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俺とお前と7不思議  作者: 桑島 龍太郎
第3章 異郷の戦場
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合流

腕時計を見ると針は20時40分を指していた、いい加減他の隊に遭遇してもいいはずなのに……まさか敵に見つかってやられてしまったのか? それとも暗闇でルートを間違えてしまったのだろうか? 少し不安を感じながら前進を続けていく。

 だが俺の考えは杞憂だったらしい、前方の暗闇に混じり俺達と同じ姿の集団が現れたのだ、見えた、仲間だ。

 周りに気付かれない為なのだろうか、テント等は張っておらず、焚火が数か所、そして低く設置された松明達が仄かにその姿を浮かび上がらせている。

 安心するのはまだ早い、俺達はこいつらと更に第3、第4師団への合流を果たさなければならないのだ。

「おい貴様等、休んでいる所で悪いがすぐに大隊長共に声をかけろ、これより我々はここを引き払い第3、第4師団への合流を目指す、理由は追って説明する、急げ! 何をぼけっとしているんだ! 走れ!」


 フローの言葉を受けて一気に慌ただしくなる兵達、俺達は右往左往する兵達の間を速足で抜けた後、休んでいた兵達の準備が終わるまでしばし休息を取ったのだった。

 そして合流を果たした俺達第1から第5大隊の面々は残りの17大隊の進路を変えるべく騎兵を使い、等間隔で展開しているはずの部隊へ伝令を送った。


「なぁフロー、第3、第4師団までどれくらいかかるんだ?」

 俺は素朴な疑問をぶつけてみた。

「真夜中までには着くはずだ、ただし足を止めている暇は無い、限りなく早足で進んでの憶測だがな」


 その言葉を聞いて時刻を確認すると約21時15分、3~4時間て所か、この部隊の進軍スピードを考えると1時間に約8km、多少ペースが落ちたとしても平均7kmで考えれば21km~30km圏内か……ぞっとする数字だな、だがフローは心配している顔でも無かった、軍人はこれくらい当たり前なのかもしれない。


 松明を掲げ、ガチャガチャと装備が奏でる音をバックミュージックにして大部隊が山の中を、平原を、丘の上を進軍していく、リズムよく鳴らされる甲冑のギター、騎兵の馬の足音は、不規則に色々なメロディを刻むカスタネット、パチパチと、松明から聞こえる音は手拍子の様でそれはさながら戦場のフラメンコといった所だ。

 俺はそのリズムに心を躍らせ、戦場でありながらも高揚感を覚える自分に驚き、戦争なんて他人事だと思っていた元の世界が逆に夢のようだった。


「人間変われば変わるもんだな、環境適応能力ってのは恐ろしい」

「何か言ったか?」

「いや、何でも無いさ。そんな事よりフロー、皆大分疲れてるみたいだが休憩は取らないのか?」

「あぁ、兵達には辛いだろうが仕方ない。それに休んでいる暇など無いと言ってあるからな、このまま進む」


 兵士達に疲れの色が見え始めて来た頃にはかなりの距離を進んでいた、賞賛すべき事に進軍スピードは出発と大して変っておらず、このまま進めば予定よりも早く到着するだろうと考えていた。

 それはフローも同じだったらしく、会話をしているその表情はかすかに柔らかさを取り戻していた。


「このままもう少し行けば第3第4師団の戦闘拠点に着くはずだ」

 フローがそう言うと兵士達の空気が引き締まった気がした、もうすぐ着く、そう聞けば足に自然と力も入る、兵達は気合を入れ直しスピードを上げて進んで行った。

 そして、辿り着いた。


 俺達が最初に行った虐殺をこちらの部隊も行っていたらしく、その戦闘拠点は小さな町の中に置かれていた。

 拠点にいた兵達は突然の客に驚いた顔を隠せずにいた、そして誰かが報告に行ったのだろう、前から師団長らしき人物が出迎えてくれた。

 フローがここに来た理由を簡単に説明するとその人物はすぐに理解したようでフローを連れてどこかへ行ってしまった。


 放置された俺はとりあえず水をもらい、喉の渇きを潤す、進軍中は一滴も水分を取っていなかった為、ただの水がもの凄く美味しい物に感じた。

 水をくれた兵に礼を言い、俺はリブロの姿を探し始めた。


 小さいとは言え2個師団の兵達が滞在しているのだ、見つけるのは容易ではないだろう、なので俺は先ほど水をくれた兵の元へ戻り所属を聞いてみた。

 帰って来た返事はリブロの大隊とは異なっていたのでどこに居るのか尋ねると、あぁ、と兵はすぐ分かったらしくその大隊がいる広場へと案内してくれたのだった。

 その広場では大宴会が開かれており敵地の真っただ中にいる緊張感は皆無だった、どうせリブロが計画したに違いない、案内してくれた兵に再び礼を言い、その大宴会に近づいて行った。

 見ればかなり屈強な体をした兵達が飲んで喰って騒いでいる、その風貌は兵では無くチンピラや傭兵に居そうな者達ばかりだった。

 1人の兵に声を掛けリブロの所在を尋ねる。

 が、

 なるほど、フローの言っていた意味が分かった、確かに荒くれ者だな。

 宴会を邪魔されたと思ったのだろうか、声を掛けた事が気に障ったらしく、返事と共に俺は胸ぐらを掴まれており視界いっぱいに目つきの悪い男の顔が広がっていた。

 そのやり取りに気付いた兵達がぞろぞろと周りを囲み、野次を飛ばしている。

 だが今はこんな茶番に付き合っている暇はないのだ、睨まれつつも再度リブロの所在を尋ねたのだが。

「おいおい、いきなり一般兵が俺達の宴会を邪魔した上に、リブロ大隊長の所へ行くだとぉ? 笑わせるなぁ! げはは! ここはテメェみてぇなひょろっ子が来る場所じゃねぇのよ! 帰ってママのおっぱいでも吸ってやがれ!」

 周りの兵達もその言葉に賛同し、次々に暴言を飛ばしてくる始末だった、はぁ……これが兵の言うセリフかね……少し俺はイラっと来た。

 いや、かなりイラついたのだろう、次の瞬間俺の拳はそいつの顔面をぶん殴っていた。

 しまった……やっちまった……ぶん殴った兵は2mほど吹き飛び、資材置き場だか知らないが木箱が積まれた中に頭から突っ込んでピクリとも動かなかった。

 普通ならこれで力関係が分かるはずなのだがさすが荒くれ集団、口々にぶっ殺すだの次は俺がやるだのと五月蝿い五月蝿い。


 喧嘩は好きじゃないがこれは上官として制裁を加えなければいけない、いや、ただムカついたから全員ぶん殴ると決めただけなのだが。


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