追憶2
その後、俺は廃墟を探す事を諦ようと試みた。
しかし、一度あることは二度あるとは言わないが、やはりそれは困難を極めた。
本屋へ行こうとすれば、山へ自転車を進め、
ゲームセンターへ行こうとすれば、目的地を通り過ぎては住宅街を駆け抜けた。
そんな苦行が続く中、久しぶりに父が仕事から帰ってきた。
「おかえりなさい」
と声を掛けたはいいが、父は苦笑したような顔をし、俺達の前に胡坐をかいた。
「うん。元気元気。元気が一番だ!いっちばんせいちょーするゾッ!!」
そう言って姉と俺の頭をがしがしと撫でたあと、次は正座した。
「・・・・・?お父さん?何かあったんですか?」
姉が心配そうに聞くと、父はやはり苦笑した。
「うーん・・・・・なんて言えばいいのかな・・・・・・」
「倒産?」
俺が言った。
「あ、なんだ、倒産か。ならいいや」
姉が言った。
「お姉ちゃん・・・・・倒産はダメだぞ」
父が笑いながら言った。
「父さんの仕事の都合で引越しするかもかも鴨川」
マジメな顔で『かもかも鴨川』を言った人物はこのが初めてだろう。
「あーなんだ、引越しか。倒産じゃなくて良かった」
姉は何が良くて何がダメなのか。
「引越しか」
私が言うと、父が焦ったように言った。
「いや、まだ決まったわけじゃ無いんだ。もしかしたらの話。」
「あーなんだ。残念だなぁ」
「すみません、嘘です。もう決まっちゃいました。」
「だろうね」
姉がケラケラと笑った。
「私はいいんだ。バイトがそこで出来るなら。」
「ありがとう、お姉ちゃん・・・・・・さて、」
そう行って父は私を見た。
「お前は・・・・いいのか?」
「う~ん・・・・・いいんだけど・・・・・」
「いいんだけど・・・・・・?」
「皆に『さよなら』って言うのめんどくさいな・・・・・」
「これ」
父が爆笑した。
「フフ」
姉が爆笑した。
「しかもあと一週間しか無いから、皆になんか一言言っておきなさい」
「私は特にないや」
姉が言った。
「俺も・・・・・・」
「お前はあるだろう」
父と姉によって言葉を遮られた。
「では、これにて俺は就寝」
父がそう言って自分の部屋に戻った。