二人は◯◯◯◯◯!
相変わらずの会話てんこ盛りパートです。
【作中の表記につきまして】
物語の内容を把握しやすくお読み頂けますように以下の単位を現代日本社会で採用されているものに準拠させて頂きました。
・距離や長さの表現はメートル法
・重量はキログラム法
また、時間の長さも現実世界のものとしております。
・60秒=1分 60分=1時間 24時間=1日
但し、作中の舞台となる惑星の公転は1年=360日弱という設定にさせて頂いておりますので、作中世界の暦は以下のようになります。
・6日=1旬 5旬=1ヶ月 12カ月=1年
・4年に1回、閏年として12月31日を導入
以上となります。また追加の設定が入ったら適宜追加させて頂きますので宜しくおねがいします。
『私が心血を注いで礎を築いた文明が僅か一日で灰燼に帰したよ。一日だぞ?我ら発現者と魔導の力の「おこぼれ」で増長した愚か者共は、ありとあらゆる厄災の力で惑星ラーの地表を破壊した』
『列強の指導者達は自分達だけは助かるつもりで地下のシェルターに逃げ込んだようだがな。その半分は《避難所》としての効果を発揮せぬまま消し炭になって行ったよ。そりゃそうだ』
『一つの超大陸が二つに裂けるくらいのエネルギーだからな。どれだけ地下に潜ろうが無駄と言うものだ』
『相手だってそう言う奴等が逃げ込む場所を狙うだろうし、それを破壊するだけのモノを抜かり無く作ってから喧嘩を始めるさ』
リューンは当時を思い出したのか、その文面もやさぐれ気味だ。
(なるほどなぁ。直接喧嘩を仕切った奴が塵になるのは自業自得だけど、巻き込まれる普通の人達からすりゃ恨んでも恨み切れないわな)
(それでも賢者の血脈は発現者不在ながらも月へ逃げ延びる事が出来たんだな?)
『そうだ。幸いにして惑星ラーの地上に居る奴等には月にまで大量破壊兵器を飛ばす技術は無かったのだよ』
『月は無事だった。戦争には巻き込まれなかった……と、言うかまだまだ頑張って長期間月で暮らす事を目指す程度の技術段階で月面に軍事施設など設置する余裕は流石に列強諸国も無かったからな』
『月には魔素どころか空気すら無いんだ。貴重な人工空気を使ってまで喧嘩する余裕も無いわけだ』
(そうか。それじゃ戦争の後は暫くの間、月で暮らしたの?)
『ところが、そうも行かなかったんだ。今言った通り、月には魔素も空気も無いんだ。だから当然魔導も使えず、空気だってラーから資材を送って貰って、月面施設で精製してから屋外とは隔離閉鎖された施設だけに循環させるような構造だったから、戦争で壊滅したラーからの物資が届かなくなった月でも食糧難と生活資源の欠乏がすぐに問題化したのだよ』
(うへ……。月は《楽園》には成り得なかったのか)
『呆れた事に、月でも争いが起き始めたのさ。食糧と空気の争奪だ。死者も出た。私は月面も遠くない将来に壊滅すると予測し、血脈継承者に今度はラーへの帰還を促した。
月面で長期滞在を実現させる為の組立式施設を解体して地表に移築すれば、辛うじて生き延びられると私は判断した。
私は必要であるならば惑星ラーと月ですら自由に行き来出来る存在なのでラーの地表の様子も観察する事が出来た。あれだけ徹底的に破壊されて、大陸が一つ分裂するくらいの破局を起こされたのにラーはなんとか耐え切ったのだ』
(惑星ラー兄貴の根性も凄いが、サラっと言ったお前の能力も凄いな……)
『結局、血脈継承者……彼の名は確かマルクスだったかな……。私の啓示を受け入れてくれて、ラーへの帰還を決断してくれたのだ。
帰還方法については問題無かった。
ラーからの物資輸送と月面からの資源輸送に使用していた大型輸送艦の中で結構な数が、ラーからの避難船としても使用されていたから、その気になれば月面に居た人類全員を載せてなお余裕があったのだ』
『マルクスは周りの人々にも自ら説得に回って大勢の人々が彼の地球帰還案に賛同してくれた』
『かくしてマルクスと賛同者達は月面滞在施設を分解して輸送船の余剰スペースに詰め込みラーへと帰還したのだ』
ラー兄貴と同じくらい熱いマルクス兄貴にも敬意を表したい俺は
(でも、そのマルクスって人とは行動を共にしなかった人だって居たんだろう?)
『いや、あのまま月に残っても結局はジリ貧になっていたから正常な判断が出来る頭を持った奴は残らず従ったよ。
確かあの時は20000人くらいがマルクスと共にラーへ帰還したはず』
(うぉ。凄いな。思ってた以上に大勢の人が月に居たんだな。数百人くらいだと思ってたよ……)
『それから200年程してから、私は月に行く用事があってその後の月面を見てきたが人類は一人として残っていなかった』
(何の用事だったの?)
