大人達の奔走
【作中の表記につきまして】
士官学校のパートでは、主人公の表記を変名「マルクス・ヘンリッシュ」で統一します。
物語の内容を把握しやすくお読み頂けますように以下の単位を現代日本社会で採用されているものに準拠させて頂きました。
・距離や長さの表現はメートル法
・重量はキログラム(メートル)法
また、時間の長さも現実世界のものとしております。
・60秒=1分 60分=1時間 24時間=1日
但し、作中の舞台となる惑星の公転は1年=360日という設定にさせて頂いておりますので、作中世界の暦は以下のようになります。
・6日=1旬 5旬=1ヶ月 12カ月=1年
・4年に1回、閏年として12月31日を導入
作中世界で出回っている貨幣は三種類で
・主要通貨は銀貨
・補助貨幣として金貨と銅貨が存在
・銅貨1000枚=銀貨10枚=金貨1枚
平均的な物価の指標としては
・一般的な労働者階級の日収が銀貨2枚程度。年収換算で金貨60枚前後。
・平均的な外食での一人前の価格が銅貨20枚。屋台の売り物が銅貨10枚前後。
以上となります。また追加の設定が入ったら適宜追加させて頂きますので宜しくお願いします。
憲兵課長サムス・エラ中佐は第四師団長アーガス・ネル少将のプライドを捨てた「嘆願」を受けて、軍務省法務部の部屋へと足を向けた。
軍務省庁舎と憲兵本部庁舎は隣接している……と言うよりも憲兵本部庁舎は一個の建物として独立はしているが、実際には軍務省本庁舎とは同じ敷地、同じ塀の中に隣接して立地しており、地上三階・地下二階建ての軍務省庁舎と地上二階・地下二階構造の憲兵本部庁舎は地上二階の渡り廊下と地下一階の地下道でそれぞれが結ばれていた。
両者の関係を表すと、軍務省側が「主」であり、憲兵本部側が「従」となる。組織的には憲兵課長の上役は各省部長級である憲兵副総監、そしてその上は局長級である憲兵総監という事になり、エラ課長にとって憲兵本部内の上司は事実上この二人しか存在しない。
しかし「本省」たる軍務省は役職による階級が一つ上と見なされ、同じ「中佐」階級で「課長職」であっても、本省内の方が「先任」として扱われる。
エラ課長がこれから「お伺いを立てる」軍務省法務部次長ジェック・アラム大佐は、前述の話で言えば実質的に二階級上の役職に居る人物であると言える。
ちなみに、地方部隊と軍中央との間にも実質的階級差が存在し、地方部隊である第四師団長のアーガス・ネル「少将」は憲兵課長であるエラ「中佐」とは待遇面でそれ程変わらないとされ、これが本省の超エリート軍官僚であるアラム「大佐」に対しては階級が逆転してアラム大佐の方が職位としては先任という現象が起きる。
エラ中佐がネル少将閣下の「土下座」に対してそれほど心が動かされていないというのもこの「地方と中央の意識の差」が起因しており、憲兵課長からしてみれば
「なんで自分が多忙の中を田舎の部隊長の子弟の尻拭いに動かねばならんのだ」
という気持ちになってもおかしくない。しかもエラ中佐は能力こそ評価されてはいるが、同時に「小役人気質」を多分に持ち合わせた人物で、
「出世に響くような案件には関わり合いたく無い」
という気持ちもある。しかし今回の件に関しては憲兵隊からも「ネル家の関係者」として憲兵中尉の階級にある者を二名も出してしまっているので、これが軍法会議において明らかにされてしまうと、その直接の上司たる自分にも「火の粉がかかる」という多少の危機感は存在するので、彼としても動かざるを得ないのである。
そして今回に限っては、(軍務省)本省内にも瑕疵がある。受給審査部調査課長という地位にある者がやはりネル家の関係者として行動していた疑いが持たれている。この疑いが本当であれば軍務省としても「表に出したくない」話であろうから、法務部の対応も多少は違ってくるのではないかと、エラ課長は読んだのだ。
何しろ、エラ課長も知らなかったが当件の軍法会議における「裁判長」は王都方面軍司令官ジヨーム・ヴァルフェリウス大将である。
彼の場合、公爵家当主でもあり……恐らくは軍部の中で誰に対しても忖度する事無く良い意味でも悪い意味でも等しく公正に判決を下すだろうと予測される。
今回の件の場合……今のままの状況で軍法会議が開廷された場合、ネル姉弟の有罪はほぼ確実であるが、同時に軍務省と憲兵本部に対しても責任を求める声が上がる事は必定である。
これがもし裁判長に軍務省関係者が選出されていれば、多少の「手加減」は期待できただろうが、残念な事に現実は士官学校に対しても「シガラミの無い」公爵閣下である。
軍法会議開廷の延期は偶然なのか……軍務省側にとっても「まこと都合の良い」状況であったと言える。
自分の執務室からそのまま渡り廊下で軍務省本庁舎に入ったエラ課長は法務部の部屋に赴いて職員に次長への取次ぎを頼んだ。
