいいのか。若いホルプ教官には判断のしどころが非常に難しかった。


 あの首席生徒は……何を考えているのか判らないのだが、これまで自分の授業では従順な態度で槍術の基本練習をこなしている。その表情を見ても常に真剣そのものだ。

通常であれば、このような基本練習を授業枠である2時間も続けていれば、経験者の生徒であっても多少は集中力を途切れさせて動きは鈍る。


現に偶然ではあるが教室の座席順の関係で彼の相手となっているセイン・マグビットは7年の槍術経験を持ち、彼が見ても「手練れ」と言える生徒であるが、今もヘンリッシュに対する突き入れの「切っ先」に鈍りが出ている。


恐らく校長の視線が彼の「相方」に向かっているせいか、緊張して「力み」が出ているのだろう。その「力み」が集中力を消耗させるのである。


それに対するマルクスの「払い回避」は見事なまでに安定しており、セインの突きを全て軽々と受け流している。回避側の動きが滑らかなので、マルクスとセインの組だけが合計10組の中で際立って見事な動きに見えた。


「よ、よしっ!攻守交替っ!」


ホルプ教官が笛を吹きながら大声で命じると、生徒達は突き込みと回避の役割を交換して再び練習が続く。


マルクスの突き込みは実に見事なもので、本人に言わせると「槍術の経験は皆無です」との事だが、鋭い突き込みは経験者であるセインが時折回避が遅れる程の冴えを見せている。そして、恐らくはその姿を観覧席の学校長がじっと見守っているのである。


 結局エイチ校長は単身、観覧席で30分程……マルクスの動きだけを観ていたようで、そのうち立ち上がって出口へと姿を消した。

彼が去った後の剣技台に居た者達は明らかに緊張が解けたようで、間延びしたような動きになってしまったので、これ以上続けると怪我人が出る可能性があると判断したホルプ教官によって10分間の休憩が言い渡された。


「まさか校長閣下がいらっしゃるとはね……」


木製槍を突き立てた状態で支えたまま座り込んだニルダが疲れたように言葉を吐き出すと


「そうね……私、校長閣下を見たのは入学式以来だったわ……」


アンが応じる。寮生であるアンは一般の通学生徒達よりも長い時間、構内に居るはずだが、それでも校長の姿は入学式以来全く見た事が無かったと言う。


 槍術の経験者らしく、座り込まずに立ったまま休憩に入っていたセインは


「ヘンリッシュ君、さっきはごめん。練習を中断してしまった」


と、同じく立ったまま木製槍を突き立てた姿勢で微動だにしない首席生徒に謝罪した。


「うむ。気を付けろ。木製とは言え、まともに当たれば怪我をする。場合によっては骨折もあるからな」


マルクスは特に感情を表す事無く槍術経験者に淡々と答えた。そんな首席生徒を隣で見上げながらニルダは疑問をぶつけてみた。


「ヘンリッシュ君は校長閣下が気にならなかったのですか?」


「ならないな」


「え?でも今まで校長閣下が授業の見学なんて来た事が無かったよ?」


「俺は士官学校生徒だ。授業を誠実に受ける義務がある。『校長閣下の見学』と言うのが予め授業観覧として公式に通達されたものであれば、それなりに挨拶も必要だろうが、そうでなければ所詮は『非公式な観覧』であって、俺がそれに対応しなければならないという義務は発生しない」


 淡々と説明する首席生徒に対して周囲で休憩していた者達は唖然としながら見ている。確かに彼の言っている事は間違っておらず、例え校長と言えども非公式な授業の観覧でいちいちそれを中断させる権限は持っていない。


つまり何の先触れも無く、しかも単身で観覧に来たと言う事は「非公式」であり、それは他の見学に訪れた教官達と変わらないと解釈すべきだろうと言うのがこの首席生徒の見解である。


「な……なるほど」


 ニルダは全く感情を伴わずに淡々と説明する首席生徒の言い分に対して妙に納得してしまった。このクラスで一番の「怖いもの知らず」の女子生徒はある意味で一番マルクスを至近距離で観察している人物でもあり、彼の気性を級友の誰よりも「何となく」だが理解している人物でもあった。


(この人はやっぱり……教官だろうが校長が相手だろうが規律を優先する人なんだ……)


****


 休憩からの授業再開後は目立った事件も無く、そのまま授業は終了したが、本日の午後の実技授業は担任が担当していたわけではないので、1組の生徒は一旦制服に着替えた上で1組の教室に戻り、「終礼」を実施しなければならない。


級友一同は木製槍を片付けながら剣技台と観客席の清掃も分担して行った後に更衣室のある東校舎へと向かう。このように実技授業後に直接下校とならない日はこの時点で既に15時20分、終礼まで終わらせると15時40分頃……終礼で重要な連絡事項等の伝達があった場合などは16時を過ぎる事すらある。


 先述した剣術を始めとする武術を生徒同士で自主的に集まって鍛錬する「クラブ活動」は、主にこの放課後を活動時間とし、構内における施設使用は5点鐘……つまり夜の鐘が鳴る18時まで認められている。


新入生の中には最初の席次考査を終えた時点で、自身の弱点科目が判明する為……次回以降にそれを補いたい一心で「勉強会」と称する一種のクラブ活動を開始、或いはそれを探し始める者が出て来る。


