part23正義の悪魔
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「それで、家に帰って来なかったというわけか」
俺は爺さんのしたことに呆れて怒る気にもならなかった。
「すまん、怒っとるか?」
「いや、怒ってない。入学金を払わず、授業料も払う必要のない推薦生がお前でも怒る気はない」
推薦生とは、校長の推薦で転入してきた生徒の事で、授業料を払わなくて良いという特権がある。
「それならよかったのじゃ」
「それより爺さん、ここでは俺と爺さんはいとこだ。だから俺を孤軍と呼べ、俺はセガンと呼ぶから」
「わかったぞ。孤軍」
爺さんはまた若いころの姿になった。
「わかればいいんだセガン。後で学校を案内してやる」
授業が終わり放課後、俺は爺さんに学校を案内していた。
「セガン、ここが特別棟だ。授業でよく来るから場所を覚えておいてくれ」
「どんな授業をするんだ?」
「美術やら音楽やら家庭科だ」
「ふむ、次を案内してくれ」
「OK。次は部室棟かな」
「部室棟、部活とかをする場所じゃな」
「セガンは部活とかするのか?」
「いや、しない。部活には金がかかると聞いたからな」
「いい判断だ。うちは貧乏だから部活なんかできない」
部室棟までの道を歩いていると、この学校で最も会いたくない三人組に遭遇した。
「おうおう、てめえが転入生か?」
大柄で木刀を持ったリーダー格の鹿刈。
「転入生ならボク達の事を知っておいてもらおうかな」
眼鏡をかけた小柄な馬琴。
「ま、とりあえず金出しな」
金髪ガングロの女、三鶴が金を要求してきた。
いつの時代の不良かわからんが、この学校の不良として有名な三人組だ。
「む、孤軍。誰だこの変なの」
「あぁん?誰が変なのだぁ!?」
馬琴が怒鳴る。
「関わり合いになるな。めんどくさいから」
「特にこの女は、いつの時代の不良だ?」
「てめぇ、なめてんのか?」
三鶴がセガンの胸倉を掴んだ。
「私はもうキレそうなんだが」
爺さんの後ろ髪が白くなってきている。
イライラしていて変身が解けかけているようだ。
「やめとけ、転校早々問題を起こしたらまずい」
「うるさいよ、金の亡者クン」
「セガン、叩き潰していいぞ」
基本的に問題を避ける俺だが、目の前でそのセリフを言われると頭にくる。
一触即発の状況になった時、後ろから大声が聞こえた。
「おーい、独田。先生が呼んでたぞ」
鳥栖がこちらに走って来る。
「チッ、じゃあな。行くぞ三鶴、馬琴」
三人は去っていった。
「危なかったな、僕が来なかったらぼこぼこにされるところだったよ」
「お前は・・・そうだ鳥栖とかいう奴だな」
「覚えてくれて嬉しいよ。それで独田、お前はすぐに職員室に行け」
「誰が呼んでるんだ?」
「早良先生だよ。多分長くなりそうだ」
「そうか、困ったな」
「何が困るんだ?」
セガンが聞いてきた。
「お前を案内できなくなってしまう」
「それなら僕がその役目を引き受けよう。セガン君とも話したいしね」
「引き受けてくれるか。セガンすまない、ちょっと行って来る。長くなるから先に帰ってくれ」
二人と別れ、俺は早良先生の待つ職員室に向かった。
「来たわね。ちょっと人前では話せない話をしたいから一緒に来てくれるかしら」
「話せない話とは?」
「セガン君の事よ」
早良先生と校内にある森に行った。
何でこの学校には森なんてものがあるんだろうか。
「単刀直入に聞くわ、あの子は誰?」
森にある池を見ながら先生は聞く。
「俺のいとこですが」
「あなたに身寄りは誰もいないはずよ」
いつものような優しい声ではなく、鋭い声だった。
事実、俺の親は死んでいて、親はどちらも一人っ子だったので身寄りがいないというのは本当だ。
「俺も知りませんでした。でもいとこらしいんですよ」
「そう、親は誰か知ってる?」
「さあ?」
「親の名前は外国語で書かれていて、連絡先はあなたの家だったわ」
「そんなこと言っても知らないものは知らないんですよ」
「あなたの生徒名簿、少しおかしいのよ。あなたの保護者は誰?」
保護者?そんなもの両親に決まっている。
「そりゃ両親ですよ」
「保護者はどちらも死んでいるわ。新しい保護者は誰かと聞いてるの」
「そんな人はいませんよ」
「それが問題なの。普通両親が死ぬと親族が身元保証人になるわ。でも君は親族はいない。だから
役所の人が身元保証人になったりするものなのよ」
「そんな話一回も聞いてませんが」
少なくとも両親が死んで、あのアパートに引っ越してからそんな話は一度も聞いてない。