『その事に関係する話を今から始める。とにかく大戦争によって22000年程続いた超古代文明は滅んでしまった。
この文明によって旧世界が繁栄していた頃を現在では《第一紀》と呼んでいる』
『魔導の誕生から大戦争、そして1年後の月面生存者の帰還辺りまでをどうやらそう呼んでいるらしい』
(そうなんだ。初耳……と言うよりも俺の知識には入って無い話だな)
『新たに始まった《第二紀》は……文字通り「この世の地獄」の始まりであった』
『現代でも歴史学の分野では文明世代毎に分けられている紀歴法で《第一紀》は《発展の時代》、《第二紀》は《暗黒時代》、《第三紀(王国歴)》は《復興の時代》と呼ばれている』
『《第二紀》は今言ったように大戦争による破局と、もう一つのあるものによって暗黒時代とされているんだ』
(あるもの?人類はまだ懲りずに争いを繰り返したのか?)
『いや違う。《魔物》だ。魔物がこの世界に誕生し、大戦争で破局を迎えた人類社会の生き残りを更に追い詰めたんだ』
(魔物って……あれだろ?この家くらい大きいトカゲとか、人を喰うネズミだの虫だの鳥とか色々とヤバい奴等だろ?あいつらって、人間よりも前から居たんじゃないの?
今の話からすると11000年くらい前の話だよな?俺の中の知識では人類は魔物を追っ払ってこの国を造った事になってるぞ?魔物が先住者じゃなかったのか?)
『月からラーに帰還してみて分かったのだ。それまで大気の構成元素になっていた魔素が、大戦争で放たれた大質量のエネルギーに晒されて再び変質してしまったようなのだ』
『変質してしまった魔素そのものは残された人類に目立った影響は与えなかった……と言うか、有害な放射線や毒素でそれなりに健康被害はあったけれど、人類はそれでもまだマシだったのだ』
『多少なりとも被害を免れた地下シェルターやマルクスら「月からの帰還民」が持ち帰った組立式の、月面環境下でも耐え得る滞在施設によってそれらはほぼブロック出来ていたしな』
『半減期も数十年程度だったから、マルクスの次の世代の頃には地表は再び人類が特に装備を必要とせず活動出来る範囲で環境が回復していたのだ。植物さえ復活し始めていたからな』
(なるほど。マルクスの決断も結局は人類の存続に貢献出来ていたんだな)
マルクスの英断は俺にとって「魔導の発明」なんかよりも身近に感じる壮挙に聞こえた。血脈の発現者には個人の力で到底及ばないんだろうけど、彼は「普通の人」として人類と血脈まで救ったのだろう。
『問題は……人類と共に生き残った小動物や昆虫類や、高熱で一旦気化して上空に巻き上げられた海洋水に《変質した魔素》が多量に吸収された事で水棲生物にも大きな変化が見られるようになった』
『体が巨大化したり凶暴化したり、強力な毒素を体内に蓄えたり。元々草食で捕食対象ですらあった小動物が巨大肉食化したりな』
『海からはおかしな進化をした海洋動物が上陸して人間を襲ったりした。
人類は地表の汚染よりも魔物からの襲撃に生命と種の存続を脅かされる事になったのだ』
(怖っ!何だよそれ?一難去ってまた一難じゃないか)
『魔物は寿命こそ当初は短かったのだが繁殖力と進化速度は圧倒的でな。世代を重ねる毎にどんどん大きく、凶暴化して行ったんだ』
『100年もすると人類だけではなく、魔物同士による捕食で早くも淘汰が始まった。人類は屋外に出る事すら難しくなってな』
『自然と人々は集まって団結し、集落を築きながら組織力で魔物に対抗するようになっていった』
『それでも集落ごと魔物に食い潰された所もある。現代にも魔物が残っているが、大半の種族は淘汰されたはずだ。
大きく進化し過ぎて動きが鈍くなった挙句に他の種の捕食対象になったり、活動するのに大量の魔素やエネルギーが必要になり過ぎて餓死したりな』
『それでも巨大肉食化しながらも数千年生き延びている《古代竜》なんて言うのはこの第二紀草創期に出現して最も成功した種族なんだろうな』
(人類も必死だな。もう人間同士で争ってる場合じゃ無くなったんだな)
『そうだ。やがて待望の第二紀最初の賢者の血脈の発現者が現れた。マルクスの5代後の来孫に当たる人物だな』
『ショテルと言う者だ』
『第二紀と言うのは結局8000年くらい続いて人類は苦難の連続だったのだが、その原因の一つが血脈の発現者が殆ど現れなかった事だ』
『魔物が強過ぎて人類は何度も絶滅しかけたのだ。その人類側の最後の切り札が発現者と魔導師だけだったからな。
結局第二紀の中で完全な発現者は二人しか産まれなかった』
8000年で二人かよ……。
(今の3000年に二人よりも世知辛いじゃないか)
『そのうちの一人は第三紀との過渡期で活躍した……先程も話したお前ともう一人の第三紀に生きた発現者だ。そして第二紀の今一人の完全な発現者が……ショテルだった』
(え。じゃ8000年で二人と3000年で二人の間で一人被ってるって事?つまり「11000年で三人」と言う表現が正しいんじゃないか?)