例年であれば、そのような動きは生徒個人において始まり、次第に周囲の「同志」を集めながら形成されるのだが、今回の考査終了後からは活動を新たにした自治会が、その「同志の仲介」を始めたらしく、本校舎3階に活動拠点を残す事を許された「自治会室」で、それらの相談を受ける事にしたようだ。


 学校側もそういった自治会の新たな活動を公認する事にしたようで、前考査の試験結果が大きく貼り出されていた本校舎2階の総合職員室の廊下側の壁面に


「各科目勉強会の結成やご紹介を希望の方は3階自治会室まで!」


という貼り紙が結果発表の大きな掲示物の横に小さく掲示されていた。結果発表が貼り出された日には、生徒個人へ「採点結果」の紙片が個別に配布される。


 考査当日の問題用紙は試験終了時に答案用紙と一緒に回収されて、その答案用紙の返還すら無いこの士官学校においては、その紙片が唯一の「自分の結果詳細を知る資料」となるのだが、それを見て自分の苦手科目……それも極端に自身の席次に対して足を引っ張っているような科目を自覚した者は次々と本校舎3階の自治会室を訪れるようになった。


その様子は嘗て難民キャンプのど真ん中に建てられた役場の1階に設置された「就職相談所」に第一世代の難民が殺到したような光景を彷彿とさせる。


部屋を訪れると、この考査対象期間で……4旬にも渡って憲兵本部に拘留されていたにもかかわらず、今期も学年首席の座を守ったフォウラ・ネル会長が、以前までとは打って変わった優しい笑顔でニコニコしながら、訪れる者の相談に乗っている。


どうやら弟のダンドーも考査では再試験になること無くむしろ席次を上げたらしく、彼なりに何かを掴んだのかもしれない。


 1年1組の終礼が終わり、下校時間になるとリイナは自治会室を訪れた。本来であればあの日……入学式の翌日の終礼が終わった直後にネル姉弟が教室に「侵入」して来た際に彼女は自治会の会員に勧誘されるはずであった。


しかしあの場においてダンドー・ネルが教室の引き戸に手を挟まれるという「事故」が発生し、そのような話は全て流れてしまった。

あの日以来、関わらないようにしていた自治会室に、彼女は自らの足を向ける。目的は苦手にしている「数学」を克服する為だ。


先日の席次考査では3位に上がるという結果になったが、あれは明らかに同級生の首席生徒から与えられた「ノート」によるもので、あれが無ければもしかすると席次順を落としていた可能性すらある。


一昨日にその結果を見た時は思わず舞い上がってしまったが、翌日の休日に改めて自省してみると、これは自分の力では無いという事に気付き、あの「ノート」が無かった場合の事を考えて背筋が寒くなった。


「彼」の力を借りるのは今回だけ。次回からは自分の力で試験範囲を見抜き、その対策を立てないといけない。そして自分が苦手としている数学が次回も考査実施科目に選ばれるかもしれない。


そうなった時に、今度は自分の力でそれを乗り越える為に、彼女は授業時間以外に効率的な学習が出来る手段として、「勉強会」という存在を知った。

更に試験結果の掲示の横に小さな紙片で、「勉強会について自治会で相談に乗る」というような記載を見た。


 そして彼女は今……その自治会室に向かう為に階段を上っている。時刻は15時50分。最後の授業が白兵戦技であった為、彼女の1組は一回生で一番遅い下校となっていたが、本校舎3階の昇降階段の西隣にある自治会室には多くの「苦手科目を持つ」生徒達が学年に因らず詰め掛けている。


(こんなに人が来ているの……)


リイナが自治会室と、生徒達が溢れている廊下の様子を見てみると、相談の為に並んでいると思われる生徒達の列とは別に、何人かの「自治会」と書かれた腕章をしている自治会員と思われる生徒が別の生徒集団をどうやら……学年別に分けたりしている様子が窺える。


 彼女はとりあえず最後尾で自治会員が案内をしている「相談者」の列に並んだ。15人程度が並んでいたように思えた列は意外にも早く消化されて行く。部屋の中には机が3つ並んでおり、色々と話を聞いて貰った後に先程の学年別に分けられている集団の方を案内されて、相談を終えている。


この自治会が実施している相談所は、あくまでも「勉強会」の結成を仲介するだけであって、苦手科目の克服法や効率の良い勉強法をアドバイスするような場所では無いのだ。


20分程待っただろうか。リイナは3つ並んでいる真ん中の机を案内され、椅子に座った。相談員は偶然にも自治会長のフォウラ・ネルであった。


「あら……。あなたは確か……1年1組の……」


「はい。リイナ・ロイツェルと申します」


 リイナの見たフォウラの印象が以前に教室で睨み付けられた時と随分と違うことにまず驚いた。あの時は教壇の上から見下ろされて怖くて仕方なかったのだが……今の彼女の表情は柔らかく、声も相手を気遣うような様子が見て取れる。