「アラム次長は在室しております。どうぞこちらへ」
どうやらこちらも多忙である法務部次長は幸運な事に時間が空いていたらしい。エラ課長は胸を撫で下ろしながら職員の後に続いて法務次長室に向かった。
時刻は既に17時に近付いており、アラム大佐は既に本日の活動日誌をつけている最中であった。職務に対して真面目に取り組む彼は日々の職務内容を自発的に日記に残しているのである。
この法務畑一筋の「クソ真面目」な軍官僚を前にして緊張しながらもエラ憲兵課長は
「次長殿。お忙しいところお時間を頂き感謝します」
アラム次長は顔を上げて
「いやいや、エラ殿。お勤めご苦労様です」
穏やかに声を掛けた。この「クソ真面目」で有名な法務官僚は、同時に「法務局の良心」とまで言われた人格者でもあるのだ。
「何やら慌てたご様子ですな。どうしました?」
「はい……実は一昨日に要請させて頂きました第四師団長の件なのですが……」
「あぁ、開廷延期の件ですか?確か……本日は師団長閣下と被害者の学生が直接接見する予定でしたよね?もう終わったのですか?」
「はっ。接見そのものは終了致しまして、双方共既に退出済でございます」
「なるほど。それで?何か進展があったのですか?」
「そ、それが……」
困惑する憲兵課長の様子を見て、アラム次長はやや表情を曇らせる。
「何かあったのですか?」
「はい。結論から申し上げますと、接見そのものは『物別れ』に終わりました。状況は宜しくありません」
「何と……。まさか……少将閣下から何か恫喝行為などがあったとか?」
「いえ……いや、まぁ……確かに少将閣下の側からは威圧的な態度が見受けられたらしいのですが……」
「ふむ。私はそこが心配だったのです。課長殿から先日聞かされた話では、彼はどうやらこの王都でも小さく無い『勢力』を築いている疑いがあるとの事でしたから……。
何かあの方が強硬的な手段を採るのでは無いかと危惧していたのですが……」
「いえ、次長殿。実際は被害者の生徒の方がどうやら上手だったようでして」
「ほぅ……被害者の生徒……確か先日入学したばかりとお聞きしましたが?」
「はい。その新入生です。年齢も15歳。普通に見ればまだまだ『子供』と言える歳ではあります」
「まぁ、そうでしょうな。そんな『子供』が歴戦の師団長閣下から恫喝されたらひとたまりも無いでしょう」
「それが……その生徒、どうやらとんでもない『食わせ物」だったようです」
「ほう?」
「少将閣下の恫喝を受けて萎縮するどころか……逆に閣下の長男の罪状を新たに一つ上げて訴追を要請して参りました」
「何ですと!?」
アラム次長は驚いている。無理も無い。15やそこらのまだ大人にも成り切っていない士官学校新入生が、第四師団長という一万人レベルの配下を持つ現役の陸軍少将からの恫喝を受けて、萎縮どころか反撃したと言うのである。
「この被害者生徒、我々すら持っていない情報をかなりの量で握っており、これまで全く挙がっていなかった新証言をどんどん並べた上で、被告人の娘と息子……終いには父である少将閣下自身すら糾弾の対象としたようです」
「接見の立会人に指定していた私の部下の憲兵隊長から呼び出しを受けて、その場を見に行った時には、既に被害者生徒はその場から退出しており、憔悴し切った少将閣下だけが残されておりました。
少将閣下の御様子は一昨日お会いした時よりも更に耗弱されている様子でして……」
「そ、そんなにですか……?」
「はい。そして驚くべきことに閣下は私に対して土下座までして来ました」
「えっ?少将閣下が?エラ殿に対してですか?」
「はい。少将閣下は改めて今度は次長殿……。あなたとの面談を希望されております」
アラム次長は「少将閣下が土下座をした」というエラ課長の報告と、更に突然の「自分への御指名」に再び驚きを見せて
「私と?今更私と何を話す?」
「少将閣下は被害者との接見によって、ご自身の長女と長男の罪状を全面的に認めた上で責任は全て父たる自分が被ると言い出されまして……」
「つまりエラ殿が今言った『被害者側からの糾弾』というのが効いたわけですか……?」
「結果的にはそうなるのではないでしょうか。何分、私はその場には立ち会っておりませんので実際はどのようなやり取りが行われたのかは存じませんが、立会人からの報告では被害者から出された『新証言』はどれも聞き捨て成らない内容ばかりでして……」
「その新証言というのはどのような内容なのですか?エラ殿はお聞き及びになられたのでしょう?」
「はい。後程彼は報告書に全て纏めると申しておりましたが、あらましは先程口頭で聞きました。内容は非常に衝撃的なものでして……」
「ほぅ……。聞かせて貰えますかな?」
