序章 ~君の隣~
クトゥルフ神話要素を含むオリジナル伝奇バトル。少女主人公になります。結構酷い目に遭います。クトゥルフ神話の主人公なりの結末を迎えます。
長身で割と美形な彼は、休日になると発生する駅前の噴水前の、ものすっごーい人混みの中でも抜きん出て目立つ。だから、私はそれを目印にして進めばいいのだ。
そして、私を見付けて手を振る彼に小走りで駆け寄って、こう言ってみる。
「ごめーん、待った?」
で、彼はもちろんこう答える。
「ううん、僕も今来たところ」
………余りにも定番過ぎてベタベタな会話だけど、カップルになったら一度はやってみたかったと頭の隅で夢想していた。
でもまさか、この私が高校在学中にやるなんて、考えもしなかったけど。
結構恥ずかしいと思うんだけど、律儀に返してくれるのがまた嬉しかった。
いかにもカップルな会話がこんなに幸福感を引き出すなんて思いもしなかった。きっと端から見ればバカップルに見えるんだろうけど、全然気にならないのが驚きだ。人間の持つ恋愛回路の性能たるやフルサイコフレームも真っ青って感じ。
(ああ、我ながら、絶対どうかしてる………)
そんな脳内ツッコミもしてみる。
「あ、そう言えば私服姿を見るのは初めてだね。うん、似合ってるよ」
「う。……そ、そう?」
胸はそれなりにあるけど括れが無い寸胴を隠す為、ちょっと少女趣味っぽいワンピースを着ていた。友達とのお出かけではまず着ないタイプだ。
と言うか、外出で着る事自体初めてっす。
顔をちょっと隠す為に少し長く伸ばした前髪も今日は気合を入れてセットしてたりする。
どっちかと言えば、私はお笑い系に分類される。
自他共に認める恋愛に縁薄いタイプ、と言うか女子同士でおバカなコミュニティをせっせと育てる方がまだまだ楽しいお年頃だった。
それが今やこんな会話を男子としているってんだから、この世に奇跡は存在すると思ってしまう。
「じゃ、そろそろ行こうか。少し急がないと映画始まっちゃうね」
「うん」
言いながらちょっとぎこちなく手を伸ばす。それを、彼は自然に繋いでくれた。
掌の彼の体温が顔から火が出るほどにクる。
私と彼とでは身長差のせいで腕を組むのが少し難しい。
(……ヒール履くか。高い奴。……やっぱ腕くらい組みたいし)
でも、履き慣れないそんな物履いたらまともに歩けないかも知れない。そうしたら、腕を組むどころか彼の腕にすがってしまうんじゃ?
(むはあッ!)
想像してまたぼふっと顔から火を吹いた。
こんな私を知り合いが見たらきっと笑うだろう。
だけど、もう仕方ないのです。
私、陽凪詩絵里は今、恋に夢中になっているんだから。
*
彼、狩野剣也は一年の夏休み明けに私とは別のクラスに転入して来た。
何しろ目立つ程の高身長に充分高得点のルックス。これが噂にならない訳がない。
実際私のクラスの女子……うんにゃ、当時学校中の女子の七割は彼にキャーキャー騒いでいたと思う。
私たちの通う暁月学園は学園都市の一環で独自の教育スタイルを持っていて、初等部から高等部まではほとんどエスカレーター。大学や短大も優先枠が多いので六割は進学する。その為中等部から高等部に上がってもあんまり新しい顔ぶれにはならない。
そう言う環境だから、転入生は必要以上に目立つって事もある。
で、その時の私はと言えばだ。確かに噂は聞いたし廊下で擦れ違った事もある。でも、正直言って興味らしい興味を彼に抱いた記憶は無い。
何でもクォーターだそうで、身長と言い浮かべる表情と言い、どこか日本人からかけ離れている風貌も納得できる。あらゆる属性が私と全然違う世界の住人である事を示していた。
だから、気になるとかそう言う感情とは無縁だったのだ。
自分にミーハーな部分は無いとは言わないけれど、私が好むのはどっちかと言えばコメディアン系で、映画で言うなら八〇年代B級コメディがお気に入りでベクトルも違う。
そんな私と彼の道が交錯したのは、今年の初めのこと。
あろう事か、彼は一年の年明けに私も所属している映画研究会に入会してきた。
映画研究会と言えば普通は撮る事を目指すのが世間様の常識ってもんです。映画を撮る側と演じる側。二つがフュージョンした、未来と希望と可能性ある部活の筈。
