水でっぽう
水でっぽうで遊びます。
「最近、暑いわね……」
「ですね……」
保育ルームにもエアコンが設備されているが、まだ使わないで窓を開けている。
「あ。そういえば──」
と初枝が何か思い出したのか、イスから立ち上がり奥の部屋にいく。
そして戻ってきた初枝は、ぺちゃんこのビニールプールを抱えていた。
「うお! なんだそれ!?」
すると薫と本を読んでいた辰が、気づいて寄ってくる。
「ビニールプールよ。暑いし、ちょっと水遊びでもしようかと思って」
「へえ! いついつ? いつやるの?」
「そうねぇ、今日って言いたいところだけど、皆水着持ってきてないし……」
と初枝は考える。
「うん。明日にしましょう。皆、ちょっと聞いて──」
初枝は薫や彩、杏をこっちに向かせてから言う。
「明日水遊びするから、皆水着持ってきてね」
「プール?」
「そう。ビニールプール」
「わかった! あたしピンクのもってくる」
「わたしは、オレンジ」
「ぼくはみずいろ」
「おれあか!」
「うんうん。よろしくね──平太くんはどうする?」
と初枝は平太を見る。
「俺は、Tシャツと濡れてもいい短パン持ってきます」
「じゃあ決まりね。じゃあ私はこれを使えるかどうか見るから、平太くんはアレで皆と遊んで?」
と奥の部屋をちらりと目で示した。
そこには、お菓子を入れるような小さめのカゴが置いてあった。
「何ですか? アレ……」
「行けばわかるわ。じゃ、気を付けてね──」
初枝は、ふふふと笑って保育ルームを出て行った。
「……気を付けてって──」
何に……? そう思いながら、平太は奥の部屋に向かった。
小さめなカゴの中には、水でっぽうが入っていた。
「懐かしい。久しぶりだ──」
「うおお! てっぽうだ!」
「うるせえよ」
いつの間にか来ていた辰が、平太の隣ではしゃぐ。
「やんの? いまやる? やるやる?」
「やるよ。外でやるから、三人呼んでこい」
「ブ、ラジャー!」
「ブ、いらないから──」
辰は物凄い勢いで、三人がいる所に駆けていった。
*
水道付近。
水を容れて、一人ずつに水でっぽうを渡す。
「あれだぞ、嫌がる事はやっちゃだめだからな」
「はーい」
「いい返事だ。何かあとあるか?」
と制服から体操着に着替えた平太が訊く。
今日は運良く体育があったのだ。
「平太にもみずかけていいの?」
「まあ……体操着だから。いいぞ」
「よっしゃ!」
と辰が構える。
「あ、あとあれな。ここに水容れたバケツ置いとくから、空になったら自分で容れること」
「わかった」
「じゃ、始め──!」
平太のかけ声と共に、水でっぽうを撃ち始める。
「くらえ!」
「わあっ」
「杏ちゃんおりゃ」
「ひゃっ……彩ちゃんえいっ」
「やったなぁ〜」
和気あいあいと水でっぽうで遊ぶ四人。
平太は、懐かしいなぁと眺める。
そういえば、俺も兄ちゃんとやったっけ──
「ブッ──」
平太の顔面に水が的中する。
それと同時に、辰の的確な指示が飛んでくる。
「いまだ! たたみかけるぞ! みずがきれたら、かわりばんこにくみにいくんだ!」
『おー!』
「ちょっ……おまっ──」
止めるまもなく、水が平太を襲う。
「ぶふっ……い、……っ加減にしろ!」
「平太がおこったあ!」
「ごめんなさい!」
「だいじょうぶ?」
「あはは。びしょびしょ〜」
平太の顔含め、髪と体操着の半分が濡れていた。
「誰がこんなんなるまでやっていいって言ったよ?」
「やるなともいわれてないぞ!」
「ほお……、じゃあ──覚悟しろ!」
と平太が水でっぽうを二つ構えて、撃ち始める。
「にげろー!」
「わあぁっ」
「あははは」
「まってよー」
「待てこらあ──!」
このあとびしょ濡れになった五人は、初枝に少し叱られたのでした──
四人を追いかける平太を見かけた。
明良「何してんの……?(訝)」




