メリーゴーランドハイパー
保育ルームに行くのが、日課になってきた平太。
今回は、彩のお話。
「ん?」
保育ルームに入って、平太は首を傾げた。
初枝が居ないのだ。
「梅田さんは?」
「きゅうようだって」
「かいぎ」
「まっててって」
「そっか。何する?」
「なんでもいいぞ!」
「ぼくも」
「わたしも」
「そっか……彩は?」
「おひめさまごっこ!」
と彩が笑って言う。
「おひめさまー? 彩が?」
「なによー!」
「にあわねー」
と辰が笑う。
「おんなのこはみんなおひめさまだって、せんせーいってたもん!!」
「それはおせちだな!」
「お世辞な」
と平太。
「彩ちゃんかわいいよ!」
杏が目を輝かせてうなずく。
きっと、頭の中でドレスアップした彩を想像したのだろう。
「杏ちゃんのがもっとかわいいよ!」
彩も目を輝かせてうなずく。
「じゃあお姫さまごっこやるか」
「おれらはー?」
「王子だろ? 辰王子と薫王子」
と平太は笑う。
辰は執事に迷惑をかけ、薫は読書好きの大人な王子だなと平太は思った。
「平太はひつじか?」
「執事な」
「平太お兄ちゃんはしつじね! あたしの!」
と彩がクルリと回る。
「え? マジで?!」
「うん!」
「平太お兄ちゃんカッコいい!!」
と杏が目をキラキラさせる。
それに負けて、平太は渋々、
「わかったよ……やってやるよ。完璧な執事をな!!」
と開き直った──
*
まず、オシャレしなきゃね! という彩の提案で、厚紙を使って辰と薫の冠を作る。
「よし。お前らはそれで終わりな」
「おうかんか?」
「おう。辰は赤な。薫は黄色」
「レッド! おれつえーから!」
「いや、戦うわけじゃないからな?」
「に、にあうかな?」
と薫が黄色の冠を頭に乗せる。
「似合う似合う」
「……はは//」
照れたように笑って、背を向ける。
「平太お兄ちゃん、スカートにかざりつけたい」
「お嬢様。そのようなことは私にお任せください──」
と彩が持っていた折り紙の花を、スカートに貼る。
そして、作っておいた折り紙のかんざしを頭に飾る。
「どうでしょうか?」
「ふふ。にあう?」
「もちろんでございます」
「……////」
彩は平太を見て、顔を赤くする。
「どうした? 俺の執事カッコよかったか?」
と笑って冗談を言うと、
「うん//」
とうなずく。
平太は予想外の返答に、少し照れる。
「ははっ、マジか//あ、杏もやってやるからちょっと来い──」
と杏にもやってあげる。
「ありがとう!」
「どういたしまして。さて、準備も出来たことだし。パーティーやるか」
「ダンスパーティーだね!!」
「さすが彩だな」
「ふふ//」
「おれおどれねー」
「ぼくも」
「わたしも」
「どうする? 彩」
「……平太お兄ちゃんと、おどる」
「へ?」
平太は間抜けな声を出す。
彩はちょっとだけモジモジする。
「おどって、くれる?」
「……めちゃくちゃなリードしか出来ないぞ? それでもいいのか?」
「うん//」
「じゃ、失礼して──」
平太は彩を軽々と持ち上げると、たかいたかいのまま、グルグル回り始める。
「えっ?!」
「メリーゴーランド〜ハイパー!!」
「ふ、ぁぁぁあああぁぁぁ──」
彩が悲鳴に近い声を出したので、平太は止まった。
「大丈夫か?」
と彩を下ろす。
「ばかぁ」
「ダメだったか。大丈夫かと思ったんだけどな」
「もういいっ! おひめさまごっこやめる!」
と彩は飾りを取る。
淡い想いは、平太の『メリーゴーランドハイパー』によって、消え去った──
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