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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

図書室

作者: かがみ

目の前は、真っ黒で何も見えない。

何も聞こえない。

何も感じない。

ここは、どこだろうか。

今は、いつなのだろうか。

今とは、なんだ?

わからない。

どうやら、全て忘れてしまったようだ。

何も思い出せない。

なんだろうか。

ひどく眠い。

もう寝てしまおう。

寝れば何か思い出せるかもしれない。

そして、僕は、そっと目を閉じた。

その時だった。

僕は、全てを思い出した。


僕、笠野慎吾は、東京のごく普通の高校に通い普通の学校生活をおくっていた。

そんなある日出来事だった。

その日の僕は、珍しく遅刻をした。

学校の投稿完了時刻は、8時40分だ。

そして、僕が学校に着いたのは、8時50分。

完全に遅刻だ。

先生に怒られるだろうなあと学校の門を通過すると、そこには、僕の唯一の親友である新田正樹が立っていた。

「そんなとこで何やってるの!?」

僕が声をかけても反応は、ない。

なんだか寒気がした。

すると、校舎の2階、図書室からものすごい大声が飛んできた。

「そいつから離れろ!危険だ!」

と。

僕は、何を言っているのかさっぱりわからなかったが、なんとなく今の正樹には、近づいては、いけないような気がした。

僕は、走ってとりあえず自分の教室へ向かった。

僕の教室は、3階で向かう途中、通り過ぎるクラスが2つ程あるのだが、その両方に生徒の姿は、なかった。

おかしいとは、思ったが今は、早く自分の教室に着くことで頭がいっぱいだった。

そして、いざ教室に着いた時、その理由に気がついた。

ひどい有様だった。

僕の隣の席の松山くんは、胴体を引き裂かれ、後ろの席の唯一仲の良かった女の子の白石さんももう原型をとどめていなかった。

誰も生きている人がいないことなどひと目でわかるレベルだった。

僕のクラスは、僕以外は、いつも通り出席していたようだった。

僕は、怖いのか、悲しいのかよくわからない感情になり、座り込み、大量の涙が出た。

この後どうすればいいのかなど考える余裕などなかった。

その時だった。


「しんご〜、しんご〜」


正樹の声がどこからか聞こえてきた。

僕は、ハッとなり、辺りを見回した。

しかし、誰もいない。

ショックで幻聴でも聞こえたのだろう。

僕は、そう思った。

もうどうすればいいかわからない。

とりあえず警察に連絡しようか。

そう思った時だった。

さっき校門を通った時、図書室から聞こえた声を思い出した。

図書室へ行けばなにかわかるかもしれない。

僕は、図書室に行こうと振り向いた時だった。

そこには、正樹がいた。

僕は、全身の血が逆流するような感じがした。

僕は、走り出した。

とにかく、ここから離れなければ。

本能的にそう感じていた。


「待って!」


正樹が追いかけてくる。

とにかく走った。廊下をずっと真っ直ぐに。

すると気がつけば、図書室の前にいた。

僕は、ホッとし、ドアを開けた。


なぜそこで気づかなかったのか。

気づいていれば、こんなことには、ならなかったのに。


そう、気づいている人もいるかもしれないが、図書室があるのは、2階で僕の教室の廊下を真っ直ぐ走っても着くはずがないのだ。

つまり、僕は、今、あるはずのない図書室にいるのだ。

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