やっぱり……
かくして、子どもたちの面倒を見るお手伝いをすることになった平太。
彼は上手くやっていけるのか?
平太の通う築山高校には、保育ルームがある。
保育ルームは、高校の外れに位置していて、そこでおばちゃんの初枝(先生)が面倒を見ている。
保育ルームの子どもは、高校の近所に住んでいて、両親が共働きの家庭だ。
そして今日も、子どもたちは騒がしい──
「はぁ……めんどくせえ──」
平太は愚痴をこぼしながら保育ルームに向かう。
「平太ー」
「平太」
「平太お兄ちゃん」
「平太お兄ちゃん!」
「げっ──」
平太は廊下で待ち伏せしていた四人に、部屋に入る前に見つかってしまった。
「あそべー」
「ほん、よんで」
「おままごと」
「かくれんぼ」
「一斉に喋んな。わかんねえ──」
四人に引っ張られるように、保育ルームに入室。
中では、初枝がタオルを畳んでいた。
「こんちは……」
「あら。こんにちは、平太くん」
初枝がにっこりと微笑む。
「皆起きたばっかりだから、体力が有り余ってるのよ。頑張ってね」
「え? ぶほっ──」
「平太よえー!」
辰がお腹にパンチをいれた。
「っんの、ガキ!」
「こっちまでおいでー!」
「待てこのっ──」
「ほんよんで」
「一人で読めって!」
「おままごと……」
「アイツを仕留めたらな」
「かくれんぼは?」
「それも後!」
平太はちょこちょこ逃げ回る辰を捕まえて、ほっぺを軽くひねる。
「参ったか!」
「いひゃいいひゃいっ!はなせバカあっ!」
「もうやらないか?」
「やんらいやんらい!」
「ならよし──」
と辰をおろす。
「平太のバーカ!」
「痛っ!! くそガキ!!」
ペチンと頭を軽く叩いた。
「まあ……!」
「あ……」
「いっ……ふぇっ、平太の……っばがああああああっあああああ」
辰は泣き崩れる。
「自業自得だ──よし、薫、本読んでやる」
「でも……」
「いいから。杏と彩も──」
と泣いている辰を背にして、平太は本を広げる。
「昔々、あるところに……」
「あああああっ、ひっ、ばがああああああ」
「おじいさんとおばあさんが……」
「びえええええええっ、平太あああああっ」
「していると、なんと――」
「うわああああああ、びえええええええっ」
「うるせえっ!」
辰がビクッとなり、固まる。
「ちょっと平太くん……」
初枝が心配そうに声をかける。
「いいんですよ。これくらいしなきゃわからないんだから――」
薫と杏、彩は平太を不安げに見つめる。
「……なんだよ」
「平太……」
「平太お兄ちゃん……」
「平太お兄ちゃん」
「……んだよ。わかったよ……」
平太は固まる辰の前に座る。
「……ひっ……ふぇっ」
「何で怒ったかわかるか」
「ほん、じゃま、した……っから」
「あとは?」
「パンチ……したっ、から」
「じゃあ、しなきゃいけないのは?」
「うっ……ごめっ、なさい……っ」
「うん。良くできた──」
平太は頭を撫でる。
「ふふ──」
そのやり取りを見ていた初枝は、小さく笑った。
「ふぇっ……平太あああああっ、ごめ゛んなざいいいいいっ」
「うわ泣くなよ、鼻水汚ねえ!!」
「だ、だっでええええっ」
「わかったって! ティッシュ! 誰かティッシュ!」
「平太、これ!」
「これ!」
「はい!」
「ひとり分でいいよ?! 多すぎ!」
見かねた初枝が助けに入る。
「はいはい、皆ありがとう。辰くん、もうやっちゃダメよ?」
「うんっ──」
ティッシュで涙と鼻水を拭く。
「……はい、これで大丈夫」
「あんがとうっ、せんせー」
「はいはい──」
初枝はティッシュをゴミ箱に捨てる。
「……平太」
「ん?」
「おれも、いれて……」
辰が小さな声で言う。
「何?」
「おれもっ……! いれて!」
「……だって。どうする?」
平太は三人に聞く。
三人は顔を見合わせて笑うと
『いいよ!』
と答えた。
「だってよ」
「……うんっ//! あんがとー!」
辰はにっこり笑った。
「平太、つづき」
「おお――」
薫に本を渡されて広げる。
四人が平太の周りに集まる。
「川で洗濯を……」
「なんで?」
「いえにないの?」
「昔だから」
「おじいさんは?」
「山」
「なにしてるの?」
「芝刈り。で、洗濯していると……」
「ももたろう!」
「いや、まだ桃だから……」
「おにたいじ!」
「早いわ! 生まれてもないし! 梅田さん……!」
「いつもよ。頑張って──」
と他人事の初枝は笑う。
「あああ、めんどくせー!」
平太は本を投げ出し、叫ぶのだった……
どうだったでしょうか、
感想批判評価などなど、よろしくお願いします(_ _)
すると喜びます。