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第5話 美少女妖精をテイムしたらオリジナル魔術も閃きました

 あれからいったん火咲と別れ、各々魔法研究机でオリジナル魔術の開発に勤しむことになった。


 自室に戻った俺は、隣の火咲の部屋から何やら甲高い金属を叩くような異音が聞こえてくるのを耳にしながら、自分なりにオリジナル魔術の開発を試すことにした。


 火咲によれば、この世界の魔術には三大要素と呼ばれる概念がある。


 ≪式≫――何を、どのように、どの状態から、どの状態へ変えるか。

 ≪媒介≫――因果をどこへ通し、何によって対象を特定するか。

 ≪代償≫――変化によって生じる不足、余剰、反作用をどこへ置くか。


 初期状態ではいくつかの「基本式」「基本媒介」「基本代償」と呼ばれるものが与えられていて、これらの組み合わせと≪魔術意図≫というテキストによる指定によってオリジナル魔術を開発するようだ。


 俺が最初に取り組もうと思ったのは、俺の最大の弱点である【頑丈:2】の改善だ。


 今のところ戦闘らしい戦闘をしていないから問題になっていないが、平均値である10の5分の1に過ぎない頑丈値は、間違いなく紙装甲といっていい。


 当たらなければどうということはない、という戦術もあるだろうが、俺の素早さ値は8に過ぎない。


 これを改善するには、素早さにバフをかけて回避型運用をするか、頑丈を根本からなんとかしてタンク型を目指すかだ。そこまでいかなくても、せめて並み以上の耐久値を手に入れたい。


 最初に発想したのは、生命魔術の【生命強化】で頑丈を強化できないものか、ということだ。


 ≪式≫の部分に、≪「頑丈」を「【生命強化】」で「弱い」から「強い」に変える≫と入れてみる。

 

 ≪媒介≫はシンプルに≪「体」を「自らの血」によって特定する≫とした。


 ≪代償≫は「魔力:10」とする。


 ≪魔術意図≫のところには「魔力を消費して自らの頑丈を強化する魔術」とチュートリアルに従い入れてみる。


 ここで、実際に魔術を発明する前に、完成予想図、あるいは発明の失敗が示されるらしい。


 それによると――


==========

アンコモンスキル【生命強化:頑丈】 

 代償:魔力10

 ≪頑丈+100%≫する。

==========


 平均的な人間の魔力値である10を代償にしただけあって、+100%というなかなか強力なバフ魔法になっている。


 が、頑丈値2を+100%しても頑丈値4である。あまりに弱い。没である。


「うーん、このゲームのバフは基本パーセント式なのかなー。となると、頑丈が2なのは思った以上にハンデキャップがでかいな」


 先が思いやられる現実に、はぁっとため息をつく。


 ここは、発想の転換が必要だろう。


 ちょっと気分転換に、外の風景でも眺めるか。


 そう思って窓に近づき、窓を開けてみる。


 さぁっと爽やかな風が窓から流れ込み、ちょっと気分がリフレッシュされる。


 ――と、どこかから、聞き覚えのある鐘の音が遠くから聞こえてくる。


「ん?」


 よく目を凝らすと、遠くの空に、何かが浮いている。音はその何かから発せられている気がする。


 そして、その何かはだんだんと近づいてくる。急速に。


「んん?」


 接近するその物体は良く見ると、見覚えありまくりの鐘妖精、≪ベルフェアリーガール≫な気がする。


「……まさかな」


 見なかったことにして、窓を閉じようとするが――


「わたしをあんなに激しく鳴らした責任を、取っていただきに来ましたぁ♡」


 ――案の定、そのまさかだった。


 リンゴンガンゴンと鐘が打ち鳴らされながら、閉じようとした窓をぶち抜いて鐘妖精が室内に入ってくる。


「うるさいうるさいうるさい! なんなんだお前は! 鐘を一回鳴らしたごときで、責任が発生するかぁあああああ!」


 俺はキレる。当然のごとくキレる。


「こんなに可愛くて強い≪ベルフェアリーガール≫ちゃんが貴方専属の鐘妖精になってあげにきたんですよっ♡ もっと喜んでください♡」


 大きな鐘にくっついて浮いた妖精少女が、堂々とした立ち姿でドヤ顔する。

 ピンク色の毛糸のような妖精ヘアーに、金色の露出の多い服を着た身体、美少女フェイスのミニマム妖精は確かに可愛らしい。強いのかは知らないが。


==========

 <チャンス!>

 ≪ベルフェアリーガール≫がテイムを要求しました!


 テイムしますか?