「勿論でございます。私がこのように急遽、次長殿との面会を要望致しましたのは、この新証言の内容をお聞き頂いた上での御判断を頂く為でございますから」
憲兵課長の言葉を聞いてアラム次長は急に緊張が漲って来た。目の前で多少戸惑っている感すらあるこの男は、決して無能では無い。
サムス・エラ憲兵課長は45歳。元は軍部の人間では無く、王立官僚学校を席次三位で卒業した「指輪組」である。
官僚学校卒業後は内務省に入省し、警保局警務部という警察組織……護民兵を内部監察する部署で活躍。その業績を買われて軍務省人事局からの「引き抜き」を受けた。
当時は既にナトス・シアロンによって内務省の密かな分裂が始まっており、サムス・エラは「シアロン派」として宰相府隷下の監査庁と連携して「内務卿派」への内偵に従事していたが、その行動が相手に知られるところとなってしまい、内務卿本人から睨まれる格好となってしまったようだ。
そのような状況となって進退に窮した時に、年少の領袖であるナトスから「省外に出てほとぼりを冷ました方がいい」と諭されて、軍務省からの「引き抜き」に乗って憲兵へと転身したのである。
その後は内務省時代の業績もあって「大尉待遇」という中途採用の形から昇進を重ねて現在の憲兵課長という重職に就いているのだ。
「被害者学生の新証言の内容は主に……ネル家という西部方面軍内に一大軍閥を築きつつある一族が、この王都におきましても相当な勢力を構築していた事によるものであります」
「先日の士官学校教官でしたか……彼の進言の中でも言及されてましたね」
「その事ですが次長殿……実はあの士官学校主任教官であるタレン・マーズ殿は……ヴァルフェリウス公爵閣下の次男……御子息でございます」
タレンの身上について殆ど知らされていなかったアラム次長は憲兵課長から、突然にその正体を知らされ、何か鈍器のようなもので頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。
「なっ……あ、あの……あの士官学校教官が……ですか!?」
「はい。私も実はこの事実を知ったのは先程の事でして……。やはり被害者生徒の口からもたらされた情報であると、立会人だったオーガス中尉から報告を受けました」
エラ課長も、タレンとベルガの前任地が同じ北部方面軍である事を知らなかった。そもそも北部方面軍出身であるタレンが士官学校の、しかも主任教官を務めている事自体が非常に稀な話なのだ。
そしてそれは事件現場でタレンと十年ぶりに再会したベルガも同様であった。まさか北部方面軍から士官学校へ転任等と考えてもいなかったし、そもそも「あれだけの『驍将』を北部方面軍が手放すわけが無い」という先入観があったのだ。
但し、ベルガ自身もタレンが若い頃に一度士官学校教官として王都に赴任していた事実を知らない。
彼がヴァルフェリウス中隊長の下で匪賊討伐に活躍したのはタレンが当時の第一師団長からの要望で王都から呼び戻された後の事であった。
結局、ベルガはタレンが「ヴァルフェリウス姓」であった頃の話を好まないという空気を察して、憲兵本部内でもその事実は伏せたままにしていた。
このような変則人事を行ったのはアラム次長の所属する軍務省なのだが、同じ軍務省の中でもアラム次長が属する「法務局」と、タレンの士官学校赴任人事を決定した「人事局」では部署が違うので、お互いが行った業務の動静を把握出来ていないのだ。
ベルガ・オーガス憲兵中尉が元北部方面軍所属の実戦経験者である事は、憲兵本部内ではそれなりに知られた話であったが、嘗て北部方面軍において「北部軍の鬼公子」と恐れられていた驍将の名までは把握出来ていなかったようだ。
何しろ北部で大暴れしていた貴公子ならぬ「鬼公子」は、その後子爵家に婿入りしてしまい、「公子」では無くなってしまったからである。
そして先日、意見具申の為に憲兵課長の執務室を訪れた士官学校の主任教官は「マーズ大尉」と名乗って、理路整然と落ち着いた態度で被害者と少将の接見実施を説いた。
その時の印象では、とてもそのような「前歴」を持っていようとは想像もつかなかったのである。
「では……その話に聞いていた士官学校の教官殿は……本件での法廷で裁判長を務める人物の……」
「はい。被害者の学生は、その軍法会議で公爵閣下が裁判長に指名された事も知っていたようで……もちろん次長殿が検察官として出廷する事も存じていたようです」
「何ですって……?どこからそのような情報が?」
アラム大佐もバカでは無いので、目の前の憲兵課長からその情報が漏れたとは思っていない。憲兵課長が知り得ていた情報は自身が法務官として検察を担当する事だけであって、それ以上の内容は知らなかったはずである。
