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54 尾崎蓮也犯人説

 二日目になって、五色村殺人事件の捜査は、早くも暗礁に乗り上げていた。

 刑事たちによって村人への聞き込みが行われたが、大した収穫も得られぬまま、村人全員の聞き込みが終わろうとしていた。

 この事件が、巫女の口寄せになぞらえて行われたという点から、御巫家とその関係者の中にこそ、犯人はいるものと考えられていた。

 そこから、犯行時のアリバイがなく、口寄せを行った張本人である月菜と、同じくアリバイがなく、男性である尾崎蓮也の二人が、もっとも疑わしい人物と考えられていた。


「どう考えていいんだか、分からん……」

 根来は、五色村の居間に座って、悔しそうにそう呟いた。

「謎が多すぎますね。そもそも、あの口寄せは何であったのか、本当に予言だったのでしょうか」

 羽黒祐介も困ったように呟く。

「予言とも、予告とも取れるが……何にせよ、元を辿れば、全ての謎の源流はあの口寄せなんだ。口寄せの内容をよく考えなければならない。事実は小説より奇なり、だ。全ての可能性を考えていかなくちゃならないんだよな」

「そうですね」

 祐介は、ちょっと悩んでいるらしく、頭を掻いていたが、少し眠そうであった。

「ただ、俺が今引っかかっているのは、今朝になって俺の耳に入った情報だが、アーチ橋の手すりがわりと高めだったという話なんだ」

「なるほど」

「いいか。女性の力では、日菜の体を持ち上げて、アーチ橋の手すりの向こう側の川に突き落とすのは不可能だ。少なくとも、絢子や月菜には不可能なんだ」

 祐介は、さも面白そうに頷いた。

「なるほど」

「だから、犯人は男性だったと推理することができる。犯人は男性だ。だとしたら、容疑者の中で、アリバイがない男性が犯人ということになる。それは尾崎蓮也だ……」


 祐介は、手を組んで、しばらく考えていたが、

「それならば、女性でも犯行は可能ですよ」

「なんだって……?」

 祐介は、自分の首をさっと撫でると、

「例えば、被害者である日菜さんは、アーチ橋の手すりを乗り越えて、元々、手すりの外側に立っていたという場合です。そして、犯人は凶器のロープのようなもので、日菜さんの首を締め上げてしまったのです。その場合、日菜さんは、窒息死して橋から足を踏み外すと、そのまま川に転落してしまったのです。こうした状況であったなら、犯人がわざわざ死体を持ち上げて、川に突き落とす必要はありません」

「なるほど、そういう方法もあるな。しかし、その場合、日菜さんは自ら、アーチ橋の手すりを乗り越えて、橋の外側に立っていたということになる。その理由が分からん……」

 祐介は、頷いてから、また少し考える。

「もしかして、彼女は自殺をしようとしていたのでしょうか」

「でもなぁ、これから自殺をしようとしている人間を、わざわざ手にかける人間はいないよ。俺はやっぱり、犯人は男性だったと思うな。尾崎蓮也説が一番、有力だ……」

 根来は、意を決したように立ち上がる。

「どこへ行くんですか?」

「本人に探りを入れてくるんだよ」


 そう言う根来の目つきは鋭かった。鬼根来の血が煮えたぎっているようであった……。

 根来の中で、尾崎蓮也犯人説が大きく膨れ上がってきているのだ。

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