表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天国と地獄  作者: 西くん
17/17

天国と地獄③

「・・・・・・」

その少女は動揺した私に動揺したようであった。

とことん私の心を傷つけたいようだった。

「・・・・・・あの」

「はい」

「さっきの・・・・・『ガン、ガン』って音はなんだったんですか・・・・・?」

「あー・・・・あれはきっと・・・・・」

私はここでしらばくれようとも思ったが、彼女の言い方からしてそれは出来ないように思われた。

『なんだったんですか・・・・・?』とは、あたかも私が知っているような言い方だし。

「えーっとね」

「・・・・・」

「きっと、トールがヨルムンガンドを倒そうとしていたんだよ」

ナイスジョークのつもりで言ったのだが、はたしてこの少女(『さっきゅんさん』だなんて死んでも言えない)は北欧神話を分かっているのだろうか。

もしも分からなかったとしたらとんだ恥である。

つか絶対知らないだろう。

全く、どこまでこの乙女は私の心を出血させたいのか。

否。

今のは私の自業自得である。

「あー・・・・・ミョルニルですか」

乙女は少し恥ずかしがるようにして笑った。

今なんと言った、こいつ。

まさか北欧神話を知っているとは。

私が唖然としていると、少女は頭を下げた。

「先程は無礼な態度で接してしまってごめんなさい」

思いもしない謝礼の言葉だった。

なんだかこちらの方が申し訳ない気持ちに・・・・

「私、あなたが怖かったんです」

ならなくもなくもない。

もはや私の心臓は出血多量状態であった。

「アアーイイエーコチラコソー」

見よ、この紳士的な対応を。

「あ、今は大丈夫です」

「そうですか。それは良かった」

「はい。」

「うん。」

「・・・・・」

「・・・・・」

・・・・・お願いだからその震える体をどうにかしてくれ。

「あのー、僕は今日転校してきたばかりで・・・・って言ってもご存知でしょうが、やはりこの学校のことをよく知らないのです。」

「あぁ・・・・・はい」

「ですから好奇心でこの校舎に入ってみたんですが・・・・・まさかこの校舎、『廃校舎』なんかじゃ無いですよね?」

「うーんと・・・・・」

乙女は考えるような仕草をした。

「君の目がおかしくなければ、見た目で分かると思うよ」

私の心臓は、死んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