part10二人の関係
持ってくるのを忘れた、という事は俺は家に帰ることが出来ない。
「どうしよう、この寒い中外にいたくはないぞ」
俺は除雪された道を踏みながら新宿中央公園に向かった。
なぜかと言えばあいつがいるような気がしたからだ。
「寒い、今朝の新聞によれば今夜の最低気温は三度だっけな」
俺が歩いていると、目当ての人物はいた。
「やっぱり駄目だったか」
「あのなぁ、こんなに高くて目立つ塔ならわかるがあんな小さい家はわからんのじゃ」
セガンは都庁を指さしながら言った。
「悪かった、俺が案内するから家に帰ろう」
俺はセガンの背中に乗ると、セガンは空高く飛び上がった。
「どうじゃ?二回目の空は」
「うーん、夜景がきれいだな。そういえばバイトはどうなった?」
そういえばというよりも一番大事なことだ。
「わしはな、夜間警備というバイトを始めることになったのじゃ」
「夜間警備か、睡眠時間とか大丈夫か?」
「わしは寝なくても大丈夫なんじゃ」
「何故だ?爺さん人間離れしているが寝なきゃ疲れてしまうだろ」
「お前はわしの世界の事を何も知らんのじゃな」
「爺さんの世界ってあっちの世界の事か」
「わしの世界にはいろいろな民族があってな、念話が出来るテレパ族、技術に特化したアイマン民族、巨大な第二の腕を出し、それを用いて戦う巨腕族、光の魔法で魔族に対抗する光の民族、拳から出る魔力で敵を殴り飛ばす魔拳族。因みにわしは魔拳属じゃ」
「他にもあるのか?」
「いろいろある。もちろん普通の人間もいるぞ。そして魔拳族の特徴は何と言っても長寿命じゃ、最大まで五百歳まで生きられる。また、睡眠時間にも特徴があるんじゃ、一歳から九十九歳までは徹夜が得意になる程度、百歳から百九十九歳までは五日間寝なくても大丈夫、二百歳から二百九十九歳までは一日寝れば一か月間寝なくても大丈夫、三百歳から三百九十九歳までは一週間に三日しか動くことが出来なくなり、四百歳から四百九十九歳までは一週間に一度しか起き無くなり、五百歳になると・・・」
「五百歳になると?」
「誕生日から一年間眠り続け、五百一歳の誕生日に起きて家族に感謝と別れの言葉を言った後死ぬ」
何だその変な民族は。
「爺さんは何歳なんだ?」
「二百歳丁度じゃ。だから一か月は寝なくても大丈夫」
「でも昨日は寝ていたじゃないか」
明らかに爺さんは俺の横で寝ていた。
「別に寝なくてもいいが、わしは寝たいから寝るんじゃ」
「ふーん。夜のバイトなら弁当を作った方がいいな」
「ほう、餅じゃないのがよいな」
「じゃあ爺さんの為に頑張って餅じゃないものを作ってやるよ」
家に餅しかないのだがどうすればよいのだろう。
「お前、いつからわしの事を爺さんって呼ぶようになったんだ?」
「今日からだ。お前は200歳で俺は十五歳だ、なら爺さんと呼んでも悪くないと思ってな」
昨日からずっと思っていたのだが俺とセガンの関係をどう呼べばいいのか?
契約上家族となっているが他人に説明するのは少しめんどくさい。
「ほう、ならわしはお前を孫と呼ぶぞ」
「いいぞ、爺さん」
「おう!孫よ」
俺達の関係性をどう呼ぶのか、そんなことを悩む必要などなかった。
祖父と孫の関係で良いのだ。
俺はセガンの背中の上でそんなことを考えた。
爺さんと俺は線路沿いを飛び、最寄り駅からアパートに戻った。
「今日も餅か」
「仕方ないだろう、貧乏だから少しでも出費を減らしたいんだ」
「味は醤油しかないのか」
「そうだ、仕方がないんだ」
こいつは絶対に飽きそうなので海苔ときなこでも買っておくか。
「わしは飯を食ったらまた出かけなくてはならん」
爺さんが醤油を餅にかけながら言った。
「今日からか?」
「そうじゃ、今日いきなり仕事を辞めた奴がいて困っていたとか何とかで」
いきなりやって来た身元不明の老人を採用した上にすぐに警備に当たらせるとかそこの担当者は馬鹿なのだろうか。
「お前、どうやって戸籍とかを手に入れたんだ?」
「担当の人に外国人だと言ったらなんかよくわからない手続きをしてくれてどうにかなったんじゃ」
最近のハロウワークはどうなっているんだろうか。
「ごちそうさま」
夕飯と言っても餅が二つだけなので食事は五分程度で済んでしまう。
「では、わしは出かけてくる」
「行き方わかるのか」
「もうテレポートで行けるようにしておいた」
そう言うと、爺さんは呪文を唱えた。
すると、足元に魔法陣のようなものが出現し、爺さんの体が光りだした。
「テレポート!」
光が最大になった瞬間、爺さんは姿を消していた。
「何で最初から使わないんだよ」
最初からこのアパートにテレポートしていれば飛ぶ必要もなかったと思う。
しかし俺は十二時間労働で疲れていたのですぐに寝ることにした。