が、しかし。
速攻で所属を決めたあたしが言うのも何だけど、今の映研は観る専門で真面目に映画を撮りたいと考える映画人は皆無だ。それはもう映画人って言わないか。
昔は撮る方がメインだったと思われる機材も倉庫に確認できるけれど、はっきり言ってもう誰も使えない。使い方が分からない。使ってみようとも思わない。
歴代の先輩連が撮ってきた作品も、山のような年代物フィルムケースに入れられて片隅で埃を被っている。先輩たちの思い出はたぶん腐れ果てているだろう。確認したいとも思わない。
で、今の私たちはと言えば、専ら視聴覚準備室の機材を使って、レンタルしたり持ち寄ったりしたDVDを観ているのが活動内容。だってAV設備がそれなりに整っている素敵な視聴環境なのだ。残念ながらブルーレイは学校活動的に必要性が低いので、未だ導入されておりませんが。
ハリウッドの資金だけかかっている娯楽大作や七〇年代八〇年代のドB級、海外受けの良いタケシ・キタノ映画。時に『男はつらいよ』や菅原文太任侠シリーズや『ゴジラ』。
男子は哀川翔のVシネマや、たまーにどこからか手に入れた謎の無修正のアレソレを観ているし、女子もその点はあんまし変わらず、後はB級スプラッタをポテチとコーラを用意してキャーキャー言いながら観る。最近はBLアニメもちらほら。
言ってみれば暁月学園の堕落と腐敗の園の極みと言ってもいい暗がりの世界に、まさか彼みたいな人間が来るなんて考えもしなかった。
「入部希望なんですけど、映研はここでいいんですよね?」
その日の事はしっかりと覚えている。
いつも通り室内に暗幕を張って男女合わせて五人位で『テキサスチェーンソー』をゲラゲラ観ていた時だった。
彼の出現は、ある意味ホラー映画で殺人鬼が登場するシーンよりもドッキリさせられた。
『掃き溜めに鶴』って言葉がある。本来は女性に対して使う言葉な訳だけど、その時はその言葉が本当にぴったりはまったと思う。明らかに場違いな光景だった。
本気でここに参加するの?と思った。もしかして撮ったり演じたりする方に興味があるんじゃないの?とも思った。
だが、彼は当たり前のようにこの腐敗の世界に入り込んだ。
同じ部活になって分かった事も幾つかある。
その第一は性格まで良いって事。いやいや、これで女子に人気が出なきゃ嘘だ。顔良し高身長性格良しの典型的な王子様だもの。実際、私と同類に近い、恋愛に程遠い映研の女子たちも、彼の登場で半数が色めきたった。
女とはかくも悲しい生き物なのか。それとも本能なのか。
とにかく、これで私たちの関係は顔見知りにランクアップしたんだけど、それでも私は自分が彼とお付き合いするなんて夢想もしなかった。
だって釣り合わないもの。
ルックスはせめて並に分類を希望。スタイル、バストは数値上ではそれなりだが腰もある。身長、できればあと三センチ。
外見で言えばほぼその他大勢で、性格は自他共に認めるコメディ気質のこの私となんて、選択肢内の登場だって有り得ない。
恋愛アドベンチャーゲームで言うなら、明らかに三人くらいで固まってバカやってる端役娘B。たぶんボイスも無くアニメ化の際には忘れられるか風景に台詞無しで三秒くらい登場するくらいの役柄。
しかし誰が言ったのか、時に現実は想像の斜め上を行くらしい。
私たちが本格的に付き合う事になる起因は、二年のクラス替えで同じクラスになった事だろう。何の因果か神か悪魔の悪戯か、座席までも近いと言う事もあって面識率は大幅にアップした。同じ部活だから当然会話の増量は当社比で神武景気並の成長率を叩き出した。
また、私と彼は自然と一緒に行動する機会も増えて行った。さすがの私もほんの少しだけ、その状況に酔ってみたりした。本当にちょっとだけ。
ところで、ちょっと先の話になるけれど、我が暁月学園高等部では二年の十一月に修学旅行が企画されている。
普通なら修学旅行って期待で一杯なイベントの筈。しかし、旅行先を楽しみにしている人口率は低い。特に女子が低い。修学旅行なんて京都だろうがイタリアだろうがグラウンドゼロだろうが、さほど大きな違いは無い。共学の学校の修学旅行において最重要なのは、『何処に行くか』よりも『誰と動くか』でしょう?
