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総合評価B 偉志倭人伝 ―王府の侍女と遠国の姫君―

作品名:偉志倭人伝 ―王府の侍女と遠国の姫君―

 作者様:戸谷真子評価コース:スタンダード

 評価項目

 キャラクター造形力 B


 登場人物が多く、また、作者様が人物紹介を作ってくれている為、特に印象の強かった人物たちの読み手として受けた印象を書いておきます。あくまで私が受けた印象なので、ここは評価というよりも感想に近いです。


 紀紅葉 き・こうよう まっすぐですね。自分が正しいと思う事をやる。芯がしっかりとしています。終盤に行くほど影が薄れていき語り手としての立ち位置になってしまっている気がします。


 楊慶 よう・けい 紅葉が好きすぎる人。有能。なんで鍛冶職人なんてやっていたのだろうというレベルで有能。しかしその経験もしっかりと生かされているエピソードがある為何も言えない。楊慶が主人公のストーリーも見てみたい。


 恭親王 きょうしんのう 病弱で友人思い。ちょっと弱い一面もあるけれどそこをカバーしてくれる周りの人間にも恵まれている。カリスマ。


 内親王 ないしんのう 別名、翠子。可愛い。早く恭親王とくっついてください。めっちゃいい人。


 蔡暁毅 さい・ぎょうき 優秀。芯が凄くしっかりとしている人。この人が活躍する場面を見てみたい。


 李勇基 り・ゆうき 馬鹿正直な田舎者。嫌いになれない。歌が上手い。


 桃花 とうか 最優秀賞。自己犠牲の権化です。


 印象度B

 全体を通して悪くはないですが、各登場人物の見せ場をつくり、そこの表現による盛り上げ方を身に着けたらとても作品の質が上がると思いました。


 共感度B-

 キャラクター造形力の場所にも書きましたが、主人公が徐々に影が薄くなっているように感じます。


 文章力B

 丁寧な文章と世界観に合った表現、それを更に補完するだけの語彙力があります。しかし、場面を大きく盛り上げる演出や表現が若干苦手な印象を受けました。起きている出来事的にはもっと物語に波を感じるはずなのに、あまり障害がなくラストまで一直線に進んでしまった印象があります。盛り上げ時の表現と、危機感を演出する際の表現を重点的に学んでみるのも良いかもしれません。

  

 構成力B-

 前述した表現に関する影響の所為もあるかもしれませんが、起承転結の“転”がかなり弱いように思います。

 あとは、話のメインが主人公になく、恭親王と内親王がメインになっていることが主人公の影を薄くさせる一因になってしまっているように思います。恭親王たちの結婚は割と盛大に描写したのに主人公のものは文字数も少なくあっさりした印象を受けました。


 設定力B+

 基本的には素晴らしいです。若干気になったのはこのジャンルに詳しくない方に対する情報の使い方です。気になった点の方に用語解説に関して記載しましたのでそちらをご覧ください。


 人物紹介にそれぞれの別名が欲しいです。登場人物が多い、名前に使われているのが慣れない漢字が多い等の要素が組み合わさって読み手の把握が難しくなっています。人物紹介でそれらを補完して上げると良くなると思います。

 

 独創力B

 WEB小説としては書かれることの少ないジャンル、という点では評価が高いような気もしますが、このジャンルとして見たときに強烈なオリジナル要素があるか?となると、恐らくそうとは言えないと思います。ただ、この世界感を崩さずにオリジナル要素を入れるというのも難易度が高いため、もし何かを追加していきたいと考えた場合は慎重に考えた方が良いと思います。


 総合評価:B



 良い点


 楊慶のまっすぐで行動力のあるキャラクター性。

 在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝。比翼連理の出典基となる漢詩ですね。こういうものがサラっと出てくると世界観の補強に役立つのでとても良いと思いました。