『結局、ショテルの後は約7800年現れなかった事になる。この間、不完全な発現者が三人。いずれも賢者の武の持ち主だった。まさしく《暗黒時代》に相応しい停滞ぶりだったな』
『賢者の武だけの発現者では魔物は駆逐出来ても、その先の出口が見えない。やはり鍵は魔法だったのだよ』
(そうか……そうなるとあれだな。賢者の武よりも人類の救済と発展に資するのは賢者の知の方なんだな?)
『まぁ……そうだな。賢者の武の強さは一見すると分かりやすく圧倒的でそれを目の当たりにした同年代の人々の記憶に残りやすい。
血脈の発現者としてではなく派手な英雄伝説や吟遊詩人の歌の主人公としてだ』
『しかし結果として後世の評価に残る業績を上げて人類社会を前進させるのは賢者の知が発現した者の方が多いと思う。あくまでも管理者としての私見だがな』
(なるほど。お前の言いたい事は俺にも何となく解るよ。これまでの話を聞いてきて)
『そしてその双方を兼ね備えた完全なる発現者であったショテルは、やはり後世に不朽の名を残す画期的な業績を挙げた。
現代でも《魔法世界》では彼女の事を《漆黒の魔女》と言う名で称えている。
彼女は人類としてだけではなく魔法世界においても恩人なのだ』
(えっ?魔女?ショテルさんて女性なの?発現者って女性も居るの?)
『そりゃ居るさ。当たり前だろうが。何で女性が居ないなんて思い込んでいたんだ?』
(いや……だって今まで話に出て来た発現者がみんな男だけっぽかったし。
『ふざけるな。私は女だぞ?今更何を言っているんだ?』
……ん?
……。
……。
……え?何言ってんの?
(えぇぇ!?そりゃ無いわぁぁぁ!そんなオッさん臭い文面でそりゃ無いわぁぁぁぁーー!ご先祖様ぁ!そりゃ無いですわぁーー!)
『こちらこそ、そんなに驚かれると却って傷つくわっ!オッさん臭いとか、先祖に対するリスペクトの欠片も感じられないじゃないかっ!』
(なんだよ……文字だけの発信だったからお前の事を、なんか白いアゴ髭をしごきながら話す好々爺なイメージで見てたわ……くっそ……なんかムカつくわ……)
『お前……もう説明を打ち切るぞ』
(いやいやいや。分かった。俺が悪かった。以後イメージを改めるから許してくれ)
『本当に無知と言うのは恐ろしいな。私とショテルは首都レイドスに建国時からある《魔法ギルド》総本部の玄関入口の両脇に「一対の女神像」として全身像が置かれているんだぞ。崇拝の対象にすらなっている』
(そ……そうなんですか……。世間的と言うか「その筋の業界」では有名なんですね……)
『この際だから言っておくが、これまで出現している私を含めて十人の完全なる賢者の血脈の発現者のうち七人は女性だ。むしろ男性の方が少ない。しかし不完全な発現者は逆に22人のうち18人が男性だ』
いや……つうか髪と瞳の色がアレなんでしょ?女性としてどうなのよ……いや、言わないけどさ。
(え……そうなんだ。ちょっとなんか……発現者に対するイメージがガラっと変わったな。俺は少数派なのか……)
『まぁ、それも仕方無いかもしれないな。実際、第三紀に入ってから存在した発現者はさっきの完全発現者も、お前も含めて七人が全員男だからな。
お前の解放されている知識レベルでは無意識に「血脈保有者=男」と言う常識が形成されていたのかもしれない。もう気にするな』
(考えてみれば「リューン」って女性の名前でもありそうだもんね。俺が勝手に誤解してたのか)
『そうだな。お前の封印がこの先いつになったら全て解放されるか目下のところ不明だが、このままの人生であるならば私の名前と今出てきた《ショテル》、そして先程から何度も出てきている第二紀と第三紀の境目に出た《ヴェサリオ》。
この三人の先祖の名前だけは憶えておけ。それと月まで行った唯一の血脈関係者であるマルクスの名前も憶えておいてあげるといいな。発現者では無いが間違いなく血脈を救った男だ』
(あぁ、マルクス氏は男性なわけね。ちょっとホッとしたわ)
『結果的として私の啓示に従って短期間でラーと月を往復すると言う壮挙を成し遂げたからな。
彼の行動力と判断力が無ければ血脈は継承されず、今のお前も存在しないどころか人類そのものが絶滅していた可能性が高い。
彼が私の啓示を受け入れずに判断を誤り戦禍に呑み込まれていたらショテルも出現しなかったと思うとゾッとするわ。ではショテルの話に戻ろう』
……ヴェサリオって名前はなんか聞いた事ある気がするなぁ。
(そうだね。漆黒の魔女さんだっけ?)
