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俺とお前と7不思議  作者: 桑島 龍太郎
第1章 学校の7不思議
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第1章 スニーキング

「そうだけどよぉ……」

「足音とか変な音とか注意してね? 先生や警備員さんだったら追い出されちゃうから」

「ああ……わかった……おっとさっそく来たぜ」


 コツン……コツン……と廊下にゆっくりとして規則正しい靴音が響いてくる、この音の間隔だと巡回の警備員だな。

 俺とナイアスはそばにあった階段の脇に隠れてその足音をやり過ごす、ちらちらと見える明かりは懐中電灯だろう、一瞬ナイアスの前を照らしたが気付く事無くそのまま通過してくれた。


「今のはちょっと焦ったわね……急がないと時間がないよ」

「おい! 待てってばいきなり走るな!」

 靴音が遠ざかるやいなや階段を走って上るナイアス、だが足音は聞こえない……これが合気道なのか……


 変な所で感心していたらナイアスの奴、あっさり見えなくなってしまった。

 慌ててその後を追い、足音を立てずにゆっくりと、それでいて小走りに階段を上っていく。


 校舎は4階建てだが目的の教室は3階、1階上るごとに廊下をチェック、人が来ない事を確認して上へと急ぐ。


 良い……スパイになったみたいでとても心が躍る……足音が聞こえると壁に張り付き、物陰に隠れ敵をやり過ごす。

 正直足音などないのだが……気分を出すためにその足音を仮想する、剣闘においてのイメージトレーニングと一緒だ。

 これは病みつきになりそうだ、イメージで敵と遭遇しながら3階へ到達、目的地までおよそ3ブロック、体勢を低くし、扉の前に立っているナイアスの元へ駆ける。


「ベリアルなんでこんな遅いのよ……遊んでたでしょ」

「あ、遊んでないさ! 警備員の巡回が多くてな!」

「うそつけ! 私には足音なんて聞こえなかったよ? 怖がらせようとしても無駄よ!」

「すまんすまん! 悪かったからエリ絞めはやめで……」


 ギリギリと襟が首を絞めていく、これは合気道の技じゃない気がする……

 ある程度俺の首を絞めると満足したのかエリから手を離して教室の扉を見るナイアス。


「どうした?」

「閉まってる」

 あぁ、俺の忘れ物が教室にあると思ってるのか。それなら心配無用だ、こんな事もあろうかと……


「忘れ物ならこっちだ、長いからこっちに入れてるんだよ」

 目を丸くしているナイアスを横目に扉の横にある学生用のロッカーへ手を伸ばす。


 扉を開けて俺の分身、俺の魂の一部、仏剣(ほとけのつるぎ) 邪気払拭(じゃきふっしょく)を肩にかける。

「忘れ物ってその木刀!? 何に使うってのよ……」

「ふふふ、備えあれば嬉しいな、だ。これが有れば怖い物などない!」

「それを言うなら備えあれば憂いなしです。てかベリアル怖いの? へー怖いんだ」


 にやつきながら俺を見るな……あぁ怖いさ怖いとも! さっきまでノリノリでここまで来たが落ち着いて見てみると、なんだか、この闇が俺を不安にさせる。


 吸い込まれそうな闇とはよく言ったものだ、闇に染まった廊下の奥を見ているとまさにそう思う。

 緑色に灯る非常灯がアクセントになり一層不気味な光景になっていた。

 だが、それはナイアスも同じ考えだったらしい、彼女は俺の袖をしっかりと握りしめ、俺を見てこう言ったのだ。


「正直私も怖いよ……いざとなったら助けてね、ベリアル」

「あぁ……まかせろ……」

 ただ忘れ物を取りに来た、だとか夜遅くまで学校に残っていて、などの理由ならここまで怖がる必要はないのだが、いかんせん忍び込んだ理由が理由だ。


 それが俺とナイアスの心に影を落としているのは間違いなかった。

「さて、行くか! なぁに全部眉つばの話なんだ、きっと全部でたらめさ」

「そうよね! きっと誰かのいたずらなんだよ! 行くぞー!」

 お互いに無理やり言い聞かせて次の目的地、4階の音楽室へと向かったのだった。


 闇に染まった廊下をナイアスの持ってきた懐中電灯1つで照らしながら、2人の足音だけがヒタヒタと響く。

 ふとナイアスが歩みを止める、目的の音楽室はまだ先だ、一体どうしたんだ、と声をかけようとしたのだが、あいにく俺の喉から出たのは違う言葉だった。


「な、ナイアス……今足音しなかったか……?」

「べ、ベリアルにも聞こえた……?」


 そう、足音が聞こえたのだ、警備員のあの靴音では無く、素足で歩いているような音。

 ぺた……ぺた……ぺた……

 そう、そんな音だ、ゆっくりでは無く普通に歩く速さの足音だった。

 ナイアスが後ろを向き、その音のする方へ明かりを向けるとそこには……


「ベリアル……私の目おかしくないよね……アレ見えるよね……?」

「あぁ……はっきり見えるぜ……あの浮いてるのって……首だよな……」


 俺とナイアスは話しながらも無意識に後ずさりをしていた。

 教室1つ分の距離を置いて空中にふわりと浮かぶそれは……人体模型の首だった。


 これは反則だ、不意打ち過ぎる、物事には心の準備と言うものがあるのだ、それが無いとどうなるかと言うと……


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