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俺とジジイと貧乏生活  作者: Mr.OKB
58/58

part58 復讐

どうも、Mr.OKBです。

最終回です。

ではごゆっくり。

「住所はここか」

 喫茶店の仕事を終えた俺と鳥栖はとある一軒家の前に来ていた。

 事の発端は一昨日だ。

 新たなる拠点を手に入れた祝賀会に俺と爺さん達は招かれた。

 会の前に鳥栖の組織を見学していたのだが、その時に近くのテーブルに落ちていた写真がこの家の所有者の男だった。

 そして、その男こそ俺の家族を殺した男だったのだ。

 俺のする行動は一つだった。

「もしもし、やれ」

 鳥栖はスマホに向かって指示を出す。

「周辺の全ての防犯カメラをハッキングさせた。お前が捕まる心配は無くなったぞ」

「恩に着る」

 鳥栖に礼を言い、インターホンを押すが、出なかった。

 連打すると、やっと誰かが出た

「どちら様ですか?」

 呂律の回っていない女の声がインターホンのスピーカーから聞こえる。

「お前は誰だ?俺は中にいる男に用があるんだ」

「ヤクちゃんの事?今出させるね」

 家の扉が開き下着姿の男が出てくる。

「なんでぇしゅか?今おりぇたちはいしょがしいんですけど」

 普通、下着姿で外に出てくるだろうか?だが、そんなことより俺にはこの男の体臭が気になった。

臭い、汗の臭いではない、何かが燃えるような嫌な臭いだ。

 それに、女同様に呂律が回っていない。

「この臭い、薬物だ。薬物の臭いがプンプンする」

 この男、まだ薬物をやめていなかったのか?

「俺の顔を覚えているか?」

 殺意を押し殺して聞くと、

「えーっと、誰だっけぇ」

男はふらつきながら俺の顔をまじまじと見た。

「あーそうだ。おりぇが殺しちゃった家族の死にぞこないじゃん。フフフ、思い出したりゃつい笑っちゃったよぉ。今更何しに来たのぉ?」

 へらへらと男はにやつき、ゆるみきった顔尋ねる。

「こんのっ、クズ野郎がぁ!」

 即座に悪魔化し、その顔に拳をめり込ませた。

「いってぇ!おま、なにすんだよ」

 男はのけぞり、ドアに大きな音を立ててぶつかる。

「ヤクちゃん、どうしたのー?」

 音を聞きつけたのか中から女が出て来た。

「うっ、うう」

「きゃあっ、ヤクちゃん、ヤクちゃん!」

 女は男を揺らし、起こそうとする。

「てめぇ!よくもやってくれたなぁ!」

 男は起き上がり、突進してくる。

 が、異世界で戦闘をして来た俺には避けるのは簡単でしかなかった。

 目の前に迫る男の表情が観察できるほどゆっくり見えるくらいだ。

 するりとかわした俺はあることに気づいた。

「あの女、お前の妻じゃあないな」

 玄関で俺に非難の目を向けている女の顔がクリスマスに見たものではない、別人の顔になっているのだ。

「そうだよ、俺の愛人のうちの一人だ」

 何?薄々感じていたが、この男は浮気をしていたのか?

