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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

サイバーパンクっぽい話を書こうと思ったが、単なる陰謀的な何かになっただけというお話 2

作者: よぎそーと

「まったく……」

 面倒な事になっていた。

「あっちの方に人が集まってるってよ」

「どうする?」

「どうするってもなあ……」

 誰もが暗い顔をしていた。

 緊張してるともいう。

 何にしろ、安穏とはしていない。

「まずいな」

 それがここにいる者達に共通する思いだった。



 彼等の住んでる地域は柄の悪いところである。

 お世辞にも品行方正とは言い難い。

 社会の底辺層や貧困層が集まってるところだった。

 様々な犯罪や事件がよく起こる。

 暴動だって珍しくない。

 非合法品も流通している。

 それを目当てにやってくる者もいる。

 どこかで誰かが常に死に、その分どこかの誰かが成り上がる。

 まともな人間はとっくにこの場所から離れている。

 それでも没落した人間が居場所を求めてここに流れ込んでくる。

 そんなこんなで、決して安定してない。

 犯罪多発地帯と呼ばれて久しい。



 そんな場所であっても、最低限の治安はある。

 危険な地域だからと言って、暴力に何の抵抗も対抗もしないという事は無い。

 住んでる者達はそれぞれまとまって団結し、自分達の身を守ろうとする。

 その規模は様々だが、いくつかの集団にまとまっている。

 手っ取り早く言うならば、いわゆる町内会に近いものであった。

 組織というよりは生活共同体に近い。

 いずれも自衛のために隣近所と手を取り合っている。

 この場所で生きていくためにはそうするしかないのだ。



 そんな者達が、周囲で起こってる変化に危機感を抱いていた。

 最近、勢力を増してきた集団がある。

 それが周囲を制圧していっているという。

 この近隣ではさほど珍しくもない。

 だからといって、それを許容するわけにもいかないが。

 巻き込まれたらただではすまないのだから。



「どうする?」

 対策や対応について考える。

「どうするって言っても」

「とりあえず様子を見るしか……」

「そんな事してる間に襲われたらどうするんだ」

「それは分かってる。

 けど、どうすりゃいいんだ」

 有効な手段は思いつかない。

 襲ってくるのだから撃退するしかないのだが。

 問題はそれをどうやって行うのかである。

「どうも、連中かなりの武器を持ってるみたいだぞ」

「ああ、襲われた地域から逃げてきた連中が言ってたな」

「銃もかなり持ってたらしい」

 それが気がかりだった。

 銃器の所持そのものは珍しくはない。

 しかし、それが大量にというのが問題だった。

 治安が悪化し、様々な非合法品が出回る地域であるが、銃器の類がそうそう出回るわけではない。

 だが、話を聞くに、問題の連中はかなりの銃器を所有してるらしかった。

 どこからそれだけ調達したのか?

 調達するための資金はどうしたのか?