「ほんとに知らないのね。ならもういいわ」
「帰っていいですか?」
「いいえ、あなたにはちょっとやってほしいことがあるの」
厳しい顔をしていた先生は元の優しい顔に戻った。
「まったく、なんでトイレ掃除をしなきゃいけないんだ」
俺は特別棟の男子トイレの掃除をしていた。
ここの掃除担当者が掃除をさぼって帰ったので先生がやることになっていたらしい。
しかしやりたくないので丁度呼んでいた俺が押し付けられたというわけだ。
「くそう、今日は厄日だ」
無視してそのまま帰ろうかと思ったが任せられた仕事を放棄するのはよくない。
でも驚いたな、何の用事かと思ったら俺の身元保証人がいないとは。
掃除を終えたので荷物を取って帰ろう。
「爺さん、先に帰ったかな?」
特別棟を出ると物が潰れるような、引き裂かれるような音と、争うような声が聞こえた。
「何の音だ?」
特別棟の周りを見回したが、誰もいない。
「体育館か?でも今は使用中のはずだ」
特別棟に隣接する体育館の周辺を歩いてみることにしよう。
未だ音は無くならず、争う音だけが聞こえなくなった。
「あれ、壁に穴が開いている」
特別棟と体育館の間の隙間には小さな壁があり、入れないようになっているが、人が通れるくらいの大きさの穴が開いていた。
「誰だこんなバカなことするやつは」
どうやら音は中から出ているようなので穴の中を覗いてみると、中には信じられない光景があった。
「何だあの得体の知れない生物は?」
薄暗い隙間は大量の血が飛び散っており、三着の服が落ちている。
そしてその中央には翼が生え、肌の黒い悪魔のような生物が何かをむさぼり食っている。
「じ、爺さんを呼んでくるかな。この状況を何とかしてもらおう」
その場を立ち去ろうとすると、生物がこちらを振り向いた。
真っ黒な肌の顔に角が生え、黄色い目がギラギラと輝き、開いた口には鋭い歯が生えている。
逃げなければ!殺されてしまう。
本能的に逃げるべきだと判断した俺は走り出した。
「どこへ行く気かね。少年よ」
目の前にはあの生物の顔があった。
「嘘だろ、今あそこにいたのに」
信じられないが生物は逃げようと走り出した瞬間に目の前に出現したのだ。
「まぁそう怯えるなって。これには事情があるんだ」
生物は威圧するような声で話しかけて来た。
「た、頼む。殺さないでくれ」
「何も殺しはしないよ。話だけでも聞いてくれ」
「話?」
「俺はな、正義の味方なんだ」
生物は持っていた血だらけの頭蓋骨を放り投げた。
「正義の、味方?」
「ああ、あの三人組はみんなから金を奪ったり暴力を振るったりと悪い事ばかりして来た。だから正義の味方である俺が成敗してやったのよ。ほれ、この枝に見覚えあるだろ」
生物は隙間から血のしみ込んだ木刀を持って来た。
「これは鹿刈の木刀だ。名前が彫られているから間違いない」
「おっと、自己紹介が遅れた。俺の名前はハレス。悪魔だ」
悪魔?セガンの言っていたダシュトとはずいぶん容姿が違うな。
俺はだんだんと落ち着きを取り戻していた。
「正義の味方と言うのはな、誰にも知られてはいけないんだ。でも、悪人でもないお前を殺す気はない。だから俺の仲間になってくれ」
「仲間?」
「仲間になれば、俺のこと黙っていてくれるだろ」
「ああ、黙っているな」
俺は嘘をついた。
「それに仲間になればこの世の悪を成敗できるぞ。お前と俺で、この世に潜む悪人を殺してやるんだ」
ハレスは右手をさし出した。
「お前を悪魔にしてやる。そうすれば俺とお前は同じ魔族だ。つまり仲間っていう事」
「俺を悪魔に出来るのか?」
「ああ、どうだ?なる気はないか?」
俺は少し考えた。
悪魔の力は魅力的だ、その力があればあいつに復讐できる。
「なろう」
俺はハレスの手を握り返した。
「本当か?嬉しいなぁ!じゃあ早速」
「でも一日だけ待ってくれ。心の準備がしたい」
「そ、そうか。わかったよ。俺は美術室にいるからな。明日絶対来いよ。待ってるからな」「ああ、約束する」
「名前を聞くのを忘れていたな。教えてくれ」
「独田孤軍だ。よろしく、ハレス」
「よろしくな。独田孤軍」
ハレスと別れた俺は荷物を持って急いで家に帰った。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
ところで、登場人物紹介を作った方がよいでしょうか?
作った方がいいと思う方は言って下さい。
他にも、ご意見ご要望等ありましたら言って下さい。




