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夏休みは10分じゃ足りない!!

作者: シキカン
掲載日:2026/07/28



サンサン太陽。

水着ではしゃぐギャル。

楽しそうな親子連れ。

スライダーから聞こえる浮かれた悲鳴。

俺はこのキラキラした世界の外側の人間。

なぜならその世界を高さ2mくらいの椅子から監視するのが仕事だから。


『ただいまより10分間の休憩です。

 みなさん、プールから出てください。』


放送が流れ、客は一斉にプールサイドに上がる。

俺も休憩に入るから椅子から降りたその時、

「あの〜、すいません。」

と声をかけられた。

振り返ると俺と同い年くらいの2人組の水着ギャルが話しかけてきた。

男子高校生には刺激が強すぎる。

気づけば胸元に視線が吸い寄せられていた。

「このあと時間ありますか?

 もしよかったら…一緒に…」

と、女の子が言いかけた瞬間、背後から

「たーむら!!チーフが呼んでたよ!」と、山田が腕を回し話しかけてきた。

「えっ!?はっ?」と、俺が戸惑って、しかし話しかけてくれたギャルの方を向いたら、彼女たちはとてもバツが悪そうな顔をしていた。

2人で「…行こっ」と言い、ギャルたちは去っていってしまった…。

その間も山田は俺に腕を絡ませたまま離れない。

「お前なー!なんなんだよ!いつもいつも!

 せっかくいいところだったのに!

 俺の彼女が出来る機会奪うなよ!」と言い、山田の腕を振り払う。

「だって、田村があの子たちの胸ばっか見てるから!『田村に遊ばれちゃう!』と思って助けたの!」

「はぁ!?」

「はいはいはい。もうすぐ10分経つから。山田ちゃんは持ち場に着いて。田村っちは休憩な。」

チーフの仲裁が入り、喧嘩は強制終了させられた。


「なんなんすかね、アイツ。

 いっつも俺が女の子に話しかけられてると邪魔してきて。自分に彼氏できない僻みなんすかね。」

「ん〜。邪魔するってことは気になるってことなんじゃない?」

「はぁ?そうっすか?仮にもしそうなら、もうちょっと可愛く振る舞うんじゃないんですか?」

「好きな相手にはなかなか素直になれないんじゃない?それにかわいいじゃん、山田ちゃん。」

「えっ?チーフ…もしかしてアイツのこと…。」

…俺、どうした?なぜか胸がザワザワする。

「ん〜、どうだろうね。あっ、俺、そろそろ行かなきゃ!しっかり体休めとけよ〜!」

チーフは相変わらず食えない笑顔をして、持ち場に走っていった。


あの日のチーフの言葉がやけに頭にこびりついて、それ以来気づくと山田を目で追うようになっていった。

山田が大学生の客から声をかけられているのを見た時、自分でも理解できないほどイライラしていた。

だけど、足は動かなかった。

そんなことをしているうちに、あっという間に夏休み最後のバイトの日になった。

何事もなく1日を終え、帰ろうとした時、たまたま山田と帰りが一緒になった。

駅まで歩く道のり、緊張からかお互い何も話さず、アスファルトを見つめてる。

すると山田が

「来年もこのバイトする?」と聞いてきた。

「えっ?あー。今はそうしようかと思ってるかな?」と、俺は答えた。

「そっか。じゃあまた来年会えるね。」と、少し寂しそうな笑顔で俺を見つめた。

その顔を見て俺は胸が苦しくなり、思わず山田を抱きしめた。


「来年まで待てない。毎日会いたい。」


腕の中にいる山田から「はっ」と息を吐く声が聞こえ、ゆっくりと俺の背中に腕を回してくれた。

夕日で耳まで染まったお互いの顔を見合って、山田は静かに頷いた。


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