元々は長い黒髪の似合う長身の美人として校内の男子生徒から「高嶺の花」と見られていた彼女は、すっかり「綺麗なお姉さん」という雰囲気を醸し出している。


「ロイツェルさんは……あら。この成績でいらっしゃるなら……」


「いえ……あの……。私の今回の成績は自分の力で得られたものでは無くて……」


「そうなのですか?」


「はい……その……会長もご存知の『彼』が級友の私達にノートを回してくれまして……」


「彼……あぁ!ヘンリッシュ君ね?そう……彼がノートを?」


「はい。そのノートに私の苦手な数学についての試験範囲や出題傾向が細かく書かれてたのです。そのおかげで私は今回の試験では数学で点数を落とす事無く乗り切れたのだと思うのです」


「そうなの……あのヘンリッシュ君が……」


「しかし次回からは自分で頑張りたいのです。その為には苦手な数学を克服しなければと思いまして、相談にお伺いしたのです」


「ロイツェルさんは、任官を希望されているのかしら?」


「はい。出来ることなら会長のように軍務科に進んで、本省に入れればと……」


「ならば数学を苦手なままにするのは宜しくありませんね。分かりました。イントちゃん!」


リイナからの相談を聞き取ったフォウラは、部屋の反対側で相談後の生徒を整理していた副会長に


「一回生の数学希望の人ってどれくらい集まっていますか?」


副会長は手元の紙を見て


「一回生の数学……まだ2人ですね。そこの2人……彼女達が数学の仲間を探してますね」


出口の脇に立つ2人の女性徒が立っている辺りを指差した。


「ロイツェルさん。彼女達があなたのお仲間ですね」


 リイナが振り向いて2人の女性徒に視線を移すと、彼女達はどうやらリイナを知っているらしく、軽く会釈をしてきた。それを見たリイナも小さく会釈を返す。


「彼女達も数学が苦手なのだそうです。一緒に取り組んでみてはいかがでしょう」


「はい。ありがとうございました。頑張ってみます」


リイナは立ち上がって頭を下げた。


「頑張って下さい。軍務科って、ちょっと難しい所かもしれませんけど、ロイツェルさんならきっと上手く行きますわ」


フォウラは優しく微笑んだ。


「失礼します」と改めて挨拶をしたリイナは部屋の出口の脇に所在無げに立っていた2人の女性徒の所に行き


「1組のリイナ・ロイツェルです。数学を一緒に取り組んで頂けるとか。宜しくお願いします」


頭を下げると、2人は驚いたように慌てて頭を下げながら


「あ、あの……4組のエバ・ハルツです」

「4組のミリダ・メリルです」


と、名乗ってきた。


「お二人とも4組なのですね」


「はい……ロイツェルさんは……確か席次章の方ですよね……」


 リイナは最近、上位席次章を外している。勿論マルクスの影響だ。そういえば先程相談に乗ってくれた自治会長も首席章を着けていなかったなと彼女は思い起こした。


本来であれば学年首席の生徒が首席章を着けていないというのは学校としては前代未聞の事なのだろうが、リイナ自身は自分の事は別として首席であるマルクスが当初から首席章を外して……それどころか彼はそれをゴミ箱に捨てているのを見ているので、そのような異常事態に対してちょっとした「免疫」のようなものが出来ていた。


「確かにたまたま前回の成績は良かったのですが……相変わらず数学が不安なのです。なので一緒に勉強に取り組んで頂けるのならば嬉しいです」


彼女は同年齢であるにも関わらず緊張の様子を見せている2人の4組女子生徒に笑顔を見せると、少しは安心したのか……2人も笑顔になり


「こちらこそ……宜しくお願いします」


エバがピョコっと頭を下げると、それにならってミリダも頭を下げる。その後、相談者の列から新たに一回生の数学補強を希望する者が現れなかったので3人はそのまま「一回生数学勉強会」としてそれを管理していたイント・ティアロン自治会副会長に申告し、明日以降に新しい仲間が現われたら案内して貰うように依頼をして自治会室を出た。


 3人で相談した結果、一回生数学勉強会は放課後に開放されている第一食堂で活動する事を決めた。一応は毎日出来る限り18時の放課後開放時間一杯まで授業内容の復習をしてみようと言う事を決めた。


エバもミリダも現役合格で入学しており、エバは入学考査で49位、前回の考査で53位に、ミリダは入学考査64位から66位に席次を下げていた。

2人共やはり席次を落とした原因は苦手な数学だったらしく、特にミリダは未及第点ギリギリだったそうだ。


実はミリダ・メリルは入寮生で、1組のアン・ポーラと同室であった。ミリダから見たアンも成績では「雲の上の優等生」であるが、リイナは更にその上を行く席次3位という「上位席次章組」であるので、本来であれば接点を持ちにくい相手なのだが、こういった自治会の仲介によって「苦手な科目へ共に取り組む」という機会を得る事が出来、2人の4組生徒にとっては「自治会に相談しに来て本当に良かった」と思ったようである。


 3人が早速、第一食堂に向かおうと昇降階段を降りると、1階から上がって来た一回生首席生徒と2階でバッタリとはち合わせた。


「あら?あなたも自治会室に?」


出会い頭に驚いたリイナがマルクスに尋ねる。彼女の後ろから降りて来たエバとミリダは突然……噂の首席生徒と出くわした上にリイナが彼に話掛けたので驚いて立ち止まって硬直してしまった。


「ん?自治会室……?」


 マルクスは考査の結果を総合職員室前まで観に行っていない。なので今日から自治会室で勉強会仲介相談を始めている事を知らないので、なぜリイナが自分に自治会室に向かっていると思われているのか理解出来ず、首を傾げながら