そもそも、自分もそうなのだが……憲兵課長はそのような特定の一裁判に対して気を回せる程に「暇な役職ではない事」は法務官であるアラム大佐も良く理解しており、事実……先日来この憲兵課長はこのネル姉弟の案件に関してはほぼ自分に丸投げしてきている。
もちろんそれは自分が本件における担当法務官であるからなのだが、激務とも言える憲兵課長職に居るエラ課長にとっては「そんな事にいちいち自分の判断を入れる程暇では無い」というところなのだろう。
エラ課長が、現在また自分へ面会を求めて来たのも……結局は担当法務官である自分への面談を、少将がプライドを捨てて土下座までして懇願した為に「仕方無く」取り次ぎに来ているだけなのである。
もっと言ってしまえば、何故この多忙なはずの憲兵課長が土下座されて頼み込まれたとは言え、そのような「面倒臭い」取り次ぎを引き受けたのか、アラム次長には不思議でならない程であった。
「とにかく、被害者学生が握っている情報は相当な量であることが予想出来まして……実は今申し上げた軍法会議構成人の他にも……」
「ま、まだ何か?」
「はい。詳細につきましては立会人となったオーガス中尉からの報告書に目を通して頂く事になりますが、少将閣下……いやネル家が持っていた王都の私的組織は相当に根が広いものでありますが……それをこの被害者学生は全容に近い状態で掴んでいるようなのです」
「被害者の学生が?憲兵隊よりもですか?」
「はい。その新証言によりますと士官学校には……その……お恥ずかしながら先日お伝えしたエンダ憲兵中尉の他にダフ・ネルカイズ憲兵中尉も『一味』として派遣されていたとの事……つまり常駐憲兵士官三名のうち、二名が少将閣下の関係者で固められておりました。
申し訳ございません……これは我ら憲兵本部側の落ち度でございます」
エラ課長は慚愧に耐えないというような表情で頭を下げた。なるほど……。多忙であるはずの憲兵課長がわざわざ「取り次ぎ」に来訪したのもこれが原因かとアラム次長は納得しかけた。
「そういう事でしたか。憲兵士官が二名も……「彼の家の者」として入り込んでいたと……。憲兵本部はその二名を学校常駐に任命する際に身上調査等は行っていなかったのですか?」
別に咎めるような口調では無かったが、アラム次長の言葉には憲兵本部側の過失を問うような色が混じっていた。
それを受けて憲兵課長は顔から畏れ入るような態度を示しながらも
「実は……話はそれだけはございません。先日も申し上げましたが、その憲兵士官任命におきましては……ほ、本省内からの強力な推薦があったのでございまして……」
「なっ……!そう言えばその様な事を言ってましたな……」
「実は……その推薦者の名前も……被害者学生の口から新証言の一つとして飛び出しまして……ネル家の息が掛かった二人の憲兵士官を士官学校常駐職に推薦したのは、人事局受給審査部調査課長のアンリ・スレダ中佐との事です」
「何ですって!?か、課長職……本省の課長職にある者にまで……ネル家の息が掛かっていると言うのですか!?」
アラム次長は仰天した。
「左様でございます。更に……この人物……どうやらネル少将閣下とは士官学校同期の関係で、どうやら『男女の仲』だったようでございます」
「なっ……!それは本当ですか?」
「はい……。どうやら被害者学生はその事についても言及したそうで、その指摘を受けた少将閣下は図星を突かれたような様子で反論すら出来無かったそうです」
「なるほど……同期でそのような関係ならば……」
「そしてスレダ中佐は、どうやらその地位で次々と士官学校人事に対して介入を行っていたようでして……士官学校内には前述の二人の憲兵士官の他に四人の教職員……そのうち一人は何と三回生の学年主任教官だったそうです」
「何ですって!?三回生の主任教官と言えば教頭以下では最先任の教職員ではないですか……実質的な校内ナンバー3ですか……」
「次長殿。私の意見を率直に述べさせて頂いて宜しいでしょうか?」
エラ課長は突然、形を改めたのでアラム次長も
「な、何でしょうか?」
と応じるしかなかった。
「今回の件、あまりにもネル家の浸食が深過ぎて、このままこのような証言に基づく彼の家の与党の存在が法廷で明るみに出ますと、我が憲兵本部だけでなく本省も少なからずダメージを受ける事になりませんでしょうか」
「そしてこれを審理する裁判長は先程も話が出ましたが王都方面軍司令官である『あの』ヴァルフェリウス公爵閣下です。
あの公爵閣下が我ら軍務省に対して『気を遣ってくれる』という事は考えらえません。恐らくは忖度無しでの判決が下り、そして当然ながら判決に関連して本省及び憲兵本部への小さく無い規模の監査が入る可能性があります」
「ふむ……そうですね。可能性がある……と言うよりも確実に入るでしょう……何しろ相手はあの公爵閣下です。これを機に徹底的に手を入れて来ると思います」
