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310 アライアンス

「ひとまずはクワイと明確に敵対している集団を挙げていきましょうか」

 オレの言葉にティウは納得したのか潜在的な味方について話し始めた。

「ここより東方の海辺に住む魔物。オーガですな。奴らは我々よりも寒さに強く、泳ぎも達者です。さらにあなた方のように武器も使います。どうも少し前に銀髪と戦ったようですが、詳細はわかりません」

 ここから東の海までかなりの距離があるけど情報を掴んでいるのか。アンティ同盟もなかなか手が長いな。

「確かヒトモドキと戦っている魔物の一つに北の悪鬼という魔物がいたはず。オーガがそれか?」

「恐らくそうでしょう」

 直近で銀髪と戦ってその脅威を知っており、恨みもある。これ以上ないほどに条件を満たしている。

「具体的にどんな奴らなんだ?」

「濃い色の体色に分厚い体。そして何より長大な牙が生えておりますな」

「……角は?」

 ファンタジーのオーガとか鬼なら角が生えているイメージがあるけど……。

「ありませんがそれが何か?」

「いや……それなら、牙はあるのか? どれくらい生えている?」

「上顎から二本、極めて大きな牙がありますな」

 大きな牙……心当たりがなくはない。

「なあ、もしかしてそいつらの集団は多数の女と一人の男が頂点に立つ群れなんじゃないか?」

「よくご存じですな。それとも似たような魔物を知っておいでで?」

「まあな」

 泳ぎが得意で、牙を持ち、寒さに強く、ハーレムを形成する。これだけ情報があれば馬鹿でもわかる。

 オーガ、北の悪鬼。その生物の正体は恐らくセイウチだ。

 陸から海に適応した海棲哺乳類が陸上に再進出したのか、陸の生物と混じったのか……その辺りの詳細はわからないけど、生態や体の特徴などからほぼ間違いない。

 道具を使うなら知能も高そうだし、交渉の余地はありそうだ。


「これは南にいる魔物の話ですが、象と呼ばれる巨大な魔物がいるそうです」

 象。現代の地球における陸上最大の動物。それがもしも魔物だったのならその実力は推して知るべし。

「でかいのか?」

「それはもう。我々も一度見たことがありますが天を衝く巨体でしたな」

 そんなにでかいのか。もしも味方になってくれるなら大きな戦力になるはずだ。

「そいつらもヒトモドキと争っているのか?」

「それが、少しばかり複雑な事情がありまして……どうやらヒトモドキは象を使役しているのです」

「え、それじゃあ味方どころか敵じゃん」

 やべえよやべえよ。象の魔物と戦うとか勘弁してほしい。

「いえ、どうも連中は幼い象を捕獲し、それを飼いならすことにしているようです。一度だけですが、我々の土地に来たことがあります」

 ふむ。家畜でもたまにあるパターンだ。繁殖はできないので野生の個体を育てるのか。

「象は子供を奪い返したりはしないのか?」

「それは私も不思議に思うのですが、一度囚われた子供を取り返そうとはしないようです。象は仲間意識が強いので、奴らに奪われないように奮戦することは多々あるようなのですが」

 それはまたよくわからない反応だ。一度群れから離れた個体を仲間だとは認識しないのだろうか。

「もしも奴らの子供を奪い返せばそれも交渉の材料になるかもしれません」

「何にせよ仲間意識があるのならこっちの言うことに聞く耳を持つかもしれないな」


「次は我々の呼び名では眉狸ですな。実は奴らはもともと我々の一部でした」

 狸か。あまり強そうじゃないけど……眉?

「なんで眉狸?」

「かつて二つの種族に分かれていたそうですが、統合されたのですな。その際に子供らが今までになかった眉が現れるようになったらしいので。そう申しておりました」

 魔物の混血? いや、ただ毛の色が違う亜種だったのか? 気にはなるけどな。

「ふうん? で、お前らと何かあったのか?」

「そう難しいことではありません。ティラミスで勝てなかった奴らはロバイを出て、新天地を目指したそうです。これが百二十年ほど前だとか」

 へー、そういう奴らもいるんだ。よく記録を残してるなあ。こいつら全部口伝だろ?

 この高原を出て別の場所に移動した奴のことまでおぼえてるのは結構すごい。

「さらに四十年ほど前に眉狸とヒトモドキとの戦いが起こったので奴らが我々に救援を求めたことがありました」

「それでどうしたんだ?」

「無視しました」

「……おい」

「義理はありませんので。何とか逃げ延びたようですし」

 涼しい顔してさらっとえげつないこと言いやがる。

「じゃあお前たちから交渉することは無理じゃないのか?」

「それどころか恨まれているでしょうな」

 さもありなん。旧知の間柄を頼ったのに無視されれば腹もたてるはずだ。

「オレたちから交渉を切り出すしかないのか」

「そうなりますな。ここから南西の山岳に住んでいるので比較的近場といえるでしょう。武器は使いませんが、樹木を編んだり、洞窟を広げたりして住まいを作っているようです」

 つまりそこそこ器用な魔物だってことか。

 南西、つまりオレたちの本拠地である樹海からは南だな。その辺りはあまり行ったことがないけど、一度行ってみた方がいいな。

「リザードマンについての説明はいりますか?」

「まあ一応頼む」

 リザードマンはやはり地下に住居を作り、砂漠でラクダなどを飼って暮らしているようだ。今までとそう変わらない情報だった。

 めぼしい魔物はこれ位だけど、ティウから他にもいくつかの種族についての説明を受けた。

 この中でどれだけオレに協力してくれる奴がいるかはわからないけど、やれるだけやるしかない。

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うちの猫は液体です 新作です。時間があれば読んでみてください。
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