「あぁ……確か自治会室はこの上の階にあるんだったな。お前は自治会室に行ってたのか?」


「あなたは違うの?」


「いや、俺は職員室に用があってな」


「あらそうなの……そうよね。あなたには勉強会なんて必要無いわよね」


「ん……?勉強会?」


「私は、彼女達と数学を重点に取り組む事になったの」


そう言うとリイナは階段で硬直したままになっている2人の女性徒を紹介した。2人はまさかこの首席生徒に紹介されるとは思っても居なかったので軽くパニックになり


「あっ、そ、その、わっ、私は……その……」


エバが慌てふためく。そこそこ身長の高いミリダもエバの後ろに身を隠そうとしたが、階段なので上の段で大柄の彼女の姿は余計に目立つ事になった。


「何かよく解らんが……そうか。苦手科目を克服すると言う考えは素晴らしいと思うぞ。頑張ってくれ。ではな……」


そう言うと、この首席生徒としては珍しく軽く右手を挙げながら職員室の方へ歩き去って行った。相変わらずゆったりとした優雅な歩様だが、その実驚く程の速度で遠ざかって行く。


 リイナは苦笑しながらそれを見送ると、食堂に向かう為に1階に降りようと階段に足を掛けたが、他の2人はまだ呆然としている。


「ハルツさんと……メリルさんでしたっけ。どうしました?」


まだ2階に降り立つ手前の階段から動こうとせずに首席生徒の去った方向に目を移したまま硬直している2人へリイナは不安になって声を掛けた。

その声を聞いて我に返ったエバは慌てて階段を踏み外しそうになりながら2階の踊り場に降り立って


「ま、まさかその……あの首席の人をこんなに近くで見れるとは思わなくて……」


「わ、私も……」


ミリダもまだ少し呆然としながらゆっくり降りて来た。


「あぁ……そうですか……。彼はああ見えて、愛想は悪く無いと思いますよ」


リイナは尚も苦笑しながら「行きましょう」と声を掛けて下に降りて行った。エバとミリダもそれに続き、エバは心中で


(近くで見ると、もっとカッコ良かった……)


と、ドキドキしながら浮かれ過ぎて階段を踏み外さないように注意するのであった。


****


「こっちだ。7番に入ろう」


 タレンは職員室を訪ねて来たマルクスを連れて、7番面談室に入った。中に入ると手前側の椅子をいつも通り勧めたが、自分は机の向う側の椅子に座らず、一旦北側の廊下に出て行き、暫くするとそれと同じ造りをした椅子をもう一脚持って来た。どうやら隣の面談室から持って来たようだ。


持って来た椅子を机の短辺側に置いて自分も腰を下ろしたタレンは


「ちょっと待っていてくれ。何しろ一緒に来ると目立ってしまうのでな。必ずこういう時は10分程度、間を置く事に決めているんだ」


そのように説明すると、マルクスは


「そうですか……」


と、苦笑を浮かべたきり無言で勧められた椅子に腰を下ろして背筋を伸ばした。


「ところで、君はやっぱり首席だったな。シーガ主任教官もかなり驚いていたぞ」


「そうですか。まぁ、その件にあまり興味はありませんが……」


「相変わらずだな。君には苦手な科目というのは無いのかい?私が学生の頃は考査の度に落ち着いて夜も眠れなくなっていたものだが……」


「そうでしたか。睡眠はしっかりと摂った方が考査の結果に良い影響を及ぼしそうですがね……」


「そりゃ、考査の前日も考査期間中もぐっすりと眠れればそれに越した事は無いさ」


タレンは笑いながら


「まぁ、そういうわけで凡庸な生徒であった私には君のような優等生の気持ちが解らんよ」


 そのような話をしていると、北側の教職員用廊下の扉が開いた。そして海軍提督が着る白い略衣を着た学校長が入って来た。

彼の来室を待っていた2人は立ち上がって挙手礼を行う。挙手を下ろしたタレンは本来の面談官の席を勧め、学校長の着席を待って2人も再び椅子に腰を下ろした。


「漸く君と話が出来るとはな。儂は先日、君と会話を交わしたはずなんだがその内容を憶えておらんのだ……。君が入学式を欠席する事だけは憶えていたのだが」


「過日は不躾な『お願い』をしてしまい誠に申し訳ございませんでした」


マルクスが頭を下げた。


「いや……まぁ、あの時は儂も疲れていたのかもしれんな。君とはどういう話をしてあの欠席届や入学書類……確か授業料も受け取っていたな……を渡されたのか憶えていなかったのだ。何か事情があったのだろう。済まなかったな」


