さっきゅん②
迂闊だった。
帰りの会が終わり、俺がいつものようにここであの馬鹿を待っていると、違う馬鹿が来るとは。
あの学校に居る連中は皆この廃校舎に興味を持たないが為にここに居るというのに、
転入してきたヤツがこの廃校舎に興味を示すなどとは思ってもいなかった。
さっきからなにかガンガンと近所迷惑極まりない音がしているな、と思ったがまさかこの馬鹿が金槌を持ってこの校舎の壁を壊しているではないか。
ミョルニルを持った気分ならトールごっこでもしていてくれ。
そしてあの馬鹿を起こしてくれ。
・・・・・・今はそんな事どうでも良い。
しかし、こいつ俺に気付いていないとはどんな目をしてるんだ?
たしか『すっちー』だかと言ったか。
今思えば、この学校に転入してくるとはなんとかわいそうな奴なのだろう。
前の学校でイジメられていたのだろうか。
こいつの顔なら恋文が殺到するようにも思えたが・・・・・
しかし、本当にこいつの視界に俺は映っていないようだ。
「・・・・・あのーう」
とりあえず、声を掛けてみた。
「はいっ!!??」
今にも失禁しそうな声だな。
「あっ・・・・・っと・・・・・・」
美少女ボイス。
あくまで声だけだが。