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俺とお前と7不思議  作者: 桑島 龍太郎
第2章 招かれた異郷人
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換金

 20分程歩いただろうか、中央広場なる所へ辿り着いた所でリブロが振り向き俺に質問を投げかけて来た。


「なぁ兄ちゃん、名前はなんて言うんだ? 身元不明だとこの街じゃ換金出来ねぇぞ」


 ウソだろ……やっと飯にありつけると思ってたのに……


「俺の名前はベリアル・ストライクスだ。他の街から流れて来たから身元なんて証明できる物もってねぇよ、どうすりゃいいんだ?」

「やっぱりなぁ……仕方ない、俺を身元保証人で立てろ、そうすりゃあ大丈夫だろう。こう見えてもこの街じゃそれなりに有名なんだぜ?」


 俺の顔を見つめ、ニヤリと笑うリブロ、裏が有りそうな笑みだが換金出来なければ意味がないので俺はリブロに頼る事にしたのだった。


「それじゃあ俺っちはここで待ってるからなぁ~いい報告待ってるぞぉ」

 ダンはそう言うと広場の真ん中にある噴水の側に歩いて行き、俺とリブロは換金所へ向けて再び歩き出した。


「ベリアルの出身はどこなんだ? キャリストか? ブルゴジアか?」

「いや……俺は……その……」

 どうする、異世界から来ました、と正直に言うべきか……それとも適当な名前を出すか……


「…………」

 リブロは先を促す事無く、俺の返事を待っていた、沈黙したまま歩いて行く。


「俺は……グレンアビスって所なんだが……知ってるかい?」

「……ほぉ……あの辺境にある村か……よくここまで来たもんだな、一人でかい?」


 ……なんてこった、口から出た適当な名前が付いた村が存在するなんて……奇跡過ぎるだろう……


「あ、あぁ! ここに来るまで3人旅だったんだが、どっかではぐれちまったみたいでな、ハハハ……困ったもんだよなぁ、アハハ……」

「そういう事だったのか、だから金が無いんだな? どうせ仲間に全部任せてた口だろう? がっはっはっは!」


 リブロの豪快な笑い声と共に俺は背中を激しく叩かれる痛みに笑いながら堪えていた……

 そんなやり取りをしている内に換金所へ辿り着く。

 換金したい旨を告げると、何やら書類を渡され順番に呼ぶから、と言われてしまった。


 意外に混雑しており、見ればベンチに座っている人がちらほら居た、少し時間がかかりそうだな、とリブロに言われ俺は大人しく待つ事にした。


「こんだけ人が居ても換金出来る奴はほんの一握りだ、知識が無い奴がそこらへんの洞窟で見つけた石を持ってくる事だって多いのさ、まさに一攫千金てやつだな」

 なるほど、言われてみると待っている人はそれぞれ荷物を抱えていた、大小の石ころや、よく分からない像を抱えてる人もいる。


「ベリアルはソレをどこで見つけたんだ? もしそれが本物なら発見場所やら詳しく聞かれるぞ」

「あ、あぁ……思い出しておくよ……」

 あっさり金に換えられると思っていたのに……そう甘くないか……詳しい事を聞かれたら知らぬ存ぜぬで通せばいいだろう。


 そと時、俺の名前が呼ばれた、そして俺が旅人だと伝えリブロが保証人として同行、こちらへどうぞ、と言われ別室へ通された。


 その部屋には革張りの椅子、木で出来た大きな机、机の上には天秤や、試験管、学校の理科室にありそうな道具がずらりと並んでいた。

 俺とリブロの後に3人の研究員風の人物が向かいの席に座り、俺が持ってきた物をこれから検査して本物かどうか、純度や重さ等を測り、それ相応の褒賞と交換する、と言われた。


 研究員に1円玉を2枚手渡す、初めて見るその硬貨に怪しい目を向けながら、検査を始めた。

 純度100%のアルミニウムだ、驚きやがれ、俺はニヤニヤしながら学者達の表情を見つめていた。

 だが重さは1枚たった1gだ、それがどのくらいの価値になるのか分からないがある程度にはなるだろうと俺は予測していた。

 学者の表情がみるみる青ざめていく、俺と硬貨を交互に見ながら、信じられない、と話し合っていた、どうやら検査が終わったようだ、別室で待っていてくれと学者に言われ、俺とリブロまたもや違う部屋へ通されたのだった。

「ベリアル……お前あれ……本当に価値がある物なのか?」

「知らないさ、俺はたまたま見つけただけだ、価値だって分からない」

「その割には自信有りって顔をしてたじゃないか」

「それはリブロの考えすぎだよ、ほら、来たぞ」


 扉が開く音がして1人の女性が入って来た、眼鏡をかけたいかにも偉そうな女性、俺はこういうタイプが嫌いだ。


「はじめまして、私はキュリオと申します。先程届けていただいた物質についていくつか質問させていただいても?」

 眼鏡を片手で直しながらキュリオと名乗った女性は話を続けた。


「あの物質は間違いなくアルミニウム、それも純度100%の。ベリアル様、貴方はあれをどこで?」

 やはりそう来たか、リブロの指摘通りの言葉に口元が緩む。


「それはですね、この街から少し離れた場所で見つけた物です、旅の途中でたまたま通りがかった所にたまたま落ちていました、草原の真ん中、遺跡の様な所でしたよ」

 俺は用意しておいたセリフを口に出した、これが通用しなければ後はもう知らないで通すしかない。


「詳しい場所を教えていただけないでしょうか? そうすれば調査隊を派遣出来ます、そしてあの物質が遺跡から発掘出来ればかなりの成果です、その際にはベリアル様への褒章も考えております、いかがでしょうか」

「場所なら教えますけど、遠いですよ?」

 かまいません、と強く言い寄るキュリオに俺がこの世界で目覚めた場所を教えた。


 もしかしたらその調査隊が元の世界に戻る手掛かりを見つけてくれるかも知れないからだ。

 1円玉は無いけどな。

 キュリオとのやり取りを終えた俺はリブロと共に部屋を後にした。


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