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俺とお前と7不思議  作者: 桑島 龍太郎
第1章 学校の7不思議
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第1章 人体模型と音楽室

「あはは……どうしようベリアル……腰が抜けちゃった……」

 この様になるのだ、凛々しい道着を着ながらもナイアスは廊下にペタリと座り込んでしまった。


 それでもナイアスが持つ懐中電灯は人体模型の顔をくっきりと映し出していた。

 胴体から膝、肘までの空間がぽっかりと空いた所から手足が伸び、懐中電灯で照らされながらも歩みが止まる事は無い。

 その言葉通りずんずんと人体模型はこちらへまっすぐ進んで来たのだ。


 だが……俺は見た、ナイアスがしっかりと光を当ててくれたおかげで。


「ナイアス、そのまましっかり照らしてろ」

「へ? ちょっちょっとどこ行くのよ!」

「うーるせぇ、今からあいつの正体暴いてやるよ、しっかり目を開いて見てろよ?」


 悲痛な声で呼び止めるナイアスをなだめながら人体模型の頭へ近づいて行く。

 そして……


「おいお前、目が閉じてるぞ。眩しいからってちゃんと前見ないと危ないぞ?」

 その人体模型には有るはずの無い肩を叩きながら、俺は足払いをかけてみる。


「ひゃんっ!!」


 ソレは、およそ人体模型らしからぬ可愛らしい悲鳴を上げて勢いよく床に激突したのだった。

 床に頭やら体やらを打ち付ける鈍い音が暗い廊下に響いた。


「いったああああい! 何するんですか! 思いっきり頭ぶつけたじゃないですかあ……」


 甲高い女の子の声、額であろう部分を押さえながらうずくまっている。

 はたから見れば胴体の無い人体模型が頭を抱えている状態だ。


「……………………」

 振り返るとナイアスが硬直しているのが暗闇の中でも分かった。


「んで、お嬢さんは一体ここで何をしているんですかね」

 未だうずくまる人体模型に質問を投げかける。


「あ、あたしは2年2組のラレスと言いますうう……実はあたしボディペインティングに凝ってまして……夜中にその練習をしていたわけで……」


「ボディペインティングっていわゆる自分の体に色を塗ったりするアレか? それがどうして人体模型のパーツなんかやってるんだ」


 ラレスは額を撫でながら俺を見上げる、正直気持ち悪いなコレ……

 しかも声が女の子なものだからアンバランスで余計に気味が悪い、女性の笑い声もおそらくこのラレスだろう。


「初めは出来心だったんですよぉ……ちょっと前、放課後に残って練習してたんです。そしたらあたしの作品で、あ、コレの事なんですけど……警備員さんが驚いて逃げて行っちゃって……それがもう面白くてつい何回もやってしまったわけなんですぅ……」


 しょうもない……これが7不思議の1つの正体とは気が抜けるぜ……


「まぁいいや、先生には言わないでおくから。じゃ俺たちは先を急ぐんでこれで失礼するよ、いつまで呆けてるんだよナイアス、行くぞ」


「あ……うん……」


 こいついつまでラレスを照らしてるんだ……ほっといたらいつまで照らしてるのか気になるがまぁよしとしよう。


「音楽室行こうぜーもう例の時間から大分過ぎちまってる、ほら早く!」

 ナイアスを立ちあがらせてそのまま腕を引っ張りながら進んで行く俺。


 階段を上り少し歩くとピアノの旋律が微かに聞こえてきた、よかった、間に合ったようだ。

 怪奇現象に間に合ったも無いとは思うがそれはそれだ。


「このメロディは……G線上のアリア……なのかな? ちぐはぐでよく分かんないわ」

 俺の説明でやっと自体が呑みこめ、現実に帰って来たナイアスが呟く。

 ほーこいつに音楽の知識があるとは……意外だ。


 さきほどの一件で完全に緊張感が無くなった俺とナイアスはその音源を探るべく音楽室の前にぴたりと張り付く。

 うちの音楽室は校舎の端にあり、防音対策で教室の入り口が2重扉になっている為、1つ目の扉と2つ目の扉の間に入り込む事が出来る。


 1つ目を通過した俺たちは2つ目の扉をゆっくりと音を立てないように気をつけて少し、ほんの少しだけ開けた。

 明かりは付いている、もうその時点で大体の展開は読めてしまったが最後まで見届けるとしよう。


 中からは不揃いな旋律と誰かを叱責している男の声、そして若い女性の声。


「どうして君はそんなに下手にピアノが弾けるんだ? よくそれで教育実習生の許可が下りたな。いつまでも授業でCDを流してごまかせるわけじゃないんだ、しっかりやってくれないと困るんだよ」


「す、すいません……私、極度の上がり症で……試験の時は上手く出来たんですけど……」

「あがり症なのにどうして試験だと上手くいくのかね」


 あれは確か最近入った音楽の先生じゃないか……美人でピアノ上手人気だったのにまさかあの演奏がCDだったなんて……他の男子生徒が知ったらショックでかいだろうな。


「ねぇベリアル……何なのこれ……」

 横を見るとナイアスが落胆のため息をついていた、ため息つきたいのは俺だって同じだ。


 で出し2つの怪談の正体がこれとは先が思いやられる。


「行くか……次に期待しようぜ……」

「そうね……次は文芸部行きましょ……」

 俺は少し落ち込んでいるナイアスを連れてトボトボと音楽室を後にしたのだった。


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