紙袋より
遅すぎなバレンタインネタ……です、はい。
平太に春が…………?
ある日、保育ルームに女子生徒がやってきた──。
「平太くん──呼ばれてるわよ」
と初枝が、なにやらニヤニヤしながら平太を呼んだ。
平太は子どもたちと遊んでいたが、なんですか? ちょっと待ってろな、と子どもたちに言って、初枝のもとに向かった。
「廊下に、女の子がお待ちよ」
「え?」
平太はちらっと廊下に視線を向け、そこにマフラーを首にした女子生徒がいるのを確認した。
「……」
「早く行ってあげなさいな──」
ほらほら、と初枝に背中を押され、平太は廊下に出た。
廊下に出ると、女子生徒は少し頬を赤く染めた。
「あ、あの、ごめんね、伊川くんに訊いたら、保育ルームだって言ってたから」
「あぁ、いいよべつに。そんな謝らなくて」
と平太は笑う。
女子生徒は小さな紙袋をもじもじさせてから、意を決したように口を開いた。
「こっ、これ……! よかったら食べてくださいっ! おいしいかわからないけどっ!」
ずいっと、紙袋を平太に差し出して俯く。マフラーから覗く耳は、少し赤くなっていた。
平太はそれをおずおず受け取って、お礼を言う。
「あ、ありがとう……わざわざ」
「いや、私が勝手に作って持ってきただけだから、気にしないで!」
「そ、そっか……」
「うん! じゃ、またね──!」
恥ずかしそうにそう言い残して、女子生徒は駆けていった。
「……貰っちゃった」
紙袋を見て、平太は少し恥ずかしくなる。
「…………戻ろ」
と平太は踵を返して、保育ルームに戻った。
保育ルームに入ると、初枝がにこにこしていた。
子どもたちは、奥で遊んでいる。
「どうだった?」
「あ、貰いました……」
にこにこしている初枝に紙袋を見せると、初枝はぱちんっと手を合わせて言った。
「やっぱり? いいわねぇ、青春って感じ!」
と初枝はなぜか嬉しそうに頷く。
「あれ? 平太がなんかもらってる! おれには?」
と辰が気づいてやってくる。
それに続いて、三人も来る。
「平太くん、チョコ貰ったのよ」
「チョコ? いいなー、平太くれー」
「誰がやるか──」
と手を伸ばしてくる辰の頭を押さえて、紙袋をリュックにしまう。
「平太、ぼくには?」
「言ったろ、薫にもやらん」
「あたしは?」
「彩にもない」
「わたしは……?」
「杏にもない──てか、彩と杏はあげる側だろ?」
と平太は苦笑いする。
「そっか」
「そうだね」
と彩と杏は顔を見合わせて頷く。
そこに初枝がお菓子を持ってきて、五人に言った。
「はいはい、皆で食べましょう──チョコケーキ作ってきたの」
久しぶりに作ったわ。と初枝が笑ってテーブルに置く。
「さあ皆、席に着いて」
『はーい!』
平太の紙袋への興味が嘘のように、子どもたちは笑って席に着いた。
「じゃ、平太くんは飲み物持ってきて」
「はい──」
平太が飲み物を取りにいっている間に、初枝は手際よくチョコケーキを六等分し、紙皿に分けていく。
「持ってきました」
「ありがと──はい、じゃあ皆手を合わせて」
平太が飲み物を注ぎ終わってから、初枝が指揮をとる。
皆で手を合わせ、一緒に言った。
『いただきます──』
そしてそれぞれチョコケーキを口に運んで、感想を口にする。
「おいしい!」
「薫、口元についてるぞ──」
と平太は薫の口元を払う。
「うまっ!」
辰はぽろぽろとカスを落とす。
「辰、食べ終わってから喋れ」
「おいしい〜」
「うんうん!」
彩と杏は頬に手を当てて笑う。
「うん。おいしいです」
と平太も笑って言った。
そんな五人を見て、初枝は満足そうに微笑む。
「ふふ。よかった──」
そして初枝もケーキを口に運んで、おいし。と呟いた──
チョコの数。
明良「ん? 二つ(マネージャーと女子生徒から)」
平太「二つ……(女子生徒と母親から)」
司書さん「三つ、ですかね(女子生徒から)」
凌平「五つ(女子学生から)」
※ちなみに、前に出てきた男子三人は、ゼロ。校長は妻から一つ。
次回は、ホワイトデーを予定しております。