ランクを付けるなら、最低ランクがどうでもいいグループ。これになったら悲惨なのは目に見えている。中間にはまあ仲良しグループってところか。
そして栄えあるトップは無論カレカノ。そのちょい下に、気になる相手ってのが入る。ここ、極めて重要。
当然の話ではあるけれど、修学旅行はクラス単位行動が大原則である。だから、彼氏彼女と修学旅行を満喫したいのなら二人が同じクラスに居た方が圧倒的に都合が良いのだ。
つまり、裏を返せば、今フリーならばクラス内で見付けるのがベストと誰もが考える。
そして、その人気は当然、彼のような美形で性格良しのフリーランスに集まるに決まっている。
言わば新学期最初のクラス替えは多くの人間を振るい落とす天の裁断であり、同時に争奪戦の開始を宣言する星取りの鐘だったのだ。
最初は表面上では大きなうねりは無いように見えた。
しかし、水面下の攻防戦はすでに激化していた。表に立てば目立つから、密かに攻略を開始しようとして、同じ事を考えた連中とブッキングして結局表沙汰になって裏表もなくなり、すぐに戦いは表面に現れた。
先手必勝のお弁当が飛び交い、プレゼントが爆撃のように降り注ぐ、正に地獄絵図だった。主に相手無しの男子にとって。
大変なのは彼も同じ。女ったらしなら上手く立ち回るだろうけど、彼にはどうもそう言う資質は無いらしく、何とか爆撃を避けようと逃げ回っていた。
で、そんな優しい彼が逃げ込む場所は、辛うじて中立区域指定である映研領土の視聴覚準備室。
ま、あの状態じゃあ誰を選んでも角が立つのは目に見えている。いや、むしろ誰かのを受け取りでもしたら、それを覆すべく物量攻勢が更にエスカレートする危険性すら孕んでいる。
いやいや物量ならともかく、下手を打てば身体を張る奴が出ないとも限らない。そして、今でこそ彼を狙う女子は彼を見ているだけ。でも情勢が激変すれば女生徒間で仁義無き戦いが始まらないとは言い切れない。
視聴覚準備室なら関係者以外は入室禁止だし、クラスメイトは私だけ。もちろん私は争奪戦に関しては観戦客なのでド安牌。貢物を出した事すらない。
そりゃあ数ヶ月前とは随分と違う。同じ部活で同じクラスなんだからそれなりに親しいけれど、だからと言ってカレカノな関係を意識するほど自意識過剰ではない。
「大変だねー、天然ホストはさー」
「まだ誰からも貰ってないけどね」
私の嫌味もさらりと受け流す。
しかし、そー言う態度を取られると、私としてもウケを取りたくなるのであって。
私は彼に冗談混じりでこう言った。いや、その時は本当にギャグ一〇〇パーセントだったね。
「なんならさ、私と付き合おうか?」
「うん良いよ。嬉しいな」
………これをどう判断して良いか理解できなかった。言った自分が顎を外すくらい驚いていたら世話は無いんであって。
「……ええとだね。念の為言っておくと、今のは一緒にどこかに行く、と言う意味じゃなくてだね」
軽くジャブを放ったら顔面にえげつないカウンターパンチを貰ったようなもので、私はパンチドランカー障害を発生したかのごとく混乱してどうしようもない事を訊き返していた。
「男女交際するって事だよね」
にこやかに微笑まれた。私の自己防衛システムもあっけなく破壊される。
「あぅ……ぅあぅぅ」
声も出ない。
頭の中は疑問符のジャンクデータで大量に埋め尽くされ、正常に作動しなくなった。私と彼を結びつける理由も状況も客観的情報も何も無い。それが無制限に頭の中で繰り返され、それでも彼の言葉がそれらすべてを否定する。それを読み取りできなくなったCDみたいにノイズ混じりで繰り返している。
