婚約披露式へのお誘い
ウィリアム殿下が用意してくれていた書類には既にレイディアント国王陛下と私の父の署名が入っていた。そこに私が署名する事で正式に婚約の準備が整う。後は向こうの陛下の承認をもらえたら終わりだ。
用意周到だとは思ってたけどここまでとは。
「ソフィア嬢…。ソフィと呼んでも?」
「お好きなように」
愛称くらいなら誰でも呼んでいるし、そもそも町に出た時に既に何回も呼ばれている。
たったそれだけの事なのにウィリアム殿下は嬉しそうに笑った。
「早速で悪いがこっちで催される式典に一緒に出てもらっても良いだろうか」
「構いませんよ」
王太子の婚約者になったのだ。これから多くのパーティーに参加するのは分かっている。
頼まれたら参加するつもりなのだけどウィリアム殿下は何故か浮かない顔でこちらを見てきた。
「参加してもらいたいのはアーサー殿下の婚約披露式なんだ」
気まずそうに言われた原因がよく分かった。
確かに元婚約者の婚約披露式に出てほしいとは言いづらい。ただ正直なところもう吹っ切れている相手の話だ。彼が気に病む必要はない。
「別に構いませんよ」
それよりも私がウィリアム殿下と参加する事で騒がれる方が不安だし心配だ。
そんな事を考えていると彼の驚いた表情がこちらに向いた。おそらく私がアーサーを気にしていないのが意外だったのだろう。
「本当に良いのか?」
「えぇ。それよりも私達の婚約が知られる方が騒がれそうですけどね」
「私としてはソフィを婚約者に出来た事を自慢出来る良い機会だから嬉しいけどな」
頬を緩め、目を細めて笑うウィリアム殿下は本当に嬉しそうだ。彼からの気持ちが真っ直ぐに伝わってくるせいで恥ずかしくなる。
「彼らの婚約披露式はいつ催されるのですか?」
「来月だ。知らなかったのか?」
「興味がなかったもので」
婚約自体は知っていたが婚約披露式については誰も教えてくれなかった。私から聞く事もなかったのでさっぱりだ。
どうでも良いという態度を見せる私が面白かったのか隣で大笑いを始める兄の事は放っておこう。
私の答えに驚き、そして安心したように笑うウィリアム殿下が目の前にいた。
「本当に吹っ切れていたんだな」
「元婚約者として、臣下として幸せになってほしいと思っていますよ。ですが彼が誰と結ばれようが私にはもう関係ありません」
この国の未来が心配になるのでさっさと偽物の真実の愛から目を覚ましてほしいところだけど。
答えると満足に笑われた。
「あぁ、そうだ。ソフィにドレスを贈っても良いだろうか?」
「ご迷惑では?」
「まさか。贈らせてほしいとお願いしたいくらいだ」
お願いって…。
甘ったるい笑顔を見せてくるウィリアム殿下のお願いを断れるわけもなく私は小さく頷いた。
婚約者にドレスを贈るのはよくある話だし。
「お願い出来ますか?代わりに私からも服を贈らせてください」
「ソフィが?良いのか?」
「ええ。是非」
アーサーの婚約者であった時も贈った事はあるけど趣味じゃないと着るのを拒まれた。
ウィリアム殿下にも拒まれるかもしれないが一度くらいは贈っても構わないだろう。
「それは嬉しいな。楽しみにしている」
嬉しそうに目を細めたウィリアム殿下に胸の奥が熱くなったのは何故だろうか。
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