エイチ校長は真顔で話す。まさか「暗示をかけたのです」と言うわけにもいかず、内心大笑いしながらマルクスも表情だけは多少の神妙さを出して


「とんでもございません。閣下が私如きの依頼をお受け頂き、それを履行頂けた事には感謝の言葉もございません」


 目の前で学校長と首席生徒が、どうやら入学式前夜の件を話しているようだが、主任教官としてはこの件には一切関わっていないので口を挟む事をせずに傍観していた。

やがてお互いにどうやら謝しているようなので、頃合いと思い


「校長閣下とヘンリッシュがこのように共通の話題を持つ仲だとは思いませんでしたが……」


と、苦笑しながら口を挟むと


「これは失礼致しました。まずお二方にお伝えしたいのですが……」


マルクスが多少何か言いにくそうな態度を見せたので


「どうした?」


タレンが尋ねると


「このような場所……特にここは職員室と近過ぎます。お二方はお気付きですか?今回の『会談』も、それを快く思わない方々に筒抜けとなっておりますな」


「何だと?その……『快く思わない方々』と言うのは?」


「まぁ、はっきりと申し上げにくいのですが……校長閣下の隣室で聞き耳を立てられている方と、その息が掛かっている職員室内にいらっしゃる方々ですな」


「なっ……つまり君は……教頭殿が今回の件を既に嗅ぎ付けていると?」


「ええ。私はまだ状況を把握出来ていないのですが……お二方はこの件について、どこまで手を進めていらっしゃるのですか?」


 目敏い指摘をしてくる首席生徒の物言いに学校長は驚いている。この目の前の若者は自分の記憶が間違っていなければ、まだ15歳……2ヵ月前にこの学校に入学したばかりだったはずだ。


「儂は今日の午前中に本省に赴いてな。教育部長に今回の改革について上申書を提出してきたところじゃ」


「教育部長……デヴォン少将閣下ですか。上申書を提出されただけでしょうか?やはり上申の骨子くらいはご説明されたのでしょうか?」


「君は、教育部長の事を知っておるのか?確かに……授業改革の件については多少説明したが」


「恐らくデヴォン部長はそれほど乗り気じゃなかったのでは?」


「ほぅ……なぜそれが判るのだ?確かに『あの男』の反応は戦技に対して理解の薄い軍官僚そのものだったが……」


「なるほど……お二方は教育部長殿の為人(ひととなり)をご存知ですか?」


「うん?その教育部長殿が何かあるのかい?」


タレンが不審な表情で尋ね返す。


「ご存知では無い?」


「そうじゃな……儂は『あの男』については左程深く知っているわけでは無いが……今日見た限りでは、典型的な軍官僚に見えたぞ?」


「左様ですか。まぁ、閣下が仰る通り……モンテ・デヴォン少将閣下という男は典型的な小役人根性の持ち主ではあるのですが……」


「おいおい。君は教育部長の事も把握しているのか?相変わらずどういう情報力なんだよ」


 タレンが苦笑する。この首席生徒の情報力は先日の「ネル家騒動」で思い知っている。タレン本人は知らず知らずの間に巻き込まれており、彼の情報が無ければ何かしらの危害を受けていた可能性もあった。


本人は(とぼ)けているので、その情報源(ソース)を明かすことは無いのだが、どうやら軍務省の情報機関すら凌駕する情報力を持っているのは確実だろう。


「その小役人には他にも何か問題があるのかね?」


校長閣下の問いに


「デヴォン部長殿には、校長閣下がご提出した戦技授業改革を安易に受け入れる事が出来ない事情があります」


「どう言う事かね?」


「現在の軍務省次官はどなたかご存知ですか?」


「次官……?確か……エルダイス大将だったかの」


「エルダイス次官殿の経歴については、どれだけの知識がおありですか?」


「何……?次官の経歴が何か関係あるのか?」


「ポール・エルダイス次官殿は教育部のご出身です。現職のデヴォン部長殿がまだ教育課の係長であった頃……つまり三代前の教育部長がエルダイス……当時は少将閣下でしたか」


「何だと!?」


「つまり……まぁ、職制上は現在もそうですが……エルダイス大将閣下が教育部長だった頃、二人は直接の上司と部下の関係だったのですよ。モンテ・デヴォン係長殿は軍務省への任官当初は、それ程出世も早く無く……特に教育課の主任になってから同職に8年、係長昇進後も課長昇進まで10年掛かってました。

この時点では『やや出世が遅い』と言った感じです。しかし課長から次長まで10年、次長から現職である部長には何と2年で昇進を果たしております」


「なっ……?つまり課長から部長まで12年で……?」


 タレンが驚く。彼もつい先月少佐に進級した身ではあるが、自身が得ていた名声や家柄に比べ、驚く程にその出世速度は遅い。これは大尉進級後に大隊長への昇進を固辞したのが原因であると本人は分析していた。


一度昇進を辞退してしまうと、出世街道からのリタイアと受け取られて、士官学校出身であるにも関わらず、兵卒からの「叩き上げ」士官と同様の人事扱いを受ける事になってしまう。


 彼は本来、士官学校卒業後の新任官の時期に少尉・小隊長として頭角を現したが、僅か三年後に「この破天荒な御曹司を前線で死なすのは拙い」と判断した当時の人事局によって士官学校教官に抜擢され、中尉に進級している。


この時点では「戦場で功を挙げた前線士官」として相応の出世速度……むしろ23歳での中尉進級と士官学校教官職は、2浪した上での陸軍騎兵科5位、総合23位という彼の士官学校卒業席次からすれば「公爵家の御曹司」らしい破格の処遇だったはずだ。


しかし教官職の任を全うする事無く、当時の第一師団長に呼び戻される形で僅か3年で北部方面軍への再異動となり、「教官職の任期終了の際に進級」という慣例から外れる事となった。


そして中尉・中隊長という身分のまま、30歳の時に大尉・大隊長への進級と昇進を打診されるのだが、進級だけは受けて前線指揮官である中隊長からの昇進を辞退したのである。これによって彼は出世街道から外れてしまったのだ。


