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俺とジジイと貧乏生活  作者: Mr.OKB
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part4家族契約

「出会って五分の相手に言う言葉じゃないよなぁ」

「お前、家族が欲しいと言っていたじゃろう」

「見ていたのか」

 まさか本当に家族が来るとは・・・予想していなかった。

「でもなぁ、俺一人で結構貧乏生活だから二人分を俺が養うとなると・・・厳しいな」

「わしが働けばよいじゃろう」

「そうだな、まあお前がいて困ることもないからな・・・。よし家族になろう」

「よく言ってくれた。それでは紙かなんか用意してくれんか」

 俺はノートを一枚破り、シャーペンと共に卓袱台の上に置いた。

 セガンはシャーペンを持ち、文字を書き始めようとしたがペンを持ったまま固まった。

「何故文字が書けないのじゃ?」

 どうやら彼はシャーペンの存在を知らないようだ。

「貸せ、こうやって使うんだ」

 シャーペンを奪い取り、芯を出してまた渡した。

「この世界には珍しいものが多いのう」

「お前、どこから来たんだ?さっきの紙切れと言い、シャーペンも知らない、迷わず強盗をする、明らかにこの世界の人間じゃない」

「お察しの通りわしは別の世界から来たんじゃ」

 俺の質問にセガンは書きながら答えた。

「別の世界だと?」

「わしはモンスターが消えるという異常現象の調査をしていたら自分が消えてこの世界に来てしまったのじゃ。帰る方法もないから、その辺を歩いて調査していたら明らかな殺気を出して歩いているお前が気になったんじゃ。それで後を追ったら案の定お前がナイフを出して刺そうとしているじゃないか。咄嗟にわしは刺されかけていた男を蹴り飛ばして男を守ったのじゃ」

 俺が聞かなかったことを話すあたり、どうやらこいつは無駄話が多いようだ。

「出来たぞ。契約用紙じゃ」

 卓袱台の上には日本語で書かれた謎の契約用紙が置かれていた。

「ここに名前を書くんじゃ」

 用紙を読むと俺とセガンが家族の関係になるという契約を結ぶための物だった。

 俺はセガンの指さした場所に名前を書き、用紙を戻した。

「じゃあ、わしも書くとするか」

 セガンの字はその筋肉ゆえか力強く、濃かった。

「これで俺達は家族になったのか?」

「最後に聞くが、後悔しないな?」

「ああ、後悔などしない。セガン、お前は俺の家族だ」

 セガンは懐から三つに枝分かれした小さな矛のような物を取り出した。

「なんだそれは」

「悪魔っておるじゃろ、あの翼とか山羊の角とかついてるやつ。あいつの槍じゃ」

 セガンは槍のような物に折りたたんだ紙を巻きつけながら答えた。

「それにしては小さくないか?」

「悪魔だって年がら年中槍を持っているわけじゃないんじゃ。必要な時に取り出し、巨大化させて使うんじゃ」

「この世界にも悪魔はいるのか?」

「いる。わしらの世界からこちらに来た奴らじゃが」

「何匹くらいいるんだ?」

「わからん。こっちにはかなり大量のモンスターが来ているはずじゃからそれなりに入るんじゃろう」

「そうか、で、さっきから何をしてるんだ?」

「悪魔ってのはな、契約にうるさいんじゃ。どのくらいうるさいかと言えば殺さない限りそのうるささは消えないと言われるくらいじゃ。そして、この悪魔の槍は契約を破ることがないようにと願いを込めて相手と自分を刺すんじゃ」

「ハンコみたいなものか・・・え、今なんて言った?」

 俺が言うと同時にセガンは俺の手のひらを槍で刺した。

「痛い!もう少し優しくできないのか?」

「すまんな、次はお前の番じゃ。一思いに頼む」

 セガンは槍を俺に渡した。

「一思いに・・・か」

 俺はセガンの手のひらに槍を刺した。

 すると、槍に結ばれていた紙が光りだし、宙に舞い上がって俺とセガンの手のひらの中に吸い込まれていった。

「これでわしとお前は家族じゃ」

「まるで魔法みたいだ」

「だってこれ魔法じゃから」

 刺された手のひらをさすりながら、セガンが言う。

「お前は魔法使いなのか?」

「その通り、わしは魔法使いじゃ」

「まさか・・・いや、否定してしまうと今の現象に説明がつかない」

「信じてもらえたかな」

「ああ、お前が魔法使いだっていうことは認める」

「認めてくれて嬉しい。わしは眠くなったから寝る」

 にやりと笑ったセガンはいきなり卓袱台に突っ伏して寝てしまった。

 あれ、もっと聞くべきことがあったんじゃないのか?どんな魔法が使えるのかとか・・・。

 疲れた。いきなりドアを蹴破って入って来た老人と家族になり、異世界から来たとか言われ・・・。

 俺は些細な疑問は気にしない性格だ。寝ればこのどうでもいい疑問は消えてなくなるだろう。

 俺は布団を敷き、ただ単に家族が出来たというだけだと自分に言い聞かせながら眠った。



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