『うむ。第二紀草創期と言う苦難の時代においてショテルはその生涯で数多くの業績と伝説を残したが、現代においても燦然と輝くその功績は「魔術を発明」した事だ』
(ん?あれ?リューンは魔導を作り出したんだよね?ショテルさんの魔術の発明って、そんなに大騒ぎになる事なの?)
『そうか。今のお前の知識レベルでは「魔術=触媒が必要」、「魔導=触媒は不要」でどうしても魔導の方が格上に見えてしまうかな』
(まぁ、そうだよね。結果として同じ現象を起こせる魔法であるならば、やっぱりどうしても魔導の方が格上と言うかハイレベルに見えるよね。使える人は今もエラい人なんでしょ?)
『確かにその考え方も間違っていない。しかし魔法世界全体の話で言うと、魔術と言うものがショテルに産み出された事によって魔法と言う存在の裾野を大きく広げて社会に浸透する事になったのだ。
結果としてその恩恵を受けた人の数で言うと魔術の方が圧倒的に多い。そして、功績で特筆されるべき点でショテル自身は「史上最強レベルの魔導師」だったと言う事なのさ』
(うん?え?ごめん。どう言う事?)
『随分前にも説明したが、賢者の血脈の記憶の継承と蓄積と言う特性上、血脈所有者の代が下れば下る程にその力は増していく。
例えば私とショテルで例を挙げると、私とショテルの間には六人の完全発現者と七人の不完全な賢者の知発現者を挟んでいる』
(……そうか!リューンが現役だった頃に比べてショテルさんはリューン自身も含めて14人分の研鑽の記憶が上積みされるのか?)
『そうだ。よく理解してくれたな。ショテルは私なんかよりも圧倒的に力の強い発現者なのだ。そんな彼女が自らは魔導師なのになぜ魔術など創り出す必要があった?
それはつまり彼女自身がこの世を去った後も、いつ出て来るかアテにならない発現者なんかでは無く人類の《対魔物》戦力として「魔法を行使出来る者」を増やそうと考えた結果なのだよ』
(そうか……。魔導はほんの一握りの限られた才能を持つ人じゃないと使えないんだったね。そのままじゃ急速に数を増やしながら進化して行く魔物に対して「多勢に無勢」なのか)
『その通りだ。彼女は魔導師としての地位や才能に胡坐をかく事無く、自らが居なくなった後の人類の為にその英知を捧げたのだ。
彼女の生涯を懸けた研究によって魔術は産み出され、それまで僅かな人々しか使う事の出来なかった「魔法と言う対魔物の切り札」を一枚増やしたのだよ』
(なるほどなぁ。そう聞くと偉大なご先祖様だよね)
『そうだな。各都市にある魔法ギルドの支部には私の像は置いて無くともショテルの像は必ずある。
それぐらいショテルは後世の魔法世界の人々にとって、教会が宣伝する神々よりも神格化されている』
『教会、特に《救世主教》の連中は彼女の名声に嫉妬したのか、その歴史の一時期に「黒は不吉な悪魔の色」などと明らかにショテルに対して誹謗するかのような教えを広めていたくらいだ』
(うへ……救世主教って、俺ですら知ってるメジャーな教団じゃないか。そんな大手の聖職者が他人を誹謗するのかよ)
『まぁ、その陳腐な教えは後々に非常に具合の悪い状況を生み出したので《異端》扱いされて「無かった事」にされたがな』
(漆黒だけに《黒歴史》になったと?《黒歴史》に?)
『……とにかく、ショテルは魔導とは違う新たな超自然現象発動の為の技術を模索し始めた。
最初に定めた目標としては変質した魔素をもっと活用しやすい物質に再構成する事であった』
(あれ?サラっと流された?)
『ショテルは私と自由に交信する能力も持っていた。彼女は産まれながらに魔素の変質を理解しており、その原因も大戦争で発生した超高エネルギーによるものである事も掴んでいた。そこで彼女が考えたのが、月を利用しての大気の再撹拌だった』
(え?月?なんで月?)
『ショテルは自らが持つその強大な力を月面に照射する事によって月と言う「ラーの衛星」の《公転軌道》をほんの僅かにズラしたのだ』
(え?何言ってんの?月でしょ?あの月だよね?)
俺は再び薄いカーテン越しに先程よりも高く昇っている欠けた月を指差した。
『そうだ。あの月だ。あの月にショテルは自らが出せる全ての力で変質した魔素を大気より高純度に集めて月に照射したのだ。
但し、今お前が実際に見てるように月への距離は恐ろしく遠い。大戦争の大量破壊兵器さえも月に対して迎撃可能な時間的余裕を与える事なく目標を破壊出来るような物が存在しなかった』
『その月に、極論すれば「たかが人間一人」であるショテルの力を届かせる為に、私が力を貸す事になった』
(あ、なんかさっき言ってた月への用事ってそれの事?)