「やはりそう思われますか?」
「はい。恐らく公爵閣下は最終的には軍務卿……シエルグ侯の追い落としまで図る可能性は十分に考えられます。シエルグ侯を軍務卿から外した上で自らがその後任に入る……そこまで考えていてもおかしくありませんね……何しろ御子息まで本件に関わらせているのですよね?」
アラム次長のタレンに対する推測は完全な「誤解」であるが、こうなってくると突然出て来た「公爵の御子息」の存在が非常に不気味なものに思えるのだ。
「で、あるならば……次長殿におかれましては、少将閣下と直接面談の上で姉弟の起訴を取り下げると言う選択を採る事は出来ませんでしょうか?」
「なっ……!?起訴を取り下げろと?」
「はい。このまま軍法会議を開廷させてはこの軍務省全体……もちろん憲兵本部にも大きな影響を及ぼす危険があります。
特に軍務卿閣下と公爵閣下の政治問題にまで発展させては国王陛下の御心象も悪くなるばかりではないでしょうか?」
「むぅ……確かに。国王陛下の御心を乱すのは宜しくないですね……」
アラム次長は王国軍の最高司令官である国王にまで及ぶ影響を憂慮した。裁判長である公爵自身がそう思わなくても、裁判の中で様々な「醜聞」が明らかにされると関係各方面に広くダメージが及ぶ。
当然ながらそのような騒憂は最高司令官である国王の耳にまで達するだろうし、そこでもし「正義感が強い」とされる国王が統帥権を行使して介入して来た場合、軍務省は上から下まで大混乱となるのは勿論、西部方面軍に対しても少なからず粛清が入る恐れがある。
アラム次長は順当に行けば……遅くても再来年の「夏の除目」までには60歳の定年で引退する現法務部長の後任に就任する見込みで、省内でも彼を引き上げようとする支持者は多い。
部長昇進となれば直後には少将への進級も確実となり、更に数年後には法務副局長、そして中将への昇進も夢では無い。
軍官僚としての通常のゴールはもう一つ上の陸軍大将が務める各局長や軍務省次官であるが、次官まで上り詰めれば定年は65歳にまで延長され、頂点である軍務卿への道も開ける。
つまり同じく軍務卿の地位を狙っている(と思われる)ヴァルフェリウス公爵は最終的にアラム次長のライバルになる可能性すらあるのだ。
そのライバルたる公爵に軍務省の人事に介入されるのは非常に拙い。アラム次長はそのように考えた。
「分かりました。エラ殿の申し出を受けましょう。少将閣下との会談を行ってもいいですが……そのまま起訴を取り下げるのは難しいでしょうな」
「はい。それはそうでしょう。何しろ軍法会議の開廷まで決まっていたのです。今更それを覆すのはかなり無理があります。逆に他の会議構成員の方々から要らぬ疑念を持たれる可能性すらあります」
「その通りです。なので形としてはやはり被害者学生からの『被害の取り下げ』が必要となるでしょう」
「つまり……和解を勧めると?」
「そうですね。最終的にはそのような形になるでしょう」
「しかし……被害者の学生は応じますでしょうか?」
「私がその席に立ち会って仲介するしかないでしょうが……」
「次長殿、誠に恐縮ではございますが……次長殿がお出ましになられても、それだけではあの被害者の学生が和解に応じるとは思えないのです」
「ほぅ……私が出て行って和解を勧告しても難しいと?」
「いえ、決してそのような意味で申し上げたのではございません。これは私も接見に立ち会ったオーガス中尉から聞いたのですが……」
「彼の被害者学生は士官学校の学生でありながら軍部の上位者に対してそれ程敬意や畏怖を以って接しているようでは無いらしく、その思考原理には法令に対する徹底した遵法意識なのだそうです。
相手にそれが認められない場合は例えお相手が次長殿でも素直に従うとは思えません」
「ほぅ……そのような若者なのですか。ちょっと興味が湧いてきましたね……」
アラム次長が少将閣下との会談から逸れて被害者の学生に対して興味を持ち始めた様子を見てエラ課長は苦笑したが、すぐに態度を改めて
「なので、和解を勧めるのであれば余程少将……ネル家側から大きな和解条件の譲歩を引き出さなければ被害者学生を納得させるのは難しいのではないかと……」
「分かりました。それでは私はひとまず少将閣下と話をしてみましょう。その上で和解を勧めてみますが、その際の条件について彼と取り決める必要がありますね」
「お手数をお掛けしまして申し訳ございません……お役に立てず誠に遺憾ですが……」
エラ課長は深く頭を下げた。しかし彼にしてみれば
(これで法務官殿も巻き込めた……憲兵本部側の不手際は何とか薄める事が出来そうだな……)
と、思わないでも無かった。憲兵課長の小役人根性が滲み出ているところだが、ひとまず事態を少しでも解決に進める……軍務省と憲兵本部が責任を問われる事の無いように細心の注意を払わねばならない。