「・・・・・・・・・」

「別にいいだろ、俺はもて」

 男の脇腹に俺の回し蹴りが飛ぶ。

「もう、ゆるさん。お前だけは生かしておくわけには行かない」

 男が衝撃で大通りの方まで飛んでいくのを見ながら俺はさらに殺意を高めた。

 最初、殺意は無かった、男には家族がいてそれを失うと悲しむ家族がいるからだ。

 でも、浮気をして、薬物を未だに扱い、俺の家族を殺したことさえ笑い話にできる男を俺は許すことが出来ない。

「ちょっと、止めなさいよ!ヤクちゃん死んじゃうでしょぉ」

 女が後ろから俺を羽交い絞めにして男の元へ向かうの止めようとする。

「おい麻薬中毒者、友達の邪魔すんじゃねえ。殺すぞ」

「ひいぃ!」

 鳥栖が女に銃を向けると怯えた女は即座に手を離した。


「おい、クズ」

 大通りに飛ばされた男を見下ろしながら言った。

 もうこいつを名前で呼ぶ気もないし、呼んだこともない。

「ま、待て。金ならある、金で許してくれ」

「許すと思うか?俺の家族を殺し、反省すらしていないお前を」

 大通りには人影は無く、トラックや乗用車がかなりの速さで通り過ぎて、俺を見ている人は存在しなかった。

「ほら、立てよ」

 クズにピッタリの死に方を思いついた。

「は、はい」

「よし、車に全速力で突っ込め」

「い、嫌です」

 仕方ない、殺してやるか。

 軽く助走を取り、拳を大きく振りかぶって突進した。

「な?」

 俺の索敵能力がこの時だけ仇となった。

 索敵内をすごいスピードで入って来た物体があった。

 それは俺にそこを向かせるのには十分であった。

 勘弁してくれよ・・・。

 そこには、赤ん坊の乗ったベビーカーが車道に向かって走っている上、約束されたようにトラックがベビーカーとぶつかりそうな位置にいるではないか。

「頼む!」

 俺は歩道を蹴って車道へと突入したベビーカーとトラックの間に滑り込み、ベビーカーの中から赤ん坊を取り出し、歩道にいた鳥栖に向かって投げた。

 赤ん坊を投げたらどうなるかは知らないが、トラックとぶつかるよりはいいだろう。

 クラクションの音と共に強い衝撃が俺の体を襲い、地面に体が叩きつけられるのを感じた。

 痛い、ひたすらに全身が痛い、即死じゃないのが逆につらい。

 悪魔化がだんだん解けていくのを感じる。

「独田ぁぁぁー!」

 赤ん坊を抱いた鳥栖が走って来る。

「おい、起きろ。お前はまだ死ぬわけには行かないんだろ!」

 鳥栖が必死で俺の身体を揺らす。

「なに・・・やってんだ・・・俺」

 視界が少しづつ暗くなっていく。

 死にたくないと思ってももうどうしようもない。

「す・・・まな・・・い、爺・・・仇・・・れな・・・」

 俺は鳥栖の腕の中で息を引き取った。


「はて、どこだ?」

 目を開けると、薄暗い雲が目に入った。

 背中がごつごつするから、石の上に寝ているのだろう。

「爺さん達は今頃どうしているだろうか」

 死んだ事よりも爺さん達の事が気になるのは爺さん達が家族も同然だったからだ。

「トラックに轢かれて、死んだはずなんだけどな」

 立ち上がって周りを見ると、自分が河原に横たわっていたことが分かる。 

「結局、復讐できなかったな」

 何故俺は赤ん坊を助けたのだろうか?俺には赤ん坊を見捨てることもできたはずだ。

 死んだ家族に復讐を誓ったはずなのに、情けない。

 俺が人殺しにならないように神様が差し向けたのなら神様は性格が悪い。

 まあ、死んでしまったものは仕方がない。

「有名な三途の川というやつか」

 目の前には対岸が見えないほどの幅があり、流れが速い川が流れている。

ふと一人の男の言っていたことを思い出した。

 三途の川を渡る船は美人の女が船頭をしているらしい。

 どんな女だろうか?少しだけ楽しみになってきた。

「おーい、そこのあんた」

 腰まで伸ばした黒い髪を赤いリボンのようなもので結び、着物姿の和風美人がこちらに歩いてくる。

 背は女にしては高く、背筋が良いのである種の威厳のようなものを感じた。

 鎌を持っているところから死神だろうか?