『そうだ。私はショテルが行う照射に先駆けて月面の上空に向かい管理者の力を転用させてショテルの放出する変質した魔素を月面に転送したのだ』
(そ、そんな事出来るの?リューンは基本的に自分の死後は力を失ったんでしょう?)
『そうだ。ショテルは管理者としての私の「自身を任意に転送出来る能力」を利用して、私自身を《マーカー》とする事で言わば私に照射の中継をさせたのだ』
『私は自身をこの世界のあらゆる場所に転送出来る能力もそうだが、もう一つの特徴として不滅の体を持っているのだ。その不滅の体である私に別次元の出口を構築して極大量の変質した魔素をぶつけたのだ』
うーん。何かまた急に理解出来ない話になったな。
(……なんか原理もよく分からないけど、聞いた感じだとエラい乱暴なやり方だよね。つまり、リューンは何やってもどうせ死なないから次元の穴を体に開けてそこに魔素をぶっ込んだって事でしょう?)
『……お前の解釈こそ乱暴だが、話す内容はそれで概ね合っているな。ショテルは事が終わった後にちゃんと私に謝ってたぞ』
(いや、謝って済むなら憲兵隊は要らないわけで……)
『しかし、その方法が功を奏して月はほんの少しだけだが公転軌道を変えたのだ。月軌道は結局ラーの重力から脱するような影響を及ぼさずに僅かだが真円寄りの楕円軌道になったのだ』
(おぉ。凄いね。成功したんだね?)
『そうだな。ショテルは今まで誰も思いつかなかった……私ですら思いつかなかった方法で月をズラしたのだ』
『公転軌道の変わった月によって潮位の変動が大きくなり、ラーの大気成分は再び撹拌が始まった。
特に海洋部の潮流に変化が起き、気圧の配置、気象と気候の転倒など、平時であれば逆にそれが災厄になるんじゃないかと言う惑星規模の大変転が発生した』
『大戦争によって二つに割かれた超大陸の間に大量の海水が入り込み、最小幅200キロもの海峡が同時に3つ誕生したのもこの時だ』
(それ……大丈夫だったの?下手するとショテルさんが人類にトドメを刺すよね?)
俺はよく今でもこの世界が続いているなと感心した。
今リューンの話に出て来た海峡ってのは、俺のしょっぱい知識の中にある《エスター大陸》と《ロッカ大陸》の間にある北から順に《トル海峡》、《サンダナ海峡》、《ハシロダ海峡》の事を指していると思われる。
但し俺の知識の中ではその三海峡は神話の中に出て来る内容によると「古代の聖人様が海を割って注ぎ込んだ」みたいな成り立ちとされてて、まさかご先祖様がやってたとは思いもよらなかった。
『幸いにして海洋棲息の魔物の影響で海洋沿岸部に居住していた人々は内陸へ内陸へと逃亡移動していたし、地下シェルター跡を住居としていた者たちもそれ程影響を受けなかった』
『最も大きな影響を受けたのは、ショテル自身が拠点としていた、マルクスが地表に持ち込んだ月面居住施設群だったのだが、月面に長期間居住を目指した住居施設の耐候性は200年が経過しても堅牢性を保持し続け、ショテルの防災措置も機能して地表の被害は最小限に抑えられたのだよ』
(へぇ……ショテルさんは、それすら予測した上で実行したんだね。凄いなぁ。俺だったら自分だけで引き籠ってたかもな)
『ショテルは当初、ラーの大気を再度撹拌する事を最終目的に月軌道変更を画したのだが……思わぬ副産物が発生した』
(え?それはショテルさんも予測してなかったと言う事なの?)
『そうだ。ショテルが私の体を介して月に叩きつけた魔素が月面上で一度霧散したのだがな……ショテルはそのまま宇宙空間に吸収されるかと思っていたそうで、監視を行っていなかった』
(ああ、そのまま壮大な粗大ゴミになる予定だったのね)
『魔素は吸収されるどころか、ラーとは違って太陽からの紫外線や宇宙線を浴びて再度変質を始めていた。最初に気付いたのは私だった』
(なんか、物質的にやたらと不安定なものなんだね。でも、最初にショテルさんが月にぶつけた時だってラーの大気に存在していた全ての量ではなかったんでしょう?)
『まぁそうだな。後でショテル自身が測定していたけれどショテルが私を介して月面に送った変質した魔素は全体の三割弱だったみたいだな』
『その三割弱が全てとは言わないけれど、月面で変質して再度高密度に集合し始めた事に私が気付いたのだ。私はすぐにそれをショテルに伝えたのだが、《再変質した魔素》の扱いに当初はショテルも慎重だった』
(まぁ、元は魔物を発生させた危険物だもんな。そりゃ扱いに及び腰にもなるさ)
『私は再度月面に飛んで再変質した魔素を調べた。力を持たない私が調べても高が知れてるとは思っていたのだが、実際に調べているうちに、これは私が最初に発見した魔素に極めて近い分子モデルである事が分かったのだ』
(え。どう言う事?何で分かったの?)