冷静になんてなれる訳がなかった。
ここから先はほとんど記憶が残っていない。ただ、覚えているのは次の彼の言葉だけ。
「僕は……陽凪さんが好きなんだ」
トドメだった。熊をも殺せるストレートを喰らったみたいに脳が揺さぶられた。思うにこんなに簡単に人間を倒せる言葉が他にあるだろうか。
幻聴でテンカウントが聴こえた気もするなー。
で、それが、遡る事二週間前の四月半ば。
夢か幻か。家に帰ってからもその事が頭から離れなくて、眠れない夜を過ごして、次の日学校に登校して見たものは、彼がプレゼントやお弁当などを断わっている光景だった。
それだけならば昨日までと何も変わらない。
が、断わる文句が変わっていた。
「ごめんね。僕には付き合っている人がいるんだ」
私がその光景に足を動かせなくて立ち止まっていると、彼が私に手を振った。
「おはよう、陽凪さん」
その挨拶で、彼が誰の事を言っているのかそこにいる全員が理解したと思う。
ついでに、それには私も含まれてるんだけど。
彼が交際を堂々と言い始めると、最初は確かに騒然と、しかしそれが私と言う大穴ですらなかった存在だと知れると、何だか価値観が砕けたらしくザラザラと集団は崩れていった。
まあ、乱入したシマウマが本命穴馬差し置いてダービー制覇したようなものかも知れない。
しかし、逆にそのせいなのか、思いのほか私の虫除け効果は高かったらしく、ゴールデンウィーク前には、私たちの仲はほぼ公認になっていた。
いや、でも始めの頃は『美人と珍獣』とか言われたけど。もっとも、私は私で今みたいに乙女回路がブンブン回って光るとは思いもしなかったので、その喩えには何となく納得したり頷いたりした。
*
そんな訳で、私たちはゴールデンウィークに初デェトとなったのでありました。
………因みにではありますが、私に取っては人生通算初デェトだったりする………ははは。
お父さんとデートはノーカンで。
「良かった。ちょうど始まるところみたいだ」
駅前から少し歩いた所にある、できたばっかりのシネコンに駆け込んだ私たちはほっと一息をついた。チケット及び市場価格三倍強のソフトドリンクとポップコーンを手分けして買い、座席に着いた。丁度そこで照明が落ちて予告編開始。本当にギリギリだった。
薄闇の中で彼の規則正しい静かな息遣いが聴こえる。
で、ドクドク鳴っているのは私の心臓。あ、いや、生々しいのでハートに訂正。ルビ振っといてルビ。
………ところで、映画館の手摺って、よく恋人同士なんかが手を重ねるけれど、あれってどちらから求めるべきなんだろうか。こぉ~、間にあるヤツに先に手を出した方が求めてるって訳でしょ?
などとスクリーンに何とか集中しているつもりでそんな事を思案している私。そんなこんなをしている内に本編が始まった。
『チェエエエエエエエエェェェンジ! バッタァァァァァァァアア・ワァァァァンッ!』
………ハイ。本日の鑑賞タイトル。『真バッターロボ対ネオキッカーロボ 劇場版』。
七〇年代の熱い勢いとバイオレンスの匂いがプンプンするロボットアニメである。正直どこから予算が出て劇場版になったかすら怪しい出物。
………いや、だってさ。定番のラブロマンスは今年のGWは不作。
ホラーは普段部活でギャハハハ笑いながら「貞子マジ怖ーっ♪」とか言いながら観ていたのをすでに見られている訳で、今更カヨワイ乙女を演じるのは無理がある。
悩みに悩んだ末、運命を決めたのが私のコメディ気質だった。ウケ狙いでこのコテコテなロボットアニメを提案すると、すんなり通ってしまったのだ。
……私って、やっぱりバカだろうか?