 実は似たような経歴を辿っている者が……奇しくも同じ士官学校教官として「軍学隊礼」を担当しているオーレル・キンバリー中尉である。

キンバリー中尉自身は現在、男爵家の当主であり……3010年度の士官学校卒業時における席次も陸軍歩兵科1位、総合席次2位という抜群の成績を修めている。


しかし、当時は「准男爵家」の嫡男であった彼は任官の際に「近衛師団」からの誘いが掛かった。

近衛師団は王国軍最高司令官である国王陛下直属の部隊で、その士官は全て「世襲貴族階級(准男爵家以上)」の者で固められており、軍務省の支配からも外れた組織である。


キンバリー「次期准男爵」はそのまま近衛師団に任官となって「近衛隊少尉」となり、容姿が優れていた為……その後更に同師団の「花形」とも言える儀仗隊に異動となる。

儀仗隊は近衛師団の中でも更に特殊な部隊であり、王室の慶弔時における行進随行の他に、王城の中の宮殿警備も担当していると言う、ある意味で「エリート中のエリート部隊」である。


キンバリーはその後、准男爵家相続と同時に儀仗隊長に抜擢され、20年もの間……進級も昇進も固辞して「誇りある」儀仗隊長を務め続けた。

近衛師団の定年は50歳なので、彼はその任を解かれたのだが、王国軍全体の一般定年は60歳である為、階級が中尉のまま彼はその経験を買われて士官学校の隊礼教官に採用されたのだ。


それまで進級も昇進も拒否して来た今年で赴任4年目のキンバリー教官は、54歳にして他の若い教官達と同じく未だに「中尉」なのである。


しかしキンバリー中尉は、長年の儀仗隊長としての功績が賞されて、同職退任と同時に男爵へ叙任されている。

軍人としては出世を果たせなかった彼の人生だが、一代で自家の陞爵を果たすという大功績を残す事となったのだ。


このようなタレンやキンバリーのように「エリート士官候補生」を養成する王立士官学校卒業者であっても、軍務省の人事局から「昇進に対する意欲無し」と認定されてしまうと、その後は年齢と階級や職位のバランスが崩れて行くのが融通の利かない「軍官僚」による人事管理なのだ。


 しかしモンテ・デヴォンの昇進ペースは、そんなタレンにも「(いびつ)」に映った事だろう。

何しろ任官から課長昇進まで23年掛かっている時点では「やや能力が不足した」中途半端なキャリア官僚という印象なのだが……。


何と彼はそこから12年で次長職を経て部長にまで昇進を果たしていると言う。一体その12年間に何があったのか。タレンが驚くのも無理は無い。

勿論このような話は、軍務省内の出世の仕組みに詳しく無い海軍将官であるエイチ校長にさえ奇異に感じた。


「まぁ、そのカラクリの内容を明かしますと……デヴォン氏が念願叶って教育課長に昇進出来た際に、同じ年……3036年夏の除目で情報部次長から異動昇進して来たポール・エルダイス『少将』が教育部長に就任しました。

この時、エルダイス氏とデヴォン氏は直接の『上司と部下』の関係になったわけです」


「次官は教育部の生え抜きでは無かったと?」


「そういう事になります。部長職として全く違う部署である情報部から教育部への異動ですから、就任当初のエルダイス部長殿には部内に『味方』が居なかったのですが、同時期に課長昇進を果たしていたデヴォン中佐殿は、そこに目を付けて他部署から来た新部長へ積極的に取り入ったわけです」


「ほぅ……なるほど」


「デヴォン氏と違ってエルダイス氏は……後に次官にまで出世するわけですが、元々は有能な人物なのです。官僚社会において全く違う畑である部署への異動が発生するケースというのは大きく2つに分かれます。

『懲罰』の為か……その逆に昇進速度が早過ぎて『上を追い越す』ような状況になる異動です」


「あぁ、そういう事か」


自らも艦隊を率いる司令官にまで出世したエイチ校長にはマルクスの説明が何となく理解出来た。


 「組織のポスト」というのは上に行けば行くほど「椅子が減る」のだが、この王国の官僚機構の場合、昇進は同一部署で順送りになるパターンが普通だ。


つまり……ある部署の部長職に居た者が、その上の局長なり副局長に昇進した場合、空いた部長職の椅子をその下の次長が埋める。そしてその下に居る複数の「課」の課長の中から後任の次長候補が選ばれるのだが、当然ながら1つの次長ポストを複数の課長が争う事になる。


複数居る課長も、その就任時期によって厳密には「先任」が居るのだが、この際に順送りとなる次長候補の他に能力が高かったり上層部の「覚えが目出度い」少壮の課長が別に存在していたりすると、順送りでは無く「追い越し人事」が発生する可能性が生じるのだ。


追い越し人事は、その後の部内摩擦の原因にもなりかねないので、ちょっと頭の切れる有能な人事担当者が居る場合は、先任士官への直接的な追い越しをさせずに


「別部署の空いたポストに放り込め」


という人事を実施する事があるのだ。エルダイス氏はまさにそれで、情報部の中で追い越し人事が発生しそうになったので、有能で将来が期待された彼を別の部署である教育部の部長へと異動昇進させたわけだ。