『以前、私が残した《魔素の起源》に関する仮説を信じて研究を細々と引き継いでいた連中が、魔素の起源と思わしき天体由来物質がラーと衝突したと言う場所を特定したと言う話をしただろう?』
(あぁ、そんな話があったね。隕石衝突の話でしょ?)
『そうだ。その時に調べた地質成分に含まれていた分子が再変質した魔素とそっくりだったのだ。私も自分がやり残していた研究だったからな。当時その調査結果に注目していた。それで気付く事が出来た』
(なんと……何がどこで役に立つか分からんよね。そう言うのって)
『ショテルは生前の私の記憶は引き継いでいたが、その地質調査は私の死後の話だったので研究の存在は知っていたようだが、調査結果の詳細までは知らなかったらしい。
ショテルは私の話を聞いて、月面の魔素を再度ラーに還元する事を決断した』
(えっ……って事はまさか……)
『そうだ。私は三度月面へ飛び、彼女の為に別次元ゲートのマーカーになったのだ』
(……いや、アレだよね。それって前回も思ったけど、お前自身が転送魔法みたいなものの出口になるわけだよね?)
『いや違う。この時は入口だ。出口は前回だけだ。そこは間違うなよ』
(あ……ごめん。……いや、違うだろ。そう言う問題じゃないんだよな。そもそもお前は肉体を持ってるわけじゃないよな?
だって持ってたら、今こうして俺と文通なんかしないで姿を現して直接話せばいいんだから)
『今の状態については、時間があればあとで話すが私はそもそも肉体とは言わなくとも実体に近いものは持っている。本来であればお前とも実体を使って音声で会話をしたいし、現にお前の母親とはそうしていた』
(え。そうなの?わざわざこんな面倒臭い手段を用いざるを得ないと言う事は特殊な状況下なんだな?まぁいい。後で聞こう)
『話を続けると、この月面から還元させた《再変質した魔素》はラーの大気と撹拌された事で魔素とは違う元素が誕生した。それが《マナ》だ』
(あ、俺もそれは知ってたぞ。マナと魔素が魔法で使われると言う知識を持ってる。俺が元々持ってた知識では魔素よりもマナの方が魔法使いの皆さんにとっては身近なもので、魔素は寧ろマナのオマケみたいな扱いだった)
『うーん。ちょっと違うな。まぁ今は話を進めよう。お前の持ってる知識の謎はすぐに解ける』
(なるほど。どうも俺の知識レベルはそれ程高くないな。一般的な平民の人よりは上みたいだけど……)
『そうだな。もしかしたら特定の誰かの知識が受け継がれているのかもしれない。例えばお前を産み落とした母とかな。
父親である可能性もあるが……先程から断片的に聞くお前との会話からだと父親とも違うだろうな。多分』
(え……?お前は俺の父親を知ってるのか?ユーキさんは俺の父親の事は良く思ってなかったみたいだぞ?)
『あぁ、さっきの様子だとそうだろうな。まぁそれは仕方がないと思う』
(やっぱり知ってるんだな?……考えてみれば当たり前か。お前が俺の母親の相手を知ってるのは不思議じゃない)
『まぁ、その事も後で話そう。このまま話して行くといずれ出て来る話題だ。但し今から言っておくぞ。父親の話を聞いたお前は恐らくかなりの確率で激高する。これは昼にも言ったよな?あれは父親の話なんだ』
(なんだよ。結局そうなのかよ。俺の父親は息子の俺が聞いてもクズなのか)
『だから、出来るだけ落ち着いて聞いて欲しいんだ。昼にも体験しただろうが、お前は今怒りに我を忘れると何が起こるか私にすら見当も付かない。
お前は自分が封印で不安定な状態になっている完全なる賢者の血脈発現者である事を忘れないでくれ』
(あぁ、確かにあの時はこの右目が焼けるように熱くなったな。考えてみるとあの先に行くのは自分でも恐ろしい。さっきの話みたいに暴走させるとダイレムが吹っ飛ぶ可能性もあるんだろ?だから俺も精々気を付けるよ)
『すまんな。私の提案を受け入れてくれて助かる』
(いや、確かに俺は今日の昼に覚醒して、それからお前の話を聞かせてもらっている事で多分少しだけ成長しているんだと思う。あの時は自分が何者なのかも、この右目がどんなものなのかも分からず不安だったのだ。
だから今夜お前からまだまだ色々聞けると思うけど俺は決してこの場で怒り狂ったりしない。怒りを我慢する事で、もう少しだけ成長出来るかもしれないんだ)
『お前は……いや。今は語るまい。私はお前の封印の顛末を知っている。今は制約のせいでお前に話す事が出来ない。
でも信じて欲しい。封印を施した者にも理由があったんだ。だから一方的に恨むような事はしないでくれ』
(そうか。わかった。さぁ今は話を続けてくれ。時が惜しいんだ)
『わかった。マナの話から続けよう。月から還元した新元素にショテルはマナと言う物質名を与えた』
『マナは魔素よりも制御がしやすかった。ショテルは残念ながら私が最初に発見した魔素の事は知識としてだけしか知らず、今の変質した魔素しか知らない世代だから、元の魔素とこのマナを自身で比較する事は出来ないが、変質した魔素よりは遥かに扱いやすいと言う特性を突き止めた。
この特性を生かして魔法使用の難易度を下げようと考えたわけだ。但しマナにも欠点はあった』
(え?欠点って何?)