 互いを想いあう2人が恋の歌を送りあうのいうのは世界観としても良いですし、見ていて微笑ましくもあり、つい応援したくなります。

 驚くほど丁寧に作られています。桃花の行動理由など、本当によく考えられていると思いました。

 気になったこと


 1話 「(お嫁に行くかもしれないのが寂しいのかな)」

 →この後も結構使われているセリフ「」の中にモノローグ()が入れられている表現方法、モノローグだけで問題がないと思われます。

 1話 紅葉が1話でオチるのは読み手からすると急展開に思えてしまうかもしれません。

 4話 からだを揺らし 変換忘れ? 体or身体or躰 舞台設定的には躰があっているような気もします。これ以降も変換をしていないので作者様の拘りかもしれません。

 6話 たたんだのち 変換忘れ? 畳んだ後に ここは特に理由がなければ変換した方が読みやすいように思います。

 7話 ふむ、とうなり、 とうなりが読点に挟まれていることで、4文字で一つの言葉に見えてしまうため、唸りと変換した方が良いと思います。

 12話 拱手 奴婢 敲いた ルビを入れた方が良いかもしれません。

 世界観に合っているが一般的には使われていない言葉や物に関して。先程書いた、拱手 奴婢などもそうですが、このジャンルに慣れ親しんでいない人からしたら意味が分からない為にその場の想像が上手くできていないという事態が頻発していることが予想されます。WEB小説としての形態では各話で前書きと後書きが書けるというものがあると私は考えていて、そこを利用してこのジャンルを読んだことのない人向けに用語解説を入れてみるとより多くの人に読まれやすくなるのかもしれません。


 17話 佩玉 ルビが欲しいです。

 19話 回想から現在へ場面が切り替わる際、改行を少し多めに入れて読み手に分かりやすくして見るのも良いかもしれません。

 19話 袍 ルビが欲しいです。



 事件の掘り下げができていない。運ばれてくる料理の味がめちゃくちゃであったことや、新兵しか配置されていなかったこと、12話の大監の事件など、犯人がそのままで何の処罰もされていない為、出来事としても厚みがないという印象になっているように思います。感覚的に言うと異世界もので初めて冒険者ギルドに行ったときに絡まれるような、ちょっとしたトラブルというレベルに落ち着いてしまっていて物語に対して波を作ることに失敗してしまっているように感じます。


 28話 伽羅 瓦葺 褥 ルビが欲しいです。

 29話 粧った ルビが欲しいです

 30話 「紅葉、お願い。どうしてもいま、この風景を見ておきたい……」

 誰のセリフなのかが分からない為、地の文での保管が欲しいと思います。

 32話  きっとこれから門から からという表現が短期間で連続してしまっています。若干の違和感に繋がるので この先、門からは 等、別の表現に変えてもいいのかもしれません。

 33話 「思思、ひとを好きになっても愚かになってはいけないわ。嘘をついたり、ものを盗るなんてもってのほかよ。どうか、自分を高めていけるような恋をなさってね」

 最初の一文と次の一文の間に接続詞が欲しいです。でも しかし だけど 等。

 33話 羅貴妃という、位の高い人間から贈られたお礼の品を即座に溶かすという判断をしたのは違和感がありました。羅貴妃からの手紙等を同封しておいて、さり気無く許可を与えておくのもアリな気がします。※直接的な表現で許可を与えてしまうと政治的にもまずそうなのであくまでさりげなくレベル。 

 41話  菊花ははい、と礼をし 地の文の途中ですが、「はい」と実際に行っているものには「」をつけることで、直前の“は”と“はい”を分離させ視覚的にも良くなると思います。

 43話 美しいとひとにも言われるようになりました。 美しい人とも? 一度表現を見直してみても良いかもしれません。現状だと 美しい人に何かを言われたようになっているように思います。

 44話 質 誤字? 室?