 しかし、今度は逆に「せっかく空いた教育部長」のポストに教育部次長を順送りさせず、別の部署からの異動によって埋めてしまった為に、順送りの昇格を見送られた当時の教育部次長と、エルダイス「新教育部長」の間に若干の「わだかまり」が生じた。


教育部生え抜きの教育部次長の不遇に同情した「部内の空気」に逆らう形でデヴォン課長は新部長に取り入った。

これによって教育部内に「味方」を得る事が出来たエルダイス教育部長は5年後、人事局の中にある他部署、特に人事部長を出し抜いて人事局副局長に昇進。更に人事局長の急死によって、今度は彼自身が順送りで人事局長に僅か5年で昇格を果たした。


人事局長として強力な人事裁量権を握ったエルダイス新局長は、教育部長時代に受けた「忠誠」を忘れずにデヴォン課長を教育部次長に引き上げた。

エルダイス人事局長の「幸運」は更に続く。彼が局長に就任した当時、既に前次官のフェアルダイ大将は63歳という高齢であった。


 一般的に局長以下の定年は60歳なのだが、それが次官に昇進した時点で65歳まで延長される。これは軍務卿も同様で、参謀総長や各方面軍司令官、各艦隊司令官以下の定年は60歳なのだが、軍務卿の定年は65歳なので次官と同様に軍務卿に親補されれば定年が5歳延長となるのだ。


3046年の4月にフェアルダイ次官が65歳の誕生日を迎え、定年退職となって空いた次官ポストには、その年の夏の除目で2年前に人事局長に昇格したばかりのエルダイス大将が最終的に他局の先任局長を「飛び越えて」抜擢となった。


本来ならば自らも同じ年の10月で定年を迎えるはずであったエルダイス人事局長はその直前の除目で次官に就任したおかげで定年が5年延びた形となった。


 そしてエルダイス「次官」は人事局長としての「最後の人事」によってデヴォン教育次長を僅か2年で教育部長に昇進させた。明らかな情実人事であるのだが、次官による人事命令には誰も異議を挟む事は出来ず、当時就任3年目のシエルグ卿もこのような人事の動きまでは把握していなかったようだ。


「なるほど。つまり今の次官以下、人事局の上層部は教育部の者達によって占められていると言ってもいいのかな?」


タレンもどうやら「仕組み」を理解したようだ。


「はい。そしてここからが重要ですが……お二方が提出された上申書に書かれた戦技授業の改革案は、長年今の『やり方』で続いて来た戦技授業の在り方について異議を唱える内容となっております」


「まぁ……そういう事になるじゃろうな。しかしそれが450年前よりも更に昔の授業内容なのだから致し方無かろうて」


「残念ですが、彼らはそんな昔の事など頭にありません。彼らにとっては自分の任期の中で定められていた『慣習』や『慣例』が塗り替えられてしまい、その結果が良い方向に転がった場合、今までそれを見逃して来た者達が批判を受ける。彼らはそれを最も恐れるのです」


「つまり君は、儂が午前中に提出してきた上申書は無視されると?」


「ええ。恐らくは。何しろ現在の授業内容に疑義を挟むという事は……取りも直さず現在の教育管轄部署の責任者であるデヴォン教育部長殿だけでは無く……その3代前のエルダイス『元』教育部長殿の施策に対しても批判の対象にするわけですからな」


「なっ……そ、そうか……。そういう事になるのか……」


「『大恩ある』エルダイス次官殿の経歴を損なう事に繋がる、今回の戦技授業改革を今の教育部長が受け入れるとは到底思えません。恐らくは無視されて、次官殿の耳にも入らないでしょうな」


「何と……そんな……そんな官僚共の過去の経歴に対する『面子(メンツ)』の為に……この改革は取り潰されてしまうと言うのかねっ!」


 マルクスの推測に基づく説明を耳にして、校長閣下が思わず声を荒げた。


「閣下。少々お声が大きいですな。職員室まで届きそうな音声(おんじょう)でした」


「すっ、済まん……。余りにも理不尽な話だった故な……」


「まぁ先程申し上げました通り、声の大きさは別にしても本日ここでこのように校長閣下が『誰か』と密談している事については教頭殿が既に把握していらっしゃるでしょうし」


「それだ!一体どう言う事なんだね?」


マルクスから「やんわり」と注意を受けたのにもかかわらず、校長閣下は再度声を高めてしまった。


「教育部長殿に上申書を提出されたのが午前中ですよね?ではそろそろ教育部長殿から教頭殿に『確認』が入っている頃でしょうな。『貴官も校長閣下の企みに加担しているのか』と」


「くっ!……やはりそうなるか」


エイチ校長はまたしても自分が大声を出しそうになった事に気付いて寸前でその声量を落とした。


「まぁ、これは恐らくお二方もお気付きでしょう。教頭殿も典型的な小役人タイプの軍務官僚です。彼のような『退任後の未来』に多少の色気を残しているような方には本省への施策批判に繋がるような今回の『戦技授業改革』は、決して好ましいものではないはずです」


この首席生徒の言い分は、先日来……エイチ校長とマーズ主任教官が危惧していたものであり、その事を既に考慮の内にしている目の前の若者に対して校長閣下は改めて感心した。