 ≪はい≫ ≪いいえ≫

==========


 外堀を無理やり埋めるかのように、一方的にテイム寸前まで行っている。


 まあ、普通に考えて、テイムというのは通常とても苦労して成し遂げるものであるはずだ。


 それが据え膳よろしく向こうからやってきたのだから、断る理由もない。そのはずだが――


「一応、お前のステータスを見れたりしないのか」


「きゃっ♡ わたしの秘密の部分を見たいんですねっ♡ いいですよ♡」


 いちいち殴りたくなる返答が返ってくるが、いったんステータスが送られてきたのでそれを見る。


===========

 鐘妖精 ≪ベルフェアリーガール≫

 主専攻:妖精魔術

 副専攻1:流動魔術

 副専攻2:卜占魔術


 ステータス:

  力:5

  頑丈:55

  素早さ:25

  器用:5

  精神:25

  魔力:25

  運:55


耐性・抵抗:

  魔術抵抗:全


 固有スキル:

  エピックスキル【妖精鐘:タロットベル】


 スキル:

  レアスキル【飛行】

  レアスキル【妖精占い】

  アンコモンスキル【流動空気】

  アンコモンスキル【卜占未来】

  アンコモンスキル【妖精の踊り】

  アンコモンスキル【妖精の粉】

  コモンスキル【妖精の光】

  コモンスキル【流動地面】

===========


「ん? マジで強くね?」


 全部の1の位が5で終わるというNPCらしいふざけたステータスをしているが、パラメータ自体はかなり強力なように見える。


 固有スキルとしてエピックスキルまで持っていて、便利そうな流動魔術と卜占魔術までマスターしており、妖精魔術もさすが主専攻だけあって俺が覚えていない妖精魔術をたくさん覚えている。


「わかった。お前をテイムする」


「きゃっ♡ わたしのご主人様になってくださるんですねっ♡ 求められちゃいましたっ♡」


「うっさいわ!」


==========

≪ベルフェアリーガール≫をテイムしました!


 ≪初テイムボーナス:レアモンスター≫により、プレイヤーポイントが+1されます。

==========


 なにやらプレイヤーポイントまで貰えてしまった。初テイムボーナスなるものがあるらしい。レアなモンスターをテイムすることにはメリットがあるってことか。攻略組が捗るゲームのようである。


「ご主人様っ♡ わたしに名前をつけてくださいっ♡」


「えー、じゃあベルで」


「きゃっ♡ 雑なのも気持ちいいっ♡」


 何を言っても漫才になってしまう鐘妖精にベルと名付けつつ、そろそろ魔術の開発に戻ることにする。


「さて、魔術の開発に戻るか。頑丈を増やしたいんだけどなー」


「ベルはとっても頑丈なので、何回鳴らされても平気です♡」


「……ふむ」


 それを聞いて、閃いたことがあった。


 ≪式≫の中に「移動させる」という式がある。


「……ということは」


 ≪式≫の部分に≪「頑丈」を「移動させる」で「テイムモンスター」から「自分」に変える≫と入れてみる。

 

 ≪媒介≫は≪「体」を「絆」によって特定する≫とした。


 ≪代償≫は「頑丈」とする。


 ≪魔術意図≫のところには「ベルの頑丈値を自らの頑丈値に移動させる魔術」と入れてみる。


 果たして――


==========

アンコモンスキル【数値移動:頑丈】

 代償:テイムモンスターの頑丈


 テイムモンスター1体の頑丈値を任意の値だけ自分の頑丈値に移動させる。

==========


「で、できた!」


 すぐさま、即断即決で覚えることを決める。


==========

 オリジナル魔術:アンコモンスキル【数値移動:頑丈】を覚えました!


 数学魔術を専攻していないため、【数値移動:頑丈】の効果は最大20に制限されます!


 魔法材料:妖精の羽、数の天秤、移動の魔石、頑丈の種、己の魔石、絆の指輪を消費しました!

==========


「ん? これ数学魔術かよ! てか材料なんてあったのか!?」


 アナウンスには、数学魔術を専攻していないために効果が制限される旨が書かれている。


 そしてどうやら、ゲーム開始時に基本式を扱うのに必要な材料を持っていた仕組みらしく、俺が持っていた魔法材料を消費して魔術を開発したようだ。


「なるほどなー」


 とはいえ、ゲームのシステムを理解しつつ、明らかに自分の強化に成功しているので、いったん良しとしよう。材料がどれくらい貴重なものかは少し気になるが、有意義な魔術に使ったのだから、間違ってはいないはずだ。


 その後、魔術の開発を終えたらしい火咲と合流して、顛末を説明すると、火咲はこう言った。






「……つまり、魅了した女の子から身体能力を吸い取ってるってこと?」


「誤解だ」


「あなたのなかにわたしがいるってことですねっ♡ きゃっ♡」


「ヘンタイっ……!」


「誤解だ」

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