 総評

 非常に丁寧で、このジャンルが好きなのだと読み手に伝わってきてとても好感が持てました。

 この作品において特筆すべきは情報量の多さです。この世界感を作品として作り上げ、それを完結まで崩さずにいるために一体どれだけの労力を使って情報を集めたのか……感嘆に値します。


 そして、読み手に取って恐らく一番ネックになるのも情報量の多さです。このジャンルを普段読んでいる人間からしたらともかく、慣れていない人間からすると読みなれない登場人物の名前、またその別名、聞きなれない道具の読み難い漢字。役職。ここをどう上手くフォローするかで作品としての質が変わってくると思います。


 作者様にヒアリングした、この作品のテーマ、『幸せの形は人それぞれ』に関して。

 良く描けていると思います。楊慶、恭親王、桂妃、桃花辺りが顕著ですね。自然な形で作品に取り込めていると思います。

 

 最後に、普段あまりこういうジャンルに触れる機会のない私にとって、とても多くの物を学ばせていただきました。ジャンルとしては普段触れていないので正直苦手な部類で、いろいろと調べながら読んでいるうちに、かなり長いお時間を頂いてしまったこと、ここにお詫びいたします。今回はこの作品を読ませていただき、ありがとうございました。




 以下、作者様コメント



 初めまして、戸谷真子です。

『偉志倭人伝―王府の侍女と遠国の姫君― 』は、わたしが初めて書いた長編小説です。


 中華時代劇モノ(漫画、小説、映画、舞台などなど)がとにかく好きで、溢れる愛を抑えきれず出来上がってしまったものです。


 自分の頭にある中華風箱庭の中には色々なひとが住んでいて、彼らの「幸せとはなにか」という悩みや生き方を、主人公の街娘・紅葉こうようの視点から書き表しました。情熱のままに。


 それゆえ、メモリアさんに書き上げたばかりの十三万字を下読みして頂いた段階では、「袍」「腰牌」「佩玉」……といったぐあいにルビがほとんどなく、さらに説明のための注釈もなく、読む方に優しくない書き方になっていました。箱庭の中の生活をそのまま書いただけだったのです。


 言うなれば他の方に読んで頂くという視点が思いっきり欠けていました。中華モノに触れたことがない方が「読めん! プラウザバック!」となる心理がわかっていなかったのです。


 幸いメモリアさんに読んで頂く機会を得て、自分の小説に足りないもの、読者に優しくない点を教えていただき、それと向き合うことができました。


 時間はかかりましたが加筆修正を進め、今ではなんとか、一通り改善できたのではないかと思っております。(骨組みから改稿するのは完結作をいくつか作り、作家としての表現力があがってからにしようと思っているので、もちろん至らない部分もあるのですが……)


 すると、もう完結しているのに、一気読みしてくださる方が増えてきました。ユニーク数のわりにPVが増え、プラウザバック率が減ったのが目に見えて分かるようになりました。


 メモリアさんには褒めるの禁止だと言われているのですが、言わせてください。メモリアさんすごい。



 最後になりましたが、上記『偉志倭人伝』はシリーズ二作目を連載中です。一作目と二作目を読み比べて「どれどれ、ちゃんと読みやすくなってるかな?」という視点で見ていただくのも面白いかと思います(宣伝)


 少しでも「中華モノ、ええやん」と思って下さる方が増えることを願って。


 それでは!




 ↑ここまでが客観的評価と作者様コメント

 ↓ここからが主観的感想等



 この作品は、非常に下読みの作業に時間がかかったのをよく覚えております。


 というのも、私が中華物を普段読まないので、中華物によく登場する言葉の意味が分からず、一つ一つグーグル先生に頼りながら読み進めていったからなのですが、私が初めて本格中華物を読んだからこそ、見えてきた改善点もあって、とても良かったと思います。単純に私の勉強にもなりました。


 この作品に対しては、評価シートの方でかなり詳細に語っていて、今、追加で語るとしたらこれくらいです。


 

 桃花が報われるストーリーをください!!!!!



 いや、本当にいい子なんですよこの子。他人の為に自身のすべてを捧げる覚悟がある子で、こういう子ほど報われてほしいと心の底から願います。

 


 いや、ほんとに!!!


 今回はここまで。またね。

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