 この若者の頭脳は明らかに自分達のそれよりも冴え渡っているという感想を、自らも嘗ては金時計授受者であり、自身の知謀には多少の自信を持っていた老提督は認めざるを得なかった。


「更に奇遇な事ですが、ハイネル・アガサ教頭殿の前職は軍務省情報局情報部情報課長……軍事情報を精査する部署であり……何かお気付きになりませんか?」


「うん?つまり情報を取り扱っていた中心部署だろう?その伝手でもあって私や校長閣下の事も把握していると言いたいのかい?」


タレンの問いにマルクスは首を横に振り


「そうではありません。エルダイス次官殿がデヴォン教育部長殿と『上司と部下の関係』になる前の異動元は……情報局情報部次長」


「あっ……」


「つまりアガサ教頭殿も、その昔……エルダイス次官殿と『上司と部下』の間柄だった時期があるのですよ。ハイネル・アガサ『情報課第2分析係長』殿が情報課長に昇進する切っ掛けとなったのはエルダイス情報部次長殿が教育部へ異動された後の順送りですよ」


「そういう事……って……君はそんな事まで把握しているのか?」


 エイチ校長は今更ながらであるが、タレンと同じような疑問をこの首席生徒に対して抱くようになってきた。

何しろこの若者の脳内に収められている情報が質と量において自分を圧倒しているのだ。


「まぁ、私の事はともかく……。デヴォン教育部長殿からすれば、エルダイス次官殿の嘗ての部下であるアガサ教頭殿が嘗ての上司に対してそのような『裏切り行為』を行うのかという疑念が湧いているはずです。なので彼は必ずその『確認』を採るはずです。

今後はアガサ教頭殿を通してお二方の情報が教育部長殿に対して筒抜けになると思われた方が宜しいかと」


「更に申し上げますと、もし本気で今回の企てを成功させたいのであれば、この学校の構内でお二人は……勿論私も含めてですがお会いにならない方が宜しいかと思います。職員室内に、私の知る限り少なくとも4人、教頭殿の『協力者』が存在します」


「何だと!?4人も居るのか?」


驚くタレンに対して、マルクスは先日の「ネル家の知り合い」と同じように教頭の協力者の名を順に挙げた。


「彼らによって、特に校長閣下の構内の動き……学校長室からの出入りなどが監視されていると言っても過言では無いでしょう」


「何と……儂の出入りが監視されていると……?」


 エイチ校長は絶句した。あの教頭はそこまで手を回しているのか。


「教頭殿には、主任教官殿の意見具申によってかなり以前から『計画』が知られております。本日……恐らくですが教育部長殿からの確認が入る事で、彼はお二方への監視を改めて協力者達に命じるでしょう。

なので、次回からはお二方だけで無暗に会わないようにする事です。どこか校外に会談場所を設けた方が宜しいですね。場合によってはお二方のご自宅も見張られる可能性が考えられます」


「そっ、そこまでするのか!?」


「主任教官殿……相手には情報部にも『伝手』があるのですよ。あまり楽観されない方が宜しいかと」


「で、では……我らは今後どうすれば……どういう手段でこの改革を実現に繋げればいいのだ……?」


 校長はすっかり弱気になってしまった。敵はあまりにも強大であり、それに対して自分達は「剛毅な心」と正面突破ではとてもじゃないが叶わない程に少数派である事を、この首席生徒の説明で思い知ったのである。

【登場人物紹介】※作中で名前が判明している者のみ


ルゥテウス・ランド(マルクス・ヘンリッシュ)

主人公。15歳。黒き賢者の血脈を完全発現させた賢者。

戦時難民の国「トーンズ」の発展に力を尽くすことになる。

難民幹部からは《店主》と呼ばれ、シニョルには《青の子》とも呼ばれる。

王立士官学校入学に際し変名を使う。一年一組所属で一回生席次で首席。


リイナ・ロイツェル

15歳。女性。王立士官学校1年1組の級長で主人公の同級生。一回生席次3位。

《賢者の黒》程ではないが黒髪を持つ女性。身長はやや低め。瞳の色は紫。

実家は王都在住の年金男爵家で四人兄妹の末娘。兄が三人居る。数学が苦手。


フォウラ・ネル

17歳。女性。王立士官学校三回生。陸軍軍務科専攻。三回生学年首席。学生自治会長。

主人公に対する殺人未遂の現行犯で憲兵本部に拘留されるが和解が成立して釈放され、復学も許される。


タレン・マーズ

35歳。マーズ子爵家当主で王国陸軍少佐。ジヨーム・ヴァルフェリウスの次男。母はエルダ。

士官学校卒業後、マーズ子爵家の一人娘と結婚して子爵家に養子入りし、後に家督を相続して子爵となる。北部方面軍第一師団所属から王立士官学校一回生主任教官へと抜擢されて赴任する。

後に少佐に進級した上で三回生主任教官へと昇格し、白兵戦技の改革に乗り出す。


ロデール・エイチ

61歳。前第四艦隊司令官。海軍大将。第534代王立士官学校長。勲爵士。

剛毅な性格として有名。タレンの戦技授業改革に賛同して協力者となる。


エル・ホルプ

24歳。陸軍中尉。王立士官学校教官。担当科目は白兵戦技(槍技)。独身。

父親は王都方面軍所属の陸軍少将。士官学校最年少の教官。

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