『マナは魔素よりも魔法使用時の《投影力》が低いのだそうだ。ショテルは元の魔素を知らない。私は逆に変質した魔素とマナを知らない。マナの評価はショテルの感覚を信用するしかなかった』
(投影力?そういえば何かさっき魔導が発動する為の仕組みを説明するときに出て来たね。イメージだっけ?それを具現化するような……)
『その通りだ。お前は本質的にはやはり賢いな。つまり投影力が低いと魔法を使用して発動させた際の結果に対する効果、まぁ大雑把に言うと威力が落ちるのだ』
(あぁ、そう言う事か。制御はしやすいけど威力が落ちるって事ね。初心者向けな感じ?)
『あぁ、その表現が分かりやすいな。そうだ。マナを使用して魔法を使う事で全体的な難易度が落とせるんだ。
つまりこれでショテルが目指す「魔導の使い手を増やせる」と言う当初の目的に大きく近付いたのだ』
(へぇ。じゃ結果的に良かったんじゃない。その投影力の弱さと言うのは制御に使うマナの量そのものを増やせばある程度はカバー出来るんでしょう?)
『いや、実はそう簡単な事ではない。魔導を使う事が出来る魔導師と当時の他の人々、つまり「魔導が使えない人々」との一番の違いと言うか《壁》は「魔素やマナを集めて制御する」と言う入口部分が非常に難しい事なんだ』
『そして更にその制御された魔素やマナの組成を変える、つまり投影を可能な状態に術者自身で変質させないといけない。こんな芸当は普通の人じゃ到底無理な事なんだ』
(そうなのか……。確かに聞くだけで大変そうだ)
『そこでショテルは画期的な方法を思い付いた。まず「集めて制御」の部分をマナで実施する為の《教本》を作り、主な鍛錬ポイントをこの部分に絞ったのだ』
『そして変質させる部分に触媒を使用する事で「集めて制御」が可能であれば、後は発動させたい事象を発生させる為の触媒で「集めて制御したマナ」を変質させてからの投影と言う手順を自動化させたわけだ』
(うん?ちょっと難しい話になったな。でもこれでかなり難易度が落ちたって事なんでしょう?)
『もちろんそうだ。少し具体的な手順で説明する』
『例として「視界に入るある場所に火球を飛ばしたい」としよう。まずは準備の為に触媒として《アカケムリタケ》を用意する。
触媒を用意する位置は厳密には決まっていないが、概ね術者の手が届く範囲で普通はカバンとか「ローブの隠し」などのポケットなどかな』
『但し、《触媒反応》は《ミスリル》以外の金属類の近くで鈍化するので金属防具等を身に付けていると威力が落ちたり失敗したりするな』
『触媒を用意したら「マナの集積と制御」を開始する。ここは鍛錬の必要な部分であるからそこは教本を参考にひたすら鍛錬するわけだが、魔導師でさえここで詠唱を使ったり杖を振ったりして自分の制御に対して「目当て」を付けるくらいだから、魔術でも同様に制御の補助を加える事は可能だ』
(杖でどうするの?)
『発現者である為に不要だった私は実際に使った事が無かったので、合っているかは分からないが、今まで使ってる者を観察していると、杖の先端にマナを集めるように精神を集中して、杖の先端の動きを目で追いながらマナを操作するようだぞ』
(ああ、「目当て」ってそう言う事か)
『まぁセンスの問題なのでどうしても無理と言う人は魔術も使えないと言う事なんだけどな』
『後は「マナの集積と制御」に全力を注ぎ、上手く制御して形質が整った状態になると、自動的にアカケムリタケが「形質が整ったマナ」に反応するのでマナが変質して火球に変わる』
『後はそれを飛ばしたい場所に「火球がそこに飛んで行く」イメージを描けば勝手に投影されて作られた火球が飛んで行くと言う手順だな』
『ここでも杖で目標を指し示して目当てにする者は多いな』
『まぁ最初の制御で失敗すると発動が失敗したり、想定よりもしょっぱい火球が出来て飛んで行くと言うこっ恥ずかしい状況になるけどな』
(恥かくだけならまだしも、自爆とかイヤだなぁ……)
『アカケムリタケを触媒として使ってる時点で、成功して出来上がるのは火球である事は確定しているから後は制御の成功率を上げるとか、触媒の量を調整するとか、そう言う独自の鍛錬と工夫が必要だな』
(確かにさっき聞いた魔導よりかは難易度が下がってるように聞こえるけど俺の知識の中では魔術を使える人だってそれ程多くないけど?)