アラム法務部次長とエラ憲兵課長はネル第四師団長との会談日程を三日後の9月29日と設定し、その間に予め被害者学生に少将閣下との再度の会談とその席上での和解を打診する事で話し合いを纏めた。
本来ならば、タレン・マーズ主任教官をこれ以上この件に関わり合わせたく無かったが、やはり被害者は士官学校の学生である事とオーガス憲兵中尉から
「被害者学生が今回の関係者の中で一番信頼しているのはマーズ主任教官殿であります」
と断言した為、その言に従う事にした。最早軍務省側と憲兵本部にとってマルクス・ヘンリッシュは「腫物扱い」である。
結局、アラム次長とエラ課長の意向をタレンに伝える役を更にベルガが担う事となり、まるで伝言ゲームのような成り行きは彼らの「誰も責任を取りたくない」という気持ちの表れのようにも見えた。
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「西部方面軍のアーガス・ネルです。お忙しいところ、お会い出来る機会を設けて頂き感謝します」
「軍務省法務局法務部のジェック・アラムと申します」
9月29日、今度は場所を軍務省本庁舎三階の応接室に移してアーガス・ネル少将とジェック・アラム大佐の面談が行われた。
階級としては少将であるアーガスの方が上だが、軍部内の序列的には本省の次長職の方が上であると見られ、更に立場としてはアラム大佐はネル少将の娘と息子の「生殺与奪」を握っていると言っても過言では無い。
父親としては完全に法務官に対して遜った態度になるのは当然の事であった。
「お話は一通りお伺いしております。今回の御令嬢と御子息の起訴を取り下げて欲しいとの事だそうで」
「はい……。この度は当家の愚女愚息が多大なるご迷惑をお掛け致しまして誠にお詫びしようもございません。
両名共、救いようも無い愚か者ではございますが……それでも私にとっては生命よりも大切な娘と息子なのでございます。
どうか……どうかご寛恕を以って処罰は私の身に代えて頂けませんでしょうか」
「あの被害者」との直接会談から三日、少将閣下は飯も咽喉を通らないのかやつれ切っている。目の周りにも隈が色濃く出ており、恐らくはまともな睡眠も摂れていないのだろう。
アラム次長は今回初めてネル少将と面談するのだが、その彼が見ても恐らくは往時と比べて変わり果てた姿なのだろうと容易に想像出来る程に少将閣下は耗弱した様子であった。
「申し訳ございませんが、私も任務多忙の身である故……率直に申し上げさせて頂きます。本来であるならば、今回の件のように現行犯による逮捕案件である事、そして目撃証言も複数から得られており、その整合性においても問題が見られない。
更に被害者からも容疑者への厳正な処罰を求められておりますので『起訴を取り下げる』という閣下の御希望に沿う事は非常に難しいものと判断せざるを得ません」
「何しろ、既に軍法会議の開廷が一度は決定されていたのです。現在はそれを軍務卿閣下の権限で開廷延期という措置を採って頂いている状況でございます。
あくまでも『延期』なのです。そして軍務卿閣下の権限によっていつ解除されてもおかしくない状況でもあるわけです」
法務次長の話を少将は黙って聞いている。その隈が色濃く浮き出ている両目だけは一縷の望みを懸けた思いで不思議な光を放っているようにも見える。
「法務官殿の仰る事はご尤もな事で、私は自分がどれだけ不躾で無謀なお願いをさせて頂いているのか重々承知しているつもりでございます。
しかし、それでも娘と息子は救ってやりたい……。あの子らがこの度の不祥事を起こしてしまったのは……偏に私と私の『家』が分を弁えずに愚昧な考えを持ってしまった事に由来するのです……」
「あの子らは我ら……我が家の大人の分不相応な野心によって捻じ曲がった育て方をしてしまいました……。全ての責任は私にあります。
あの子らに下される裁きは全て私がこの一身を以って引き受ける所存です。その一事を以ってどうか……どうか二人をお赦し下さい……」
少将閣下は先日の憲兵課長に対して行ったように、再び床に膝と手を付いて懇願する姿勢……つまり土下座をしようとしたので、アラム次長は慌ててそれを押し留めた。
「閣下、お止めください!そのような事をされましては却って迷惑でございます。このような席で閣下にこのような真似をされたと知られれば私も世間に対する面目を失ってしまいます。
閣下からのお話をこれ以上お聞きする事も侭ならなくなります。どうかご自重下さい」
そこまで言われた少将は「ううっ……」と呻いて再びソファーに腰を下ろした。そのまま視線を自分の膝辺りに落として小刻みに震えている。
恐らくは再度官僚相手に土下座を行おうとした事、そしてそれを拒まれた事に対する屈辱感が全身を駆け巡っているのだろう。