ああ、初デェトでロボットアニメ。私ゃ何処のアキバ系ですか?
全く、自分で提案してトラウマにしていたら世話は無い。アニメでもせめて金獅子賞監督作品ならばまだ言い訳もできるけど。その場合、子連れの方が多そうで、それはそれで雰囲気台無しっぽい。ははは、考えてみ。子供たちが大合唱でテーマ曲を歌う中でデートする高校生カップル。
しかも、そんな外面の悪さを余所に、案外面白く観れてしまうのだからなんか腹が立つ。情熱を分かり易くぶち込んで作られているからか。普通のテレビドラマの数倍面白い。
『これから貴様に地獄を見せる男だあっ!』
顔面傷だらけの男が凄い迫力で言い放つ。実際ロボットアニメだから子供向けかと思ったらヤクザ映画顔負けのハードバイオレンスで、ロボットバトルだけではなくアクション性も高い。プロレス技で、空手で、真剣で、戦闘員がぶちぶち潰されていく。登場人物が男も女も皆揃って変な方向にハイテンションで、もろに私のツボ。熱いぜ。熱くて死ぬぜぇー!
そんな感じで小一時間ほど経っただろうか。沸騰する様な熱い物語がラスボス登場でいよいよ佳境に入るところで、横の扉から誰かが入って来たのが見えた。
薄暗い空間に一瞬光が差し込む。
(………まったく、映画館のマナーも知らんのか、最近の若者は)
そんな事を考えた私の目は、入ってきた人物に釘付けになった。
(あれ……彼って、確か………)
見覚えがあった。
私が暁月学園中等部に居た時に同じ学年に転校して来た男子で、名前は白輝速飛。
どこのチーム名かと質問したくなったので一発で名前を覚えた。
剣也に負けず劣らずのワイルド風味国産美形だけど、こっちはあんまり人気が無い。
何でかって言うと、彼の態度がストレートに冷たいからだ。転校して来てから結構な数の女子がアタックかけたみたいなんだけど、どれもこれもあっさりと断わられたらしい。
それどころか、男友達もいないんじゃないかと思うほどいつも一人。クールで孤独が似合うって言えばカッコイイと感じるけど、あいつはどこか近寄り難い危険な雰囲気を纏っている。
ちなみに、ここまで詳しいのは私が白輝速飛マニアな訳ではない。美形情報なんて女子の間ではひかり通信レベルで飛び交うのだ。ネットなんて足元にも及ばぬ。この私が詳しいのだから相当な物だと思ってほしい。
惜しむらくは尾鰭背鰭胸鰭が付いて、進化の秘法よろしくメダカは出目金、場合によっては錦鯉になってしまう場合もあるのが欠点か。エンターテイメントとしては悪くないけど、情報の信憑性に関してはそう高くはない。
彼の場合、女に冷たいのは愛する男がいるからだと言う説まで流れている。腐女子間ではその彼氏が年上、年下、実は同学年の誰か、などで不毛な論議を交わしていたりする。
(ふーん………こー言う映画を観に来るのね~。あんまりイメージに合わないんだけど)
どっちかと言えば族物とかチャンピオン系ヤンキー作とかマガジン系漢気物実写が似合うけど。
って、私ってばデート中に他の男の事考えてどうする。
なんて葛藤していると、手摺の側で待機していた私の手がきゅっと握られた。
(………え、ちょ、ちょっと、マジ?)
結構大胆なアプローチに、私の頭はあっと言う間に沸騰開始。電子レンジもビックリのスピードだ。
こうなると、もうぜんっぜん映画に集中できる筈がなくて、気が付いたらそのまま手を繋いだまま映画館を出ていたのでありました。
恥ずかしくてまともに彼の顔を見れなかったりしたけど、個人的にはコレも青春っぽいかなー、とちょっとだけ思ってしまいましたよ。
恋愛って凄いんだぜ?