「お前、死神か?」

「そうだよ、アタシは死神だ。ここを渡りたいなら六文銭を出しな」

「六文銭?」

「あんたのポケットに入ってんだろ。皆そう聞くんだ」

 女の言う通りポケットを探ると、ひもで繋がれた六枚の硬貨が出て来た。

「それだよ、アタシに渡しな」

 女は金をよこせと言わんばかりに手を差し出す。

「渡さなかったらどうなる?」

 素朴な疑問を言ってみた。

「渡さなきゃこの川を渡るための船に乗せてあげない」

「六文銭に別の使い道はあるのか?」

「それで地獄の裁判を受けなくてもよく・・・やばっ言っちゃった」

 いい話を聞いた。

「対岸までどのくらいある?」

「十キロくらいだけど、水に落ちたらここまで戻って来ちゃうから泳げないよ」

 十キロか・・・飛べるな。

「じゃあ、空を飛ぶとするよ」

 俺は悪魔化し、黒い翼を広げて空に舞いあがる。

「ちょっと!そんなの反則だよ!」

「知らないね。この六文銭で裁判を回避することにするよ」

 手を振って俺は河原を後にした。

 一時間ほど飛ぶと、川岸が見えてくる。

「あれが裁判所というわけか」

 さらに川岸には大きな門があり、その後ろには和風の建物がそびえたっている。

 俺が川岸に着陸すると、門が開いて何者かが出て来た。

「あなたが噂の人ですね」

 燃えるように赤い髪をショートカットにし、黒い法服を着た少女が立っている。

「まさか空を超えてくるなんて予想外でしたよ」

 少女はため息をついた。

「申し遅れました。私は地獄の裁判長、閻魔です」

「俺には六文銭があるから裁判を受けなくてもいいと聞いたが?」

「はい、裁判を受ける必要はありません。ですが」

「ですが?」

「元々裁判を受けなくても良かったんです」

 閻魔は幼い顔で微笑んだ。

「はい?」

「裁判は悪い行いをした者が受けるのです。貴方の罪は赤ちゃんを助けたことで帳消しになっています」

「要するに、普通に渡って来た方がよかったのか?」

「そう言う事だよ、独田」

 聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

「やあ、カス野郎」

 目つきの悪い学生服の男がそこにいた。

「平将門、どうしてここに?」

「閻魔の嬢ちゃんに連れ戻されたんだよ。罰から解放される条件はもう満たされたから帰ってもいいってさ」

「嬢ちゃんと言わないでください、私は貴方の上司です」

「悪い悪い、勘弁してくれや」

「それで、なんでこんなところにいるんだ?」

「嬢ちゃんに働けと言われてな。このまま天国で生まれ変わるまで待つのは嫌だし、地獄行きはもっと嫌だ。だからこうして働いている」

「だから嬢ちゃんと言わないでください!本当に地獄送りにしますよ!」

 閻魔は平を殴りつける。

「さて、独田さん。ここで働いてください」

 あれ?選択肢は無いの?

「おい、天国に行ける話はどうなった?」

「地獄は人手不足なんだよ。死者は死んでまで働きたくないと言って皆天国に行くからな」

「嫌だと言ったら?」

「私が悲しみます」

「よしわかった。働こう」

 女を泣かせるのは俺の趣味じゃない。

「本当ですか?ありがとうございます!」

 閻魔は悲しそうな顔から一気に笑顔になった。

「良かったな、嬢ちゃん」

「だから嬢ちゃんじゃない!独田さん、ちょっとこの男を空から落として下さい」

 新しい職場は中々賑やかそうだ。

 爺さん、俺は地獄でも働いていけそうだよ。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

今回で「俺とジジイと貧乏生活」はお終りです。

書き始めてから半年で終わりましたが、何人もの方に読んで頂いたことは幸福の至りです。

次回作は初心に帰って書きたいと思います。

次回作「探偵と吸血鬼と異世界転生」も読んで頂けたら幸いです。

では、またお会いしましょう。

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