『そうだ。確かに魔術も使う人を選ぶ。しかし魔導よりは全然マシなわけだ。
事実、今この時代に《魔導師》はいいとこ五人くらいだが、《魔術師》と呼ばれる人や同じ原理で物質調合を行う《錬金術師》は数百人存在する』
『まぁそのうち魔術師は200人程度なんだが……錬金術師はどこの都市にも何人かは居るそれ程特別希少な職業ではないはずだ』
『更に言うと魔導師は恐らく現時点で他に居る可能性が限りなく低いが、魔術師や錬金術師は探せばまだまだ素質を持った人が居るかもしれないのだ』
『私が今まで世界を見守ってきた経験で話すと、賢者の知の発現者が教師役になる事で魔術師が誕生する可能性は飛躍的に上昇する。何しろショテルの記憶を引き継いでいるわけだからな。
お前が生まれるずっと前に賢者の知のみの不完全発現者が出て来たが、彼は不完全発現者であるにもかかわらず魔導師として生涯に11人の魔術師を育てた。これは一人の魔導師が育てた人数としては破格の数字だ』
『何しろ魔導師自身は触媒を扱う事が無いのと才能による直感的な魔素やマナの制御を行うので通常は魔術の鍛錬等に対する造詣が浅い。魔術師を育てるのは同じ魔術師の方が優れていると言うのが通説だ』
(おお。そうなの?ところで錬金術師と言う人はこのダイレムにもいるの?田舎みたいだけどここ)
『居るんじゃないか?錬金術師の作る薬品や物質は高価なものが多いから、この店のような一般的な薬屋とは商売でそれ程被らないはずだ』
『事実、錬金術が使えないローレン・ランドは評判の薬剤師としてそれなりに暮らしに余裕があったはずだぞ?』
『お前の着ている服だってそこそこの品質だしな。魔術が生まれた事によって、それまでどこで何をしているのか分からないちょっと怖い存在だった魔導が、お金を積めば仕事を頼めると言う魔術や錬金術といった《技術》として社会に広く認識されるようになったんだからな』
(へぇ。なるほどなぁ。そういや俺は結構いい服着てるよな。今日の事だから「よそ行き」である可能性もあるけど。祖父の服装もみすぼらしいものじゃなかった)
『ショテルの後半生は自分のコミュニティを守りながら魔術に必要な触媒の特定や投影結果の実験に費やされた。そして彼女は魔導師として初めて16人の魔術師を弟子として育てたのだ』
『私はもうこのような存在だから詳細は分からないけれど現代の魔術や錬金術においても使用される触媒の大半は、今から約10000年前のショテルが突き止めた物質がそのまま使われているはずだ。
彼女が著した《魔術教本》は現代でも、ほぼ全文そのままに魔術師の基礎鍛錬に使用されているようだぞ。
彼女が心血を注いで育てた16人の高弟が荒廃した第二紀の世界において各地に散らばって更に魔術を広めながら人材の養成に努めたのだ。ショテルが生涯を費やして魔術を興隆させたからこそ、人類は以後数千年間の完全発現者不在の世界で魔物に抵抗し続けられたのだよ。
自分の死後に対する予感は当たってたわけだ』
『だからこそ今でもショテルは魔法世界では神格化されて崇拝されているのだ。お前が嫌いな神だが、彼女は間違いなく人類を救ったのだ』
(……そうだな。俺は確かに神を信じないが、こう言う本当に人々を救った人なら神として定義されてもいいかもな)
『これで魔法に関する話は終わりだ。後は……いよいよあれかな。お前の今の境遇に直結する話をするかな』
ついにリューンの発する文字に「お前の境遇」と言う文字が出てきた。
【登場人物紹介】※作中で名前が判明している者のみ
ルゥテウス・ランド
主人公。5歳。右目が不自由な幼児。近所の人々には《鈍い子》として愛されているがその正体は史上10人目となる《賢者の血脈の完全なる発現者》。しかし現在は何者に能力の大半を《封印》されている。
リューン
主人公の右目側に謎の技術で文字を書き込んで来る者。約33000年前に史上初めて《賢者の血脈の完全なる発現者》となる。ルゥテウスの遠い先祖で《始祖》と呼ばれる。
マルクス
歴代の《血脈の保有者》の一人。《第一紀》末の頃の人。《大戦争》を月への移住で回避して血脈を救った熱い男。
ショテル
マルクスの来孫(5代後)で《賢者の血脈の完全なる発現者》。《第二紀》の人類の苦難を救う為に《魔術》を発明した。現代においては《漆黒の魔女》として魔法世界では崇拝対象に。
ヴェサリオ
《第二紀》末に出現した《賢者の血脈の完全なる発現者》。