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拓也のジャーナリストとしての活動は、朝起きてからすぐに始まる。朝食を食べながらニュースを見て、世界情勢を把握する。そして、コーヒーを飲みながら新聞を読む。新聞の方がたくさん情報が知れて好きだ。記事の数が、テレビと比べるとかなり多い。大きなニュースから、地域のちょっとした情報まで多岐にわたる。ジャーナリストは、アンテナを敏感にして情報を逃さないことが大切なのだ。
今日も、この街の連続失踪事件についての記事が掲載されている。失踪したのは、八十代の女性だ。一緒に住んでいる息子の話によると、朝起きて部屋に行くと、姿が消えていたのだという。その女性は重度の認知症を患っており、自宅療養中だった。十年以上、息子一人でお世話していたのだという。警察は、女性が外に出てしまった所を狙われたか、息子が何らかの行動を起こしたと見て捜査をしている。
だが、拓也は別の考えを持っていた。その息子は、人形を使ったのだ。呪いの人形を使って女性をこの世から消したのだ。動機は間違いなく介護疲れだ。
先日、クラスメイトの別海が例の廃屋へ入っていき、そして人形を持って立ち去ったところを目撃した。別の日に問いつめると、呪いの人形の話しを彼は認めた。恨みを持った者を消したことを認めた。
ネットにいくつも投稿される、人形売りの少女に関する情報。それらはおそらく、人形を使った者が書いたのだろう。今まではそれぐらいしか有益な情報がなかったが、今回身近な人物から話を聞くことが出来た。状況判断にしか過ぎないが、彼が人形を使ったのは間違いない。
今一度、この事件を振り返ってみよう。拓也は、コーヒーを一気に飲み干すと、新聞を閉じた。
この街で起きた最初の失踪事件は、今から一年ほど前だ。
行方不明となったのは、四十代の男性会社員。妻子持ちで、なかなか寝室から出てこない旦那を心配して奥さんがのぞくと、部屋がもぬけの殻になっていたらしい。
警察では当初、夜中にこっそり抜け出した旦那さんが、出先で何らかの事件に巻き込まれたという線で捜査していた。だが、調べを進めると彼が浮気をしていたことが発覚した。相手は、同じ職場の二十代の事務職。職場の人間から事情を聞くと、かなり深い関係にあったという。
事件は、誘拐事件から殺人事件へと切り替わった。浮気のことを知った奥さんが、旦那を殺して隠したのではないか。そうして奥さんの事情聴取を何回も行った。
しかし、半年の捜査の結果、まったく証拠が見つからなかった。アリバイこそ出なかったものの、彼女が犯人だと決定づけるものが存在しなかったのだ。その事件は迷宮入りとなった。
第二の事件は、最初の事件が起きてから一ヶ月後に発生した。
姿を消したのは、三十代の男性だ。彼はトラック運転手で、交差点で幼児を跳ねて死なせてしまった。現行犯逮捕された彼は、素直に罪を認めた。当然、子供の両親は極刑を求めた。そのための署名活動を数え切れないほど行った。
しかし、その運転手はお酒を飲んで運転していたわけではなく、過酷な労働環境による睡眠不足も考慮すべきとの弁護士の意見が通る形となった。また、当時その幼児に同伴していた母親はスマホでメールをしていたという目撃証言もあり、保護者の子どもへの管理徹底がなされていなかったことも指摘された。ネットの掲示板では、「運転手が一番の被害者だろ」という意見も飛び交った。その結果裁判員裁判で、両親の求めていたものよりはるかに軽い刑となってしまった。
もちろん両親は控訴した。しかし、二審も同様の結果となったらしい。
運転手は二審判決後拘置所へ送られた。だが数日後、その運転手が突如所内から姿を消してしまったのだ。脱獄したのではという憶測が飛んだが、そのような形跡が見られなかった。
このニュースは、全国紙でも大きく報じられた。謎の失踪事件として、専門家による調査が行われた。しかし、そのからくりが暴かれることはなかった。オカルトめいた話しもあったが、信用性がないとして日の目を見ることはなかった。
拓也は、情報をまとめたパソコンのファイルを眺めていた。当時報じられたニュースのURLや、新聞記事の概要をまとめている。
ざっと見ると、どれもこれも不可解な事件ばかりだ。どう考えても、理屈では解決できそうもない。超次元的な力が働いているのではと、彼は最後にそうつづっている。
発生した事件の日時がバラバラで、被害者の関連性もない。だから、警察は捜査に手をこまねいている。
彼は、ネットのうわさを信じることにした。呪いの人形なんてものがこの世に存在するとはまだ信じられないが、実際にそれをやったという人間が身近に現れたのだ。信じないわけにはいかなかった。
呪いの人形を渡している人物がいったい何者なのか。若い子供だという情報がある。ますますオカルトめいてくる。
とりあえず、例の廃屋にもう一度行ってみよう。今度は、あらゆる手段を使って強制突入する。監視していた時、確かにそこへ入っていく背の高い外人を見たのだ。あそこには人が出入りしている。
拓也は、「呪い 解く 方法」とネットで検索してみた。こうなれば、オカルトに頼るしかない。お守りでもお札でも、呪いに立ち向かう方法を見つけてやる。
2へ続きます。