 気になる所ではある。

 だが、その出所を追及してるほどの暇もない。

「どうにかするしかないか」

 集まってる者達は決断するしかなかった。



「それじゃ、これが注文の品です」

 そういって売人は注文されたものを拡げていく。

 拳銃が30丁余り。

 そして、弾丸が合わせて500発。

 この集団が有り金をかき集めて購入したものである。

 注文通りの数が揃っている。

 当然ながら質の方の保障はない。

 いずれも正規品ではなく密造品であるのだから。

 まともに動いて暴発しなければ良い、という程度の粗悪品である。

 だが、こんな所に出回るような銃器はその程度の品質がほとんどだった。

 治安が大分落ちてるとはいえ、銃器が簡単に流通するほどではない。

 また、治安の悪化に伴って需要もかなり大きくなっている。

 質の悪い密造銃であっても、それを入手するのは難しい。

 こうして数を揃える事が出来ただけでも御の字と言ったところであった。

 そんな銃を見て、代金を売人に渡す。

 まいど、と言って売人はそれを受け取ってその場を後にした。

 残った者達は銃と弾丸に手を伸ばしていく。

 とにもかくにも、こうして対抗する手段は手に入れた。



 それから程なくして、衝突が発生する。

 周辺に勢力を拡大していた者達がやってきたのだ。

 それを迎撃する事で双方血を流す事になった。

 どちらもそれなりの数の銃器を手にしている。

 その為、死傷者の数はかなりのものになった。

 だが、この衝突で勢力を削がれたせいか、周辺を制圧していた者達の動きも止まった。

 犠牲者を出しながらも、不穏な動きは止まる事になった。

 それも一時的な事で、いずれまた誰かが何かをやらかすだろう。

 しかし、それまでは少しだけ平穏な時間が続くはずである。

 それがどれだけ続くかは分からないが。



「──以上になります」

 とある企業の一室。

 事の次第を上司に報告に来ていた社員は、そこで言葉を一度切る。

「これによる利益は報告書に書いた通りになります。

 若干、予定ほど売り上げが出ませんでしたが」

「まあ、ここ最近色々と出費させたからな」

 そう言って上司は方をすくめる。

「必要だからといって、そうそう金を出せるわけでもないだろ」

「ええ。

 次は何らかのテコ入れが必要になるかと」

「まあ、人数調整が出来てるならそれでいい。

 引き続き頑張ってくれ」

「はい、期待に応えるよう努力します」

 そう言って社員は頭を下げる。



 犯罪多発地帯はそのままではなかなか商売にならない。

 住んでる者のほとんどが低所得層であり、それほど購買力がないのが大きい。

 だが、そんな地域であっても切羽詰まればなけなしの金をはたいて必要な物を買う。

 そういう状況を作り出すために、企業もそれなりに働きかけている。

 一番手軽なのは、武器を与えて周囲に戦争をふっかけさせる事である。

 そうする事で武器の売買が活発になる。

 そうさせるために、攻め込む側にそれなりの投資も必要にはなる。

 武器をある程度融通したり、必要な理由を与えたり。

 それだけの手間をかける必要はある。

 しかし、そうする事で武器の需要が高まり、売り上げが上がる事になる。

 最初に武器を与えるのはその為の投資である。

 この投資額以上に武器を売る事が出来れば営業は成功となる。

 だが、ここ最近の打ち上げ推移を見るに、それも難しくなりつつある。

 やはり購買力が低下しており、どうしてもこれ以上の販売は難しい。

 必要であるのは分かっていても、買うための資金がないのだ。

 衝突が続いて人が減り、その分収入も減ってもいるのだろう。

 となれば、暫くは衝突を防ぎ、購買力を回復させるしかない。

 売り上げを増やす事は出来なくなるが、こればかりは仕方が無い。

 無理して全滅でもしたら、それはそれで問題だ。

 一時的な利益の為に購買層を失っては意味が無い。

 幸い、周辺に攻め込んでた連中も勢力を減退させ、下手に動けなくなっている。

 人がこれ以上減って、購買力が無くなる可能性は下がっている。

 あとは時間をかけて商品を提供していけば良い。

 その為にも、社員は今後の商品展開を考えていく。

 購買に必要な環境作りも含めて。



 一方で上司はもっと別の視点も含めて考えていた。

 犯罪多発地帯の住人は大半が低所得層である。

 同時に、それらは企業で働く作業員がほとんどである。

 それらが減ってしまうと仕事が回らなくなる危険がある。

 しかし、多ければ多いでこれまた問題だった。



 まず、勤続年数が長い者が多くなること。

 実務経験が長くなれば、労働力としてはありがたい。

 しかし、その分給料も多く払う必要がある。

 企業としてはこの部分をどうにかしたいところではあった。

 仕事に慣れてる者は必要だが、それが多くいても問題である。

 やってる作業自体はそれほど難しいものではなく、一定の水準にまで到達したら誰でも出来るものだ。

 実際、半年から一年ほど仕事をすれば、仕事は出来るようになる。

 それ以上の技量や知識というものは必要がない。

 そういった業務で必要以上に長いしてる人間がいても困るだけである。

 一定数の熟練者は必要だが、それ以上は不要である。

 そこをどうにか調整する必要があった。

 その為にこうした問題を発生させていた。



 また、労働組合の力を削ぐ為にも、規模を一定におさえねばならない。

 特に経営方針に反対する者達は出来るだけ減らさねばならない。

 経営や運営において、そうした者達は不要である。

 だからこそ衝突や暴動は、そうした者達が多い地域で優先的に起こしてもいた。



 必要な人材は、そうした争いに巻き込まないように隔離してもいる。

 給与を多めに与え、出来るだけ出世させて危険な場所から脱出させる。

 好んで危険地帯に定着する者はまずいない。

 余裕が出来ればすぐにでもそこから出ていこうという者がほとんどだ。

 なので、企業が求める人材はすぐに引っ越していく。

 自然と必要な人材を安全な場所に誘導して確保する事も出来るようになる。



 何より、犯罪多発地帯で衝突を発生させれば、それらが他に拡大する事もない。

 小競り合いでお互いに勢力を削り合ってくれれば、外に出て来るだけの体力も無くなる。

 潰し合いは一定の地域で収束し、周辺の安全につながる。

 その為にもある程度の争乱は必要だった。



 そうした観点から上司は、もう少し騒ぎを起こしても良いのでは、と考えていた。

 売り上げは期待出来ないが、削らねばならない人数はまだまだ多い。

 このままでは人件費の増大が問題になりかねない。

 それを抑制する事が出来れば、売り上げ上昇と同等の効果が得られる。

 売り上げが同じでも、経費が下がればその分利益は増える。

 人手が減った分だけ業務を動かすのが難しくはなるが。

 だが、現状で業務が多少滞るくらいは大した問題ではない。

 それほど大きな停滞が発生する事は無いのだから。

 最低限必要なだけ業務を動かすだけの人材は既に確保されている。

(やってみるか。

 いや、やらねばならんか)

 決断は下された。



 後日、犯罪多発地帯でそれなりの規模の騒動が起こる。

 それは暴動になる程ではなかったが、結構な期間にわたって続いた。

 しかし、騒動を起こす者達の人数が減少していくにつれて、自然と終息していく。

 争いを続けようにも、実行出来る人間がいなくなっていくからだ。

 そうして犯罪多発地帯は静寂を取り戻していく。

 決して平穏とは呼べない、ただ何も動く者がないだけの状態を。

 だが、それでも騒動を起こす者達は消え去り、しばしの安息を得ていく事にはなった。

 ここにもっと近未来でディストピアでサイバーでパンクな要素を盛り込みたいところ。

 何はともあれ、銃器とサイボーグとネットワークは欲しい。

 どうやったら上手く盛り込めるのだろうか。



 適切なキーワードが思いつかない。

 何かアイデアがあったらメッセージにて。



 誤字脱字報告も待ってる。

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