幸いな事にこの会見は密室において二人だけで行われているので、前回の時のような第三者にそれを見咎められる事は無かった。
「閣下……お話を続けさせて頂きます。私は今回、エラ憲兵課長から報告を受けて、子を想う閣下の御心情に対して同情の念を禁じ得ません。
しかし、物事は既に取り返しのつかない事態にまで進んでしまっていると思われます。
この事態において一番厄介なのは被害者である士官学校生の態度が硬化してしまっている事でしょう」
「被害者の士官学校生」という単語を聞いて小刻みに震えていた少将の身体がビクリと一際大きく反応した。
前回の「接見」で余程精神的にこっ酷くやり込められたのだろうと、法務次長を心中で苦笑させた。
「今回の件、閣下の御希望を叶える為には、彼の若者の硬化してしまった怒りを解く必要があると思われます。
閣下が今回の件における御令嬢、御子息の容疑を全て認めて受け入れた上で、謝罪と『誠意ある譲歩』さえ認めて頂けるのであれば彼の若者の気持ちも多少は和らいで再び談合に応じてくれるのではないでしょうか」
「つ、つまりどういう……じょ、譲歩とは……」
「現時点で『譲歩』の内容は私にも思い付きません。その最初の一歩は二人のお子様の罪状を全面的に認めて受け入れるという意思の表明でしょう。
そこから先は相手の意向次第かと思われます」
「彼の……彼の要求を受け入れろ……と?」
「はい。その要求がどんなものなのかは判りません。しかし到底受け入れ難いもので無い限りはその要求を受け入れる事で彼の若者の気持ちを収められるかもしれません。
私は閣下さえこの事をご承諾頂けるのであれば、被害者との間に立って相手側に『和解』を勧告致しましょう」
「わ、和解……なるほど……」
「和解が成立すれば、恐らくは軍務卿閣下も、『裁判長』殿も起訴の取り下げを受け入れて下さるのではないかと思われます。
特に当代の軍務卿閣下はこのような軍内の不祥事が公に晒される事を好まれる方ではございません故に」
現・軍務卿であるヨハン・シエルグは65歳。平民出身だが士官学校卒で陸軍大将、王都防衛軍司令官にまで進み、現在は軍務卿として侯爵に叙任されている。
この人物は武官出身としては珍しく「調整型」の人物であるとされ、更には「武人の恥」という事を自他共に嫌う性向を持っていると見られている。
彼が軍務卿に就任してから今年で五年。軍内の犯罪、特に非軍属の国民が絡まない微罪においては軍法会議を開く回数が極端に減っていた。
彼自身は軍法会議の開廷そのものを「軍の恥」として忌避しているのである。
現在のトップ……厳密には国王が軍のトップであるが……その長たるシエルグ卿であるならば、原告側、被告側双方から和解合意書が提出されれば、裁判長たるヴァルフェリウス公爵を抑え込んで軍法会議開廷を中止に出来るのではないかとアラム次長は考えていた。
その為には「あの」被害者は当然の事として、その彼に付き添うように今回の件に関わってしまっている士官学校主任教官であるマーズ大尉も何とかしなければならない。
何しろ、憲兵課長から聞いたところでは、彼は今回の軍法会議において裁判長に就任したヴァルフェリウス王都方面軍司令官の息子……次男であると言うのだ。
彼をも一緒に説き伏せる事が叶えば、父である裁判長にもこちらの考えを汲み取って頂けるかもしれない。
アラム次長は一応、そこまでの計画までは立てられたのだが、その為にはまず目の前の容疑者姉弟の父親である第四師団長から「和解に対していかなる譲歩も厭わない」という言質確約を引き出す事と、これが最大の難関になると思われるが……噂の「被害者」学生を説得する事が肝要なのである。
「左様。被害者の学生との和解です。彼の怒りさえ取り除く事が出来れば、後は私の方から軍法会議の中止を要請出来ると思います」
アーガス・ネルは目の前で穏やかに語る法務官の話を聞き、その言葉の中からこの男が検察側の人間でありながら、子供二人の起訴取り下げに協力的な姿勢を感じた。
どういうわけかは判らないが、この男は自分の望みを叶える為に力を尽くしてくれると言っているのだ。
「ほ、法務官殿は……どうしてこのように取り計らって頂こうとされているのでしょうか……?」
ここで差し伸べられた手を喜々として取る程、まだアーガスの知能は曇っていなかった。この「取引」によって娘と息子……そして自分の家が更なる窮地に追い込まれては意味が無いのだ。
アーガス自身は、この目の前の法務官の「善意」をそのまま無条件で受け取れる程に「優しい世界」で生きて来たわけでは無い。
むしろこのような「甘い話」には必ず何か裏がある……そのような考えでこれまで軍人たる人生を送ってきたのだ。
「前途ある優秀な若者の芽を摘むのは惜しい……などとキレイ事を言うつもりはありません。
今回の件は閣下におかれましては誠に遺憾ながら『大きな不祥事』なのですよ。士官学校内での……それも首席最上級生が起こした事件、そしてそのご尊父は地方部隊の高官。更に士官学校、憲兵本部、挙句の果てには軍務省内にも『事件関係者』が居るわけです。
これが全て軍法会議によって公にされた場合……国王陛下にご心労をおかけする事になります」
国王の名を出されてアーガスは雷に撃たれたように身を起こした。
「今上陛下におかれましては、国軍の統帥を担われておられますが陛下ご自身は官僚学校の御出身であらせられます。
従って、国軍に対する御心象が損なわれてしまわれた場合、軍に対してどのようなご叱責を賜る事になるのか……私はそれを危惧しているのです」
「なっ……なるほど……わ、私は……この期に及んでも自身の娘、息子と家の事だけしか考えておりませんでした……陛下の御心にまでは考えが及びませんでした……」
アーガスはガックリと頭を垂れて尚小刻みに震えていた。
「お解り頂けましたでしょうか?此度の件は最早閣下の御身内だけの話では無いのです。余りにも軍関係者の関与が多過ぎる……そして被害者の学生はその全貌を掴んでいる恐れすらあります」
「あ、あの若者は……」
アーガスは一旦躊躇う姿勢を見せて
「あの若者は……もしや……魔法ギルドと繋がりを持っているのではないでしょうか……。その……あまりにも情報が……あの短期間で……」
うわ言のような調子で話した。それを聞いたアラム次長は
「何ですって?魔法ギルド……?」
怪訝な顔をした。
「魔法ならば……魔法を使っているならば……納得できるのです。私だって……報せを聞いて最短日数で王都まで来たと思っております……。
他の事など構う事も無くですよ……。父や妻にすら伝えず……伝える暇すら無く、私は王都に駆け付けて来たのです……」
「しかしあの若者は……そんな時間など無いはずなのにもかかわらず……あれだけの情報を……し、調べ上げて……」
「閣下は何か……あの被害者の学生が魔法ギルドと繋がっている証拠でもお持ちなのしょうか?」
「いえ……そんなものは……ま、魔法ギルドが相手だとしたら、そんな尻尾を掴ませてくれるとは……」
「なるほど」
アラム次長は腕を組んで沈思した。
(まさか……魔法ギルド……あの学生は魔法ギルドから力を借りていると……?そんな事があるのか……?)
「閣下、滅多な事を口にされてはいけません。証拠も無いのにそのような……魔法ギルドの名を出されるのは些かご軽率かと……」
「しっ、しかし……僅か半月で……半月で私の『協力者』の情報……親族の繋がりまで調べ上げているのです……どうやってそのような事を……出来るというのでしょうか……」
「分かりました。ではその件につきましては私にお任せ頂けませんでしょうか?彼についての調査はこちらの『手』で行うようにしましょう。
ですから閣下はひとまずそのようなお考えは置いて頂いて、彼との和解の事だけをお考え下さい」
「も、勿論です……。最早私もこれ以上無駄にあがくような真似は致しません。全て法務官殿にお任せ致します……」
「お聞き届け頂き感謝致します。それでは後日再びご連絡致しますのでそれまでお身体をご自愛下さい」
「あ、ありがとうございます……法務官殿のご厚情……感謝の他ございません。どうか……どうか宜しくお願い申し上げます……」
そう言ってアーガスはソファーから立ち上がり、一緒に立ち上がったアラム次長に深々と頭を下げた。
事実、彼にとっては最早この目の前で穏やかな表情を見せている法務官に望みを託すしかないのだ。
「承知しました。お気を付けてお帰り下さい」
アラム次長は少将閣下を部屋の入口まで送り、扉を開けて送り出すと部屋の前に立っていた警衛の憲兵に門まで送るように指示し、自分だけは一旦応接室に戻って再びソファーに腰を下ろした。
大きく溜息をつきながら
(魔法……魔法ギルド……まさかな……。馬鹿げた話だ)
誰も居ない部屋で暫く考え込むのであった。
【登場人物紹介】※作中で名前が判明している者のみ
サムス・エラ
45歳。軍務省憲兵本部憲兵課長。陸軍中佐。
王都において実質的に憲兵の実働を采配する軍務官僚でベルガの直接の上司に当たる。タレンからの進言を受けてアーガスを抑え込みに掛かる。
ジェック・アラム
51歳。軍務省(法務局)法務部次長。陸軍大佐。法務官。
軍務省に所属する法務官のうちの一人でネル姉弟の軍法会議の際には検察官を担当する予定であった。
アーガス・ネル
49歳。王国西部方面軍第四師団長。陸軍少将。3017年度士官学校陸軍歩兵科卒業。首席で金時計授受者。勲爵士。
フォウラ、ダンドー姉弟の父。娘達の憲兵隊拘束の急報を受けて任地から職務を放り投げて上京する。