クッキー
最近、四人のことが可愛く思えてきた平太。
今回は、平太のお話。
朝。
平太は兄(凌平)に起こされる──
「おい。起きろ」
「……ん」
「朝だぞ、平太郎──」
バッと掛け布団を剥がす。
「ぉはーす……兄ちゃん……」
「起きたか太郎」
「いや、平太ね……」
「学校遅れるぞ。早くしろよ」
「うぃ──ぶほッ?!」
去り際、平太の顔に掛け布団を投げつける。
「ははっ。目、覚めたろ☆」
「……」
たまに性格が悪い。
*
「おはよー……」
「おはよう、平太。凌平、忘れ物はない?」
「あぁ、多分ない」
「そ。気をつけて行くのよ」
「はいはい──あ。今日多分講義長引くかもしれないから、遅くなる」
「そう。わかったわ」
「行ってきます──」
凌平は大学一年。
夢に向かって頑張っている。らしい……
「平太もご飯食べたら行きなさいよ」
「ん――」
*
そして、学校。
平太が面倒を見るのは、主に放課後。
たまに昼休みも行く。
なので、普段は普通に授業を受けている──
「平太」
「おお。なんだ明良」
「次、家庭科クッキー作りだってよ」
「マジか──」
「どうした?」
平太が一瞬考え込んだので、明良は首を傾げる。
「いや、余分に貰えっかなと思ってさ」
「俺の分やるよ」
「マジでか! ありがとな」
「気にすんな。俺いらないし──」
*
そして放課後。
平太は保育ルームに来ていた。
「今日はおやつ持ってきました」
「まあ。どうしたの? 調理実習?」
「はい。余分に貰えたんで──」
と袋を掲げる。
「平太ー、おかしー?」
「俺はおかしじゃないからな? クッキーだよ」
「ぼくのは?」
「あるよ」
「あたしは?」
「わたしは?」
「大丈夫。みんなの分貰って……ん?」
袋の中を見ると、足りなかった。
明良から貰うのを忘れたようだ。
「ごめん、ちょっと足んないかも……」
四人がしょんぼりした顔になる。
「大丈夫大丈夫! まだ明良いるし……」
「明良?」
「そ。友達──」
その時だった。
「失礼しまーす。平太──」
「明良だ」
と平太が言うと、四人が明良の持っている袋を見て、目をキラキラさせていく。
「お、この子たちが子どもだちか。ちっちゃ……」
『おかしー!!』
ワーッと明良を囲む。
「うおっ?! なんだ?!」
「明良、おかし!」
「明良!」
「明良お兄ちゃん!」
「明良お兄ちゃん」
「あらまあ──」
と初枝が微笑む。
平太はちょっと苦い顔をする。
「平太! 助けて! 囲まれると案外怖い!」
「へ? あ、おう──」
袋を受け取り、テーブルに広げる。
「じゃ、飲み物準備しましょうか──」
と手叩いて、初枝が取りにいった。
「明良、遊べ!」
「へ? てか名前知らないんだけど?」
「そいつが辰。で、こっちが薫。おてんばな彩、大人しい杏」
「お、おお──」
「はいはい。食べましょ」
初枝が飲み物を持って、テーブルに並べる。
「たべるー!」
一斉に自分の椅子に座る。
「はい。みんなでいただきます──」
『いただきまーす』
平太と明良は四人を見守る。
『……おいしーい!!』
「うん。おいしいわね」
初枝もにっこり笑う。
「よかった──」
「嬉しそうだな」
「は? 俺?」
「そうだよ──皆、これ平太が作ったんだよ」
「平太が?」
「あ、明良も作っ──」
四人はバッと平太を見て、
『平太、ありがとー!』
と笑う。
「ど、どういたしまして……////」
平太は恥ずかしくなり、顔をそらす。
「プッ。なに照れてんの?」
「いや……ちょっと//」
嬉しくて顔がニヤけるなんて、絶対言えねえ! と平太は下を向いたまま思った──
*
「楽しかったわ」
「そっか──」
帰り道。明良が笑って話す。
「でも、たまにでいいな。部活もあるし。てか、疲れる……」
実はクッキーを食べたあと、ヒーローごっこで明良はコテンパンにやられたのだ。
「はは。そっか」
「おお。んじゃ、またな」
「おう──」
明良と別れてから、平太はこれからも頑張ろうと思うのだった──
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