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382 猛火

 西藍たちはエンジンが温まったかのように魔法をガンガン回している。

 見たことない魔法を当たり前のように途轍もない威力で連発し、いつしか防戦一方になってしまっていた。


「マジでめちゃくちゃやって来るな連中は」

 これだけ人数差があっても押し切れない。

 せめて火薬があればもうちょっと別のやり方もあったかもしれないけど……足りない分は作戦でカバーするしかないか。

「ラプトル! 突撃!」

 弓矢に合わせてラプトルの群れが一斉に走り出す。舗装された街並みを踏みしめ、藍色の怪物に向かっていく。

 レールガンの銃口を向けるが、その銃口に対して弓矢を射かける。どれだけの魔法を使ったとしても銃口をシールドで覆うわけにはいかないよな。

 そんなことをしたら銃を撃てないからな!

 が、西藍はそれも読んでいたのか、シールドに銃口だけが外を覗ける小さな穴を作り、そこからレールガンを射出させた。

 でもな西藍!

 そんな撃ち方じゃあ、射線を読んでくださいって言ってるようなもんだぞ!

 ラプトルたちが音速を超える弾丸を紙一重で躱す。見てから避けることは不可能だけど、どれだけ速くても予想できれば対処できるのだ!

 タイミングを間違えれば死ぬけどな!


 十人の西藍たちの懐に飛び込んだラプトルたちが<恐爪>を発動させ、シールドと衝突する。

 ばちばちと火花のような閃光を散らせ――爪がシールドを貫通させた。

 魔法には優先順位がある。西藍のシールドとラプトルの魔法ではラプトルたちの方が優先順位が高かったらしい。

 オレも確信はなかったけど、西藍のシールドが妙に光ったりしている、つまり無駄なエネルギーを発生させているから優先順位はやや低いと判断した。

 もしかしたら西藍は本来の魔法よりも優先順位が下がるのかもしれない。それくらいのデメリットがないと強すぎ……いやあっても強すぎるか。

 ともあれシールドを破ることはできた。

 だが。

 それがどうした。

 そう言いたげに西藍は反撃の金属の爪を振るう。ラプトルの腹に大穴を空ける。

 ラプトルの爪はただレールガンに触れただけだ。

 勝敗など誰の目にも明らかだ。でもこれで、終わりじゃない!


「ユーカリ! 火!」

 爪先に括りつけたユーカリの魔法が発動する。そこに取り付けられたユーカリが高温を発すると西藍のレールガンは閃光をまき散らし――――爆発した。


 レールガンの知識はあまりない。それでもわかっているのはレールガンを撃てば発熱するということ。

 これはわざわざ蒸気によって放熱していることからも明らかだ! なら、そこにもっと熱を叩きこめばオーバーヒートするのは自明の理。さらに、奴らの電力源と思しき水素は良く燃える。

 何らかの方法で水素を圧縮および保存しているようだけど、熱を加えればその保存が破れる可能性はあると踏んだ!

 ……流石に爆発するのは予想外だったけどな!

 当然ラプトルたちも爆発に巻き込まれて負傷してしまったけど、駒損はしてない。爆発で敵がうろたえている隙に、畳みかける!


「カッコウたち! 酒浴びせてやれ」

 上空からカッコウが瓶やつぼをあられのように降らせる。爆発の影響なのか、特に何もしなくても自然と発火し、火の海どころか炎の地獄を作り上げる。

 ちなみに酒などは民家においてあったものを拝借しました。おいていったんだから勝手に使っていいよね?


 炎に巻かれて西藍たちはどんどんのたうち回り倒れていく。

 やっぱりだ。こいつらは熱に弱い。いやまあ炎に直接焼かれて生きていられる生物なんてそうそういないけど、こいつらは特に弱い。多分体温調節そのものが下手なんだ。

 恐らくだけど、西藍は水中の生物が陸上に進出した魔物だろう。

 水中での活動に支障がないみたいだし、電気ウナギのような生物は水中にしか存在しない。それとあの鮮やかな藍色の体色は一部の魚のような青さだ。

 だから汗をかいたりするのは多分苦手だ。懐かしのヤシガニもそうやって倒したしな。


 もはや奴らの逃げ場は一つだけ。

 ドボン。

 飛び込み競技のようなきれいな水柱をたて、ここに来た水路に逃げ込む。

 燃え盛る炎も水中までは届かない。

 だが、それを読んでいないと思ったのか!

 水中にはあらかじめラプトルと海老たちを配置している!

 ラプトルは肺活量が多く、泳ぎそのものは得意じゃなくても潜水なら数分間は楽にこなせる!

 飛び込んだ西藍に三次元的に包囲しながら突き進む。


 これも当たり前のだが、水は電気を通す。というよりも空気は電気をほとんど通さないのだ。

 フィクションのように地上で電撃が相手を貫く、ということはほぼ不可能だ。つまり、西藍にとって電撃の威力が最大に発揮されるのは水中になる。

 なら西藍は感電しないのだろうか? 

 実は発電魚であるデンキウナギもさまざまな方法で自分が感電することを防いでいる。

 分厚い皮膚が感電を防ぎ、ある程度電撃を発生させる方向を調節できるらしい。

 ならば、魔物であり、魔法が使える西藍が自らを傷つける愚など犯すだろうか?

 電光が、水中を満たした。


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うちの猫は液体です 新作です。時間があれば